第32話『暗闇の戦い ――咆哮と選択の刻』
地下水路に響く剣戟の音。火花が飛び、血が滲むたび、誰かの覚悟が試されていた。
「リュシア様、後ろッ!」
結月の叫びと同時に、リュシアは振り返り、迫る刃を受け止めた。重い衝撃が腕に走る。それでも――彼女の目は揺るがない。
「ここで退くわけにはいかない……この国を変えるって、誓ったから!」
反王政勢力“黒い手”の兵士たちは、顔を覆い、名も名乗らぬまま襲いかかる。誰が敵で、誰が味方か。だが、その混沌の中でも、守るべきものは明確だった。
◇ ◇ ◇
「リュシア、時間を稼ぐ!」
レオンが前に出た。剣を水平に構え、敵の壁に突っ込む。
背中を預ける――それが彼なりの信頼の証だった。
「私は、未来のために戦う。君の信じた未来が、ただの夢じゃないって証明するために」
リュシアはうなずき、奥へと走る。目指すは、地下区画の中央制御室。ここを制圧できれば、王都への侵入経路を封鎖できる。
◇ ◇ ◇
制御室へ到達すると、そこには一人の少女がいた。
セシル側から派遣されたカミラ――だが、彼女の手には短剣が握られていた。
「なぜ、ここに……?」
「ごめんなさい、リュシア様。これが、私の選んだ答えなの」
カミラの瞳は揺れていた。けれど、それでも彼女は刃を突きつける。
この国の未来のために。違う信念のために。
◇ ◇ ◇
「それでも、あなたを……信じたい」
リュシアは剣を下ろした。
カミラは一瞬、表情を曇らせた。そしてその短剣を、ゆっくりと床に落とした。
「私は……間違っていたのかもしれない。あなたのように、誰かを信じる強さが、私にはなかった」
「今からでも、遅くないわ。一緒に……変えよう、この国を」
暗闇に灯る一縷の希望。
それはやがて、地下水路の制御盤が作動し、侵入経路が閉じられた瞬間に繋がる――。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
第32話では、戦闘の緊張感と、それぞれの「信じる力」が交錯する展開を描かせていただきました。
敵か味方か――誰もが迷いながらも、自分の信念と向き合い始めています。
特にカミラの行動は、この先の物語に大きな影響を与える伏線でもあります。
彼女の選択が意味するものを、ぜひ今後も見守っていただけたら嬉しいです。
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