第8話『国家の魔手、迫る!元賢者、政財界の闇に挑む』
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第8話では、ついにユウトたちの“学園改革”が政界にまで波紋を広げはじめます。
異世界で培った知識が現代日本の“国家権力”とどうぶつかるのか。
桐生家との関係もより深まる中で、ユウトの覚悟が試される回です。
強大な新たな敵の登場、どうぞお楽しみください。
吉川の失脚から三日後。
学園は表向きの平穏を取り戻したが、水面下では新たな嵐が迫っていた。
「これは……内閣府直属の“調査命令”?」
桐生美咲が手にした書類には、俺――神谷ユウトの名前がはっきり記されていた。
「君の動きが、政界の目に留まったの。もはや、学園の改革は“国”への挑戦と見なされたわ」
俺は苦笑いする。
「異世界の王政も似たようなものだったよ。表向きは理性、裏では利権と保身が支配する」
◇ ◇ ◇
その夜、俺は都心の高級ビルにある桐生グループ本社の応接室にいた。
現れたのは、美咲の父――桐生重吾。政財界のフィクサーと呼ばれる男だ。
「神谷君。君が“魔導式データ解析”で吉川を潰したという噂、なかなか面白い」
「噂なら、無視していただいて構いません」
「しかし、現実に動いた。国家機関が、君を“脅威”とみなし始めた。それはすなわち……利用価値があるということだ」
重吾の瞳が鋭く光る。
「君が“元異世界の賢者”なら、我が国のために働け。君の知識は、国政にこそ役立つ」
「つまり、俺を手駒にしたいと?」
「そう受け取ってくれて構わない」
俺は沈黙した。
異世界で見た“支配の構造”と、まったく同じものがこの国にもあった。
◇ ◇ ◇
数日後。突然の強制捜査。
政府系捜査機関が、俺の自宅を「不正なネット活動の疑い」で強制捜索してきた。
だが、すべて空振りに終わる。
俺はあらかじめ情報の一切を「無機メディア」に退避させていた。異世界で魔術回路を隠した要領だ。
「やるじゃない……完全に政府と敵対する気なの?」
美咲が苦笑交じりに言う。
「どちらかと言えば、“現代の魔王”退治だよ。敵は表の顔をしてるから、なおさら厄介だ」
◇ ◇ ◇
同時刻。内閣特務局の一室。
「神谷ユウト……異世界の知識を使ってこの国を動かす気か。だが、我々の国家はそんな甘くはない」
冷ややかな声とともに、一枚の極秘ファイルが開かれる。
『対象:神谷ユウト――排除許可』
◇ ◇ ◇
翌日。俺は美咲に告げた。
「覚悟してくれ。これからは、国家ぐるみで“俺たち”を潰しに来る」
「ううん。もう覚悟は決まってる。むしろ、これからが本番でしょう?」
その瞳に迷いはなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
第8話では「学園内の革命」から一歩進み、「国家」という圧倒的な権力との対立が始まりました。
敵が大きくなっていく中、ユウトと美咲の信頼関係も少しずつ育まれていきます。
次回は、政府中枢に迫る情報戦。ますますシリアスに、そしてスリリングに展開していきます。
引き続きよろしくお願いいたします!