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第7話 デート その1

 金曜日の夜、バイト帰りに麻衣と別れた直後、ポケットのスマホが振動した。

 画面には「橘美咲」の名前が表示されている。


(何の用だろう?)


 少しの緊張と期待を抱えながら電話に出る。


「もしもし?橘さん?」


「悠真君、今ちょっといいかな?」


 彼女の声はいつもと違い、どこか弾んでいるようだった。その雰囲気にほっとしながらも、少し戸惑いを覚える。


「どうしたんだ?何かあった?」


「あ、違うの。ただ……明日のこと、ちゃんと覚えてるよねって確認したくて。」


「もちろん覚えてるよ。心配しなくても大丈夫。」


「そう、なら良かった!」


 電話越しに聞こえる彼女の笑い声が、どこか安心感を与えてくれる。けれど、その声には微かに緊張が混じっているようにも感じた。


▼美咲視点

 電話をかける前、私は何度もスマホの画面を見つめていた。悠真君が約束を忘れるとは思っていない。それでも、彼からの連絡がないことが妙に気になった。


(こんなことで不安になるなんて……私らしくない。)


 思わず指が発信ボタンに触れる。その瞬間、自分の心臓がドキッと跳ねた。


「もしもし?橘さん?」


 彼の声が耳に届いた瞬間、それまでの不安が嘘のように消える。だけど、何を話していいのかわからなくなる。


「ごめんね、なんか急に電話しちゃって。」


「気にするなよ。疲れてるんじゃないか?無理しないでよ。」


 彼の優しい声が胸に響く。その優しさに甘えたくなる自分がいて、少しだけ怖くなる。


「明日、楽しみにしてるね。」


「うん、俺も楽しみにしてる。」


 電話を切った後、私はスマホを両手で握りしめて呟いた。


「……こんなにドキドキするなんて、ずるいよ……悠真君。」


▲▼▲▼


 土曜日の朝。少し早めに起きて準備を済ませ、待ち合わせ場所へ向かう。30分前に着いていれば、待たせることもないだろう。そう思いながら到着すると、すでに橘さんが立っていた。


「えっ……もう来てたの? ごめん。待たせちゃった?」


「ううん、今来たとこ。」


「なんだ、俺のセリフ取られちゃったな。」


「え?」


「今来たばっかり、ってやつ。俺が言うつもりだったのにさ。」


 彼の軽口に思わず笑みがこぼれる。


「ふふ、でも本当に嬉しいの。待たせるのが嫌だったから……。」


 自分でも驚くほど素直な言葉が口をついて出た。頬が熱くなるのを感じながら、彼の顔を見上げると、彼も少し照れくさそうに微笑んでいた。


「その服、すごく似合ってるよ。アクセサリーとのバランスもいい感じ。」


「えっ……ありがとう。」


 美咲が照れたように髪をいじる。その仕草があまりに可愛らしくて、目を離すことができなかった。


「そうだ、俺も名前で呼んでいいかな?」


「名前で?」


 彼女が驚いたように目を見開く。その表情を見て、少し躊躇する。


「だって、橘さんって俺のこと名前で呼んでるしさ。同じ方が自然だろ?」


「……うん、そうだね。私、悠真君にそう呼ばれたいな。」


 彼女が照れくさそうに目を伏せる。その言葉に、僕の胸が軽く跳ねるのを感じた。


「じゃあ、これから美咲って呼ぶよ。」


「本当に?」


 美咲が目を輝かせながら僕を見上げる。その無邪気な笑顔に思わず微笑む。


「本当に。」


「……ありがとう、悠真君。」


 彼女の小さな声に、何か特別なものを感じた。それが何なのかはまだわからない。ただ、この時間がずっと続けばいいと思った。

いきなりの名前呼び……それって最初の難関ですよね。でも、その一歩が恋の始まりの予感……なんて思いませんか? 呼び方ひとつで距離が縮まる瞬間って、実はとてもドラマチックだと思うんです!


このシーンが、これからの関係にどう影響していくのか、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!いや、本当に……ドキドキしながら書きました(笑)。 感想や応援、ぜひお聞かせくださいね!

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