第51話 放課後の勉強会
悠真は朝から嫌な予感がしていた。城山葵が勉強会に加わると知ったクラスメイトたちの視線が、どうにも刺さる。
(……これ、やばくないか?)
城山葵は「美少女四天王」の一人であり、アイドル活動も行う学校の顔とも言える存在だ。それに加えて、同じ勉強会には四天王のもう一人、橘美咲も参加している。学校のトップスター二人が揃う勉強会となれば、周囲からの注目を集めないはずがない。
放課後が近づくにつれ、視線の強さが増してきた。これはさすがにどうにもならないと判断した悠真は、担任の先生に相談することにした。
「先生、少しお時間いいですか?」
「どうした、白石?」
「あの……放課後に勉強会をするんですが、城山さんも参加することになりまして……その……クラスメイトの視線がちょっと怖くて……。」
担任の先生は「なるほど」と頷き、少し考え込んだ後、にやりと笑った。
「それは確かに目立つだろうな。嫉妬で勉強にならなかったら困るし、特別に部屋を用意してやろう。あいつもアイドルなんだから、余計なトラブルが起きる前に配慮しておかないとな。」
「ありがとうございます!」
(……先生、めっちゃいい人だ!)
急ぎ桜井さんと中村さんに相談し、特別に用意された勉強部屋のことを報告した。二人も快く了承してくれ、放課後の集合場所を決めて話はまとまった。
放課後、悠真はグループチャットでメンバーたちに部屋の詳細を共有した。
▼グループチャット
悠真:勉強会の部屋、先生が特別に用意してくれたよ!
真琴:え、先生に相談したの? さすが白君、できる男!
菜月:ほんとほんと。で、部屋ってどこなの?
悠真:図書室横の空き教室。人目につきにくいし、静かだよ。
菜月:あ、それはいいね。ナイス判断!
美咲:……(いいねスタンプ)
悠真:橘さん、今日もスタンプだけ(泣)
真琴:でもこれで安心して勉強できるね。
菜月:うん、みんなでしっかり頑張ろう!
その後、メンバーが続々と特別教室に集まった。悠真が部屋の入り口でメンバーを迎える中、最後に現れたのは葵だった。
「こんにちは、白石君。みなさん、よろしくお願いします。」
教室内が一瞬静まり返る。その後、桜井さんが「あ、よろしく!」と明るく声をかけたことで、場の緊張が少し和らいだ。
「じゃあ、今日は各自の苦手分野を確認して、効率よく勉強していこうか。」
悠真が話を進めると、皆それぞれのテキストを広げ始めた。葵も持参したノートを開き、真剣な表情で勉強を始める。
(……意外と真面目なんだな。)
悠真はそんな葵の様子を横目で見ながら、自分のノートに目を戻した。
勉強会が無事に終わると、帰り道で橘さんたちに囲まれた。
「で、白君、なんで城山さんが勉強会に参加することになったのか、詳しく説明して?」
「えっと……偶然階段で会って、それで……。」
「偶然? 本当に偶然? 怪しいなぁ~。」
菜月がにやにやしながら言う。
「いやいや、ただの偶然だよ! 流れでそうなっただけで!」
「……まあいいわ。勉強会が無事に進んだなら、それで良しとしましょう。」
「だね!でも、白君って本当に何気にすごいよね。美少女四天王の二人と一緒に勉強会なんて!」
「いや、別に近づいたとかじゃなくて……!」
真琴と菜月が楽しそうに笑い出す中、悠真は顔を赤くしながら苦笑いを浮かべた。その姿に、美咲も微かに口元を緩める。
「まあ、これからも頑張りなさいよ。私たちが見てるからね。」
橘さんの言葉に少しプレッシャーを感じつつも、悠真は黙って頷いた。
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