第52話『決戦 ――夜明けを告げる刃』
夜が明けようとしていた。
王都を包んでいた黒煙が徐々に晴れ、空の端がわずかに朱く染まっていく。けれど、そのわずかな光明さえ、戦場では血と炎に塗れて見えなかった。
王宮前広場。
リュシアは剣を構えたまま、敵将ゾルク=ナバロと対峙していた。
「ふふ、面白い……あれほどの戦火を超え、この地でまだ立っているとは」
ゾルクの掌には濃厚な闇が渦巻き、空気が歪むほどの魔力が集中している。
それに対し、リュシアの剣は静かに光を湛え、焔のような気流が揺れていた。
「あなたの闇がどれほど深くとも――私は、この光を手放さない」
その声は、兵士たちの心を震わせる。
彼女が背負うのは仲間の想い。帰還者であり、守る者であり、希望の象徴――それがリュシアだった。
「ならば、貴様のその覚悟……打ち砕いてやろう!!」
ゾルクが放った闇の奔流が空間を裂き、一直線にリュシアへと襲いかかる。
「来なさい!」
リュシアが放った斬撃は光と炎を纏い、闇を裂き、衝突の中心が眩い閃光に包まれた。
◇ ◇ ◇
一方、王都地下。
結月は救護活動を続けながら、仲間たちの様子を確認していた。
「もう少し……もう少しだけ、耐えて。リュシア様なら、必ず道を切り開いてくれる」
その言葉が信仰のように広がり、誰もが希望をつなぐように頷く。
たとえ戦火が迫っていようとも、想いを託せる存在がいる限り、人は前を向ける。
◇ ◇ ◇
王宮前広場では、戦いが佳境を迎えていた。
リュシアとゾルク、光と闇の激突は見る者すら震えさせる神域の闘い。
魔法と剣、意思と憎悪がぶつかり合い、地面は割れ、空が裂ける。
「なぜ……貴様は折れない……!」
ゾルクの額から血が流れる。彼の魔力は限界に近づいていたが、リュシアの瞳にはまだ迷いがなかった。
「私は“帰還者”よ。異世界で何度も死にかけ、何度も立ち上がってきた。だから……あなたのような絶望では、私を折れない!」
リュシアの剣が再び煌めいた。
「――断光剣・黎明!」
その一閃が闇を切り裂き、ゾルクの身体を吹き飛ばす。
彼の体が地面に倒れ伏した瞬間、広場にいた兵士たちは一斉に歓声を上げた。
「勝った……!」
「リュシア様が……!」
夜明けが広がる。王都を包んでいた絶望の空が、徐々に青く戻り始めていた。
◇ ◇ ◇
ゾルクは倒れた。だが、戦いはまだ終わらない。
この国にはまだ、闇の残党が潜んでいる。そして、リュシアたちが成し遂げようとする“変革”には多くの敵が立ちはだかるだろう。
それでも、リュシアは立ち続ける。
希望のために、仲間のために、そして――帰還者としての使命のために。
夜明けは来た。だが、これは始まりに過ぎない。
新たなる時代の光を切り拓くための、本当の戦いが始まるのだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
今回は、ついにリュシアとゾルクの一騎討ちが描かれた大きな節目の回となりました。
異世界で鍛えられた強さと、現代で培った「信頼」の力が交差する決戦。
皆さんの中で、何か熱いものが残っていれば嬉しいです。
ですが、敵の本拠地を打ち破っても、すべてが解決するわけではありません。
次回からは、王都の裏に潜む真の敵、そして“あの存在”が少しずつ姿を現していきます。
今後の展開も、どうぞお楽しみに!
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これからも『異世界帰りの賢者』をよろしくお願いします!




