第48話 白君と愉快な仲間たちに新メンバー追加 その1
悠真は久しぶりに「ボッチの聖地」で昼食を取ることにしていた。最近は美咲や真琴、菜月と一緒に食べることが多かったが、今日は一人で静かに過ごしたい気分だった。
階段を上がりながら、「誰もいないだろうな」と期待していたが、途中で見覚えのない背中を見つけた。
(え……誰かいる?)
階段の真ん中に座り込んでいる彼女は分厚い本を手に、声を出しながら一心不乱に何かを読んでいる。艶やかな髪が肩に落ち、その横顔は、目を見張るほど美しかった。
(めちゃくちゃ可愛い……でも、なんでこんな場所に?)
思わず足を止めたが、いつまでもじっと見ているわけにもいかない。勇気を振り絞り、声をかけた。
「すみません、ここで食事を取ろうと思うんですが……いいですか?」
女性は驚いたように顔を上げた。その表情に一瞬、息を呑む。美しく整った顔立ち、落ち着いた雰囲気、そして何かに没頭していた余韻が残る瞳――まるで映画のワンシーンのようだった。
「あ、どうぞ。私、すぐ移動しますから……。」
「いえ、そういうわけじゃなくて! そのままで大丈夫です。隅で食べるので気にしないでください。」
彼女は少し困ったように微笑み、再び本に目を戻した。その姿を横目で見ながら、悠真は弁当を広げた。
しかし、どうしても気になる。本を声に出して読んでいる彼女に、思わず声をかけた。
「あの……何をされてるんですか?」
「台本を覚えているんです。」
彼女がそう答えると、悠真は「台本?」と疑問に思った。普通の読書とは少し違う独特の集中感が漂っている。
「台本……演劇部とかですか?」
「いえ、アイドルと少し役者もやっています。次の撮影で使うものなんです。」
悠真は驚き、記憶を辿った。「美少女四天王」として学校中で噂になっている城山葵――その名が浮かんだ。
(もしかして、この人が……!?)
「もしかして……城山葵さんですか?」
彼女は微笑みながら頷いた。
「はい。私、城山葵といいます。」
「なんかすいませんでした。読み合わせの練習中邪魔しちゃったみたいで……。」
「そうですね。私も少し息抜きに来たんですけど、誰かと会うとは思いませんでした。」
彼女の柔らかな声に、悠真は少し緊張しながら自己紹介をした。
「あ、僕は白石悠真です。同じ高校の二年生です。」
「白石悠真さん……よろしくお願いします。」
彼女が微笑むたび、悠真の緊張は和らいでいった。葵の名前が持つ威圧感とは違い、彼女自身はどこか親しみやすさを感じさせる。
「そういえば、中間テストが近いですよね。アイドルの仕事があるので、テストが心配なんです。白石くん、勉強得意なら教えてくれないかな?」
「えっ?」
突然の提案に、悠真は目を丸くした。彼女がそんな悩みを抱えているとは想像もしていなかったからだ。
「いや、その……今、放課後に勉強会やってるんですけど、そこでも良いですか?」
彼女は少し考えた後、小さく頷いた。
「……ぜひ、参加させてください。」
「じゃあ、他のメンバーにも確認してみますね。」
悠真はスマホを取り出し、グループチャットにメッセージを送った。
筆者の励みになりますので、よろしければブックマークや★の評価をお願いいたします。温かい応援、よろしくお願いいたします。




