第54話 揺れる想いと静かな涙
申し訳ありません。「★★★」の評価をよろしくおねがいします!!
グループチャットは賑やかに動き続けていた。画面にはスタンプが飛び交い、軽口が絶え間なく続いている。
▼グループチャット
真琴:昼休み、どこで食べる?
菜月:教室だと注目されすぎるんじゃない?
美咲:……(考える顔スタンプ)
悠真:確かに!!
菜月:目立つなんてもんじゃないよね(笑)
葵:それって、私のせいですか……?
真琴:あ!違う違う!そういう意味じゃないよ!
菜月:むしろ、葵ちゃんがいることで華やかになるって話!
葵:それなら、良かったです。みなさんと一緒にいるのが新鮮で、少し緊張しますけど……。
悠真:葵さん、全然緊張しなくていいですよ。みんな気さくな人たちだから。
美咲:……(笑顔スタンプ)
悠真:橘さん、それ意味わかんないから!(笑)
菜月:空き教室にしようよ。静かで人目もないし。
葵:空き教室……それなら安心ですね。
真琴:決定!それで行こ!
チャットが落ち着くと、悠真は深いため息をついた。
(こんなメンバーで昼食なんて、騒ぎにならないわけがないだろ……。)
それでも、避けられない現実に覚悟を決め、集合場所に向かった。
空き教室に到着すると、すでに真琴、菜月、美咲が待っていた。扉を開けた瞬間、真琴が明るい声で手を振る。
「おーい、白君、遅いよ!」
「いや、別に遅れてないけど……。」
「まぁまぁ、座って座って!」
真琴の促しで席に着くと、少し遅れて葵が教室に入ってきた。
「お待たせしました!」
その声に教室の空気が一瞬で華やぐ。葵は緊張気味に微笑みながら、そっと席に着いた。
「葵ちゃん、ようこそ!今日はみんなで楽しく食べようね!」
「ありがとうございます……。」
真琴の明るさに助けられるように、葵は控えめに微笑んだ。
昼食が始まると、会話は自然と盛り上がっていった。菜月が手作りのお菓子を披露し、真琴がそれを試食して感想を述べ、美咲が小さなツッコミを入れる。葵も少しずつ会話に加わり、悠真はその様子を静かに見守っていた。
「白君のお弁当、何入ってるの?」
菜月が興味津々で聞いてくる。
「え?普通に卵焼きとかウインナーとか……。」
悠真が弁当を見せると、真琴が驚きの声を上げた。
「めっちゃ綺麗じゃん!これ、自分で作ったの?」
「まあ、適当に……。」
悠真が照れくさそうに答えると、菜月が笑いながら拍手する。
「じゃあさ、誰かと交換してみたら?悠真君の手料理、気になる!」
菜月の提案に、葵が控えめに手を挙げた。
「私、少しお腹がいっぱいになってしまって……もし良かったら食べてもらえませんか?」
「えっ、いいの?」
「はい……。」
葵の控えめな笑顔に、悠真は少しだけ頬を赤らめて頷いた。
「じゃあ、これ……。」
悠真が葵の弁当から一口分を取ろうとすると、菜月が急に口を挟んだ。
「待った!これは『あ〜ん』案件でしょ!」
「は!?な、何言ってるの!?」
悠真が慌てふためく中、菜月はにやりと笑いながら箸を差し出した。
「ほら、葵ちゃん、あ〜んしてみなよ!」
「えっ……?あ、あの……。」
葵が戸惑いながら顔を赤らめると、美咲が割って入った。
「ちょっと、何やってるの!?悠真君が困ってるじゃない!」
「あれ〜?美咲、妬いてるの?」
「そんなわけないでしょ!」
真琴と菜月が声を合わせて「怪しい〜!」とからかう。
「もう、やめてよ!」
美咲が顔を真っ赤にして叫ぶ中、悠真は完全に混乱状態だった。
「じゃあ、私が……。」
突然、葵が控えめに声を上げた。その一言に教室が一瞬静まり返る。
「「「え、えええ!?」」」
全員の視線が葵に集中する。
「だって……これが一番平和的かなと思って……。」
その控えめな笑顔に、悠真は戸惑いながらも卵焼きを差し出した。
「あ〜ん……。」
葵が小さく身を乗り出し、その瞬間、美咲が立ち上がった。
「やっぱり、私がやる!」
その勢いに一同が大爆笑し、教室はさらに賑やかになった。
その日の放課後、悠真が下駄箱に向かうと、美咲が一人で待っていた。
「橘さん?どうしたの?」
「一緒に帰ろうと思って。だめ?」
「いや、全然だめじゃないよ。」
二人で歩きながら、美咲はどこか落ち着かない様子だった。そして、公園に差し掛かったところで立ち止まり、言葉を口にする。
「ねえ、悠真君……今度、あなたの家で勉強したい。」
その言葉に悠真は目を丸くする。
「え?俺の家で?」
「うん……。」
その言葉の直後、美咲の目から涙が一筋流れた。
「どうして泣いてるの……?」
「わかんない……私、なんでこんなにモヤモヤしてるの……。」
悠真は困惑しつつも、美咲をそっと抱きしめた。
「橘さん、大丈夫だよ。俺は、君を大切に思ってるから。」
その言葉に、美咲は少しだけ微笑み、涙を拭った。
二人の影が夕陽に伸びていく中、美咲の胸の中で新たな感情が芽生えていくのを感じた。
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