第9話 デート その3
ショッピングモールに到着すると、美咲は目を輝かせながら店内を見渡していた。
「悠真君、さすがショッピングモール広いね!」
「確かに。いろんなお店があって、見てるだけでも飽きないな。」
カラフルな看板や人々のざわめきが響く中、美咲はその場の明るい雰囲気に溶け込むように楽しそうだった。その姿を見ていると、こちらまで自然と笑みがこぼれる。
「まずはどこに行こうか?」
「えっと……あっ、ゲームセンターがある!ちょっと寄ってみてもいい?」
「もちろん、行ってみよう。」
ゲームセンターに足を踏み入れると、ピカピカと光るネオンや機械音が賑やかに耳を満たす。そんな中、美咲の視線があるクレーンゲームに釘付けになった。
「この犬のぬいぐるみ、可愛い……。」
ガラスケースの中で揺れるつぶらな瞳の犬のぬいぐるみを見つめる美咲。彼女の瞳が少しキラキラしているのがわかる。
「取ってあげようか?」
「えっ、いいの?でも、難しそうだよ?」
「それはやってみないとわからないだろ?」
軽く肩をすくめながら、100円玉を投入した。クレーンを慎重に操作し、美咲が小さく息を飲むのがわかる。
「……もう少し右……そう、頑張れ!」
彼女の声に後押しされるようにクレーンを操作し、ぬいぐるみを掴む。クレーンがゆっくりと動き、景品出口に落ちる瞬間、美咲が歓声を上げた。
「やった!」
「取れた!すごい、悠真君!」
美咲はぬいぐるみを両手で受け取り、大事そうに抱きしめる。その姿はまるで子どもみたいで、見ているだけで心が温かくなる。
「意外と器用なんだね!」
「意外って何だよ。それなりに自信あるんだから。」
そう言いながら軽く冗談を交えると、美咲がふふっと笑った。その笑顔に、少しだけ胸がざわつく。
「ありがとう、本当に嬉しい。大切にするね!」
ぬいぐるみを抱きしめる彼女の笑顔に、何か特別なものを感じた。
次に訪れたのは服屋だった。美咲が気になっていたワンピースを手に取り、試着室に向かう。
「少し待っててね。」
彼女がカーテンの向こうに消えると、僕は近くの棚を眺めながら時間を潰した。その時、不意に店員が声をかけてきた。
「彼女さん、すごく可愛いですね。それに、優しそうな彼氏で羨ましいです。」
「えっ、いや、そういうのじゃ……。」
言葉を濁していると、試着室のカーテンが開き、美咲が姿を現した。
「どうかな……変じゃない?」
その瞬間、言葉を失った。彼女が選んだワンピースは、彼女の柔らかな雰囲気にぴったりで、その姿が目に焼き付く。
「……すごく似合ってる。めちゃくちゃ可愛いよ。」
「か、可愛い……?」
美咲の頬が赤く染まり、視線を逸らす。その仕草に、僕の心臓が一瞬高鳴った。
「じゃあ、これにするね!」
「うん、いいと思うよ。本当に似合ってるから。」
店を出てしばらく歩くと、困った様子の年配の女性が目に入った。
「美咲、ちょっと待ってて。」
「どうしたの?」
「すぐ戻るから。」
近づいて話を聞くと、重い荷物を運べず困っているらしい。僕はその荷物を手伝い、カートまで運ぶことにした。
「ありがとうね、親切な若いお兄さん!それに、お似合いの彼女さんもいて幸せそうだね!」
その言葉に少しだけ照れくささを感じながら、「ありがとうございます」と返した。
戻ると、美咲が心配そうに声をかけてきた。
「何かあったの?」
「荷物運びを手伝ってただけ。でも、おばあさんに『彼女さん』だって勘違いされちゃった。」
「えっ……そ、そんな……!」
美咲の顔が一気に赤く染まり、俯く。その仕草があまりに可愛らしくて、つい口元が緩む。
「でも、まあ悪い気はしなかったけどな。」
「も、もう!からかわないで!」
そう言いながらも、美咲の声にはどこか嬉しさが滲んでいた。その瞬間、彼女と過ごす時間がますます愛おしいものに感じられた。
夕方になり、そろそろ帰る時間が近づいてきた。
ショッピングセンターを出て駅に向かおうとしたとき、後ろから声がかかった。
「先輩……?」
振り向くと、柔らかな目元と短い髪型――そこにはどこか見覚えのある顔があった。
本日は、もう一話投稿します。
「先輩? 誰のことだろう……?」 そんな疑問が浮かんでも、今はそのドキドキを楽しんでいただけたら嬉しいです!気づいている方も、まだ謎のままの方も、次の展開をお楽しみに!
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