第34話『目覚める国 ――選択と進軍の序章』
王都の朝は、静かだった。けれどその静けさは、嵐の前のものだと誰もが悟っていた。
リュシアは玉座の間に立っていた。まだ正式な即位を果たしたわけではない。しかし、今や多くの貴族たちが彼女の元に集いはじめていた。
「王都防衛線の再構築はどうなっているの?」
「各門に兵力を再配備し、地下水路は完全に封鎖しました。これで敵の奇襲は防げるかと」
参謀の報告にリュシアは頷く。その瞳に迷いはなかった。
「それで……東部国境の動きは?」
「国境の街サリスにて、独立派の動きが活発化しています。背後に“黒い手”がついているのは間違いないでしょう」
東から迫る独立の気運。それはもはや、ただの反乱ではない。国家の分断。内戦の危機――。
◇ ◇ ◇
その頃、遠く離れたサリスの集会場では、一人の青年が群衆を前に声を上げていた。
「王都は腐敗している! 今こそ我らの手で、新しい秩序を築くべきだ!」
群衆は歓声を上げる。彼の名はレクス。元騎士団長であり、今は“黒い手”の代弁者として知られていた。
だが彼は、単なる破壊者ではない。
理想を掲げ、王国の矛盾を突き、民を引き込む“言葉の剣”を持っていた。
◇ ◇ ◇
王都の一室。リュシアとレオン、そして結月、カミラが地図を囲んでいた。
「レクスが動くとなれば、王都は正面から包囲されるわね……しかも奴は民を巻き込むのを厭わない」
レオンの言葉に、結月が険しい顔をする。
「……だったらこちらも、“剣”だけじゃなく“声”を使うしかないんじゃない?」
リュシアは小さく息をついた。そして静かに言った。
「戦いを避けるためにも、私は彼と話す必要がある。レクスと、直接」
◇ ◇ ◇
夜更け、リュシアは一通の文をしたためた。
宛先は、サリスのレクス。
内容は――「対話の申し出」。
それは、国家の運命を分ける賭けだった。
だが、彼女は剣ではなく、言葉で未来を切り拓こうとしていた。
そして夜が明ける頃、サリスからの返信が届く。そこには短く、こう書かれていた。
「面白い。来い、リュシア王女」
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回は「静」の中にある「動」を描く回でした。
新たな敵――かつての仲間・レクスの登場により、物語は大きく転がり始めます。
戦いだけでなく、言葉と信念のぶつかり合いが物語の核となっていく予感を感じていただけたなら嬉しいです。
リュシアの「話し合い」という選択は、果たして希望を生むのか、それとも破滅の序章となるのか……。
次回の直接対話を、ぜひ楽しみにしていてください。
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