第26話『決戦前夜 ――灯る火と砕ける誓い』
王都に戻ったリュシアは、玉座に座ることなく、執務室にこもっていた。
北部で対峙したセシルの言葉が、脳裏から離れない。
「この国を導くのは、私か、お前か」
彼は確かに、民の声を拾っていた。
過去の王政が残した影、貴族による支配の傷跡。
それを癒やせなかったのは、今の王政――つまり、自分かもしれないという現実。
「私は……ただ正しいことをしたいだけなのに」
ふと、扉がノックされる。入ってきたのは、側近のユウトだった。
「王女じゃなくて、リュシアとして聞いてくれるか?」
「うん。なんでも話して」
ユウトは、手にした一通の手紙を差し出した。
それは、セシルからの書状だった。
『7日後、和平会談を開く。場所は“廃都フェルグレイン”。立会人を置き、互いの軍を引かせた上で』
「彼は、戦いたくないのかもしれない」
リュシアはその書面を読みながら、そう呟いた。
けれど、その“和平”が本心なのか、罠なのかはまだわからない。
◇ ◇ ◇
夜、静かな回廊を歩いていたリュシアは、城の裏庭に灯る小さな火を見つけた。
そこには、レオンがいた。剣を膝に置き、焚き火を見つめている。
「……決戦、になると思うか?」
リュシアの問いに、レオンは首を横に振った。
「王ってのは、“戦わないこと”を決めることも仕事だ。
でも、戦わざるを得ない時は、“どう終わらせるか”に責任を持たなきゃいけない」
「……難しいね」
「だから、お前のそばに俺たちがいる」
その言葉に、リュシアは小さくうなずいた。
王として、女として、人として――迷いながらも、進まなければならない。
◇ ◇ ◇
そして、7日後――
フェルグレインでの会談の日が近づく。
王宮には、静かだが確実に、緊張の気配が漂っていた。
最後まで読んでくださってありがとうございます!
リュシアが選ぼうとしている道は、「戦わずに決着をつける」こと。
でも、それが最も難しい選択でもあります。
セシルから届いた書状は、和平への扉となるのか――それとも、静かな罠なのか。
次回、いよいよフェルグレインでの会談編が始まります。
心を削る対話と、譲れない理想のぶつかり合いにご注目ください。
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