第2話『元ブラック上司に遭遇したので、会社をその場で立ち上げてみた』
お読みいただきありがとうございます!
第2話では、現代に帰還したユウトがさっそく“賢者の力”を使って現代社会に挑みます。
まさかの再会となった元ブラック上司との再戦。スカッとする展開を目指して書きました!
異世界で培った知識とスキルが、現代のビジネス界にどう通用するのか――その片鱗が見える回になればと思います!
現代に戻ってきて、三日が経った。
俺はこの三日間、ひたすら考えていた。
いや、違う。『構築』していた。
異世界で学んだスキル。
解析・創造・精神操作・戦略思考。
――これを現代で使いこなせれば、「社会」なんて敵じゃない。
「やるか。まずは、形からだな」
俺はノートパソコンを開いた。中古だが、異世界の設計思想を流用して“最適な思考フロー”を即座に打ち込めるよう改造済みだ。
まずは会社を作る。
ジャンルはITベースのコンサルタント。だが実態は「知識と戦略の錬金術師(≒元・賢者)」だ。
会社名は―――
「《グリモワール・アドバンス》。魔導書の名にふさわしい」
架空通貨を自作し、暗号技術を噛ませ、合法的なビジネススキームを構築。
クラウドに設立資料を投げ、即日で個人事業登録まで完了させた。
「資本金10万、創業三日。だが、勝てる」
俺の手には“知識”がある。
あの世界で得たあらゆる技術と理論が、今の日本にとって“未来の発明”なのだから。
◇ ◇ ◇
そんな折―――運命の出会いは、突然やってきた。
「……あ?」
駅前のコーヒーショップ。パソコンを開いて業務計画を立てていた俺の前を、見覚えのある男が通った。
真っ黒なスーツ。威圧的な態度。そして―――
見下すような目。
「……元上司。クソ社長、赤城」
俺が死にかけるまで働かされた、あのブラック企業の代表取締役。
3年前、俺の退職届を破り捨てて笑った男だ。
「おい。まさか神谷か?まだ生きてたのか、てっきり自殺でもしたと思ったぜ」
笑って、赤城は言った。
懐かしさも、謝罪も、反省も、何ひとつ感じさせない軽薄な声。
「……へえ。まだそんな話し方、できるんですね」
俺は、立ち上がった。
「一応、今は会社やってるんで。そちらと競合にならないように気をつけます」
「会社? おまえが? フッ、何の冗談だよ」
赤城は笑った。嘲笑だ。哀れみすら混じっていた。
「だったら、次の営業案件。勝負してみます?そちらのサービスより条件よければ、相手はこちら選びますよ」
「言ったな……面白ぇ。じゃあお前が契約とったら、土下座してやるよ。俺の目の前でな!」
「了解です。じゃ、交渉してきます」
◇ ◇ ◇
その日の午後、俺はクライアント候補企業―――大手物流システム会社の副社長と面談していた。
相手の要望、現在の問題点、業界の未来。
俺の《解析》スキルはすべてを映し出し、最適な解決策を導き出す。
「――以上が、弊社による提案となります」
「……すごいな。即日でこの分析と対策を?しかも金額が……約3分の1?」
副社長は目を見開いていた。
「競合には、もう一社いますよね?《赤城システム》さん」
「うむ。だが……比較にならん。すまんな、契約は君のところに任せたい」
「ありがとうございます。必ずご期待に応えてみせます」
◇ ◇ ◇
数日後。
「よう、赤城さん。契約、うちで決まりました。じゃあ、土下座。お願いできます?」
「……は、はぁ?」
赤城の顔が引きつっていた。俺の名刺を見て、目を疑っていた。
でも、これは現実だ。
「それとも、負けを認められないタイプですか?そういうの、昔から変わりませんね」
「クソッ……ふざけるな……っ!」
地団駄を踏んで、赤城はその場を去った。
俺は特に追いかけなかった。勝ち負けなんて、俺にとってはもう通過点に過ぎない。
「これが一件目。よし、次は全国レベルで勝負してやる」
異世界で学んだことを、現実で実行する。
それが、俺のリベンジだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
今回は異世界帰還後の初バトル(現代版)でした。ビジネスの世界でも、“賢者”はやっぱりチートです。
主人公ユウトの成り上がりと復讐、そして「スキル×現代社会」の面白さを今後もどんどん広げていきます。
次回は、さらに大きな案件に挑戦し、現代のビジネス界に爪痕を残す話になる予定です。
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