表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/69

第42話 不思議なグループ

 昼休み、教室の隅で参考書を開きながら、僕は大きくため息をついていた。中間テストが迫っているが、何か落ち着かない。ふと顔を上げると、クラスの男子数人が僕の方をちらちら見ているのに気づく。


(またか……最近やたら見られるんだよな。)


 思い当たる理由は明白だ。放課後になると、僕は美咲、真琴、菜月と4人で勉強会をしている。それだけならまだしも、クラスの「カーストトップ」たちと一緒にいる光景はどうやら周囲に衝撃を与えているらしい。


「白石、お前、最近どうした?」


 前の席の男子――田中が小声で話しかけてきた。


「どうしたって?」


「いや、お前、あの橘たちと普通に勉強してるだろ?それに……あいつらと普通に話してるの、何気にすごくね?」


「別にすごいことなんてないよ。ただ、勉強を手伝ってるだけだし。」


 そう言うと、田中は眉をひそめて俺をじっと見つめた。


「勉強……ねぇ。まあ、確かにお前、数学とか得意だもんな。でも、どうして急に?」


「うーん、流れっていうか……まあ、色々あって。」


「色々ってなんだよ!」


「そ、それは……。」


(やばい、具体的に説明できない。この話はなるべく波風立てずに進めたいんだけど。)


 田中の追及から逃れるように視線を戻すと、美咲が真琴と菜月と話しているのが目に入った。彼女たちはいつも通り楽しそうに笑いながら話している。


(放課後では俺もあの輪にいるけど、教室ではこうやって距離を保ってる。これがちょうどいいバランスだよな……。)


 そう考えていると、田中がさらに詰め寄ってきた。


「で、白石、どうやったら橘たちとそんなに仲良くなれるんだよ?アドバイスくれよ!」


「えっ、アドバイスって……。」


「だって、クラスで目立たないお前が、突然あのグループに混ざれるとか、普通ありえなくない?」


(うっ……痛いところを突いてくるな、こいつ。)


 僕が答えに困っていると、真琴がこちらに気づき、手を振ってきた。


「白君、また男子たちに詰め寄られてる?」


 大きな声に教室の視線が一斉にこちらに集まる。


「ちょ、真琴!声大きい!」


「だって面白いんだもん!ねえ、田中君、白君と仲良くなりたいの?」


「え、あ、そういうわけじゃなくて……。」


 突然の話題に田中はたじろぎ、美咲と菜月もこちらに視線を送る。


「白石君、大丈夫?」美咲が心配そうに尋ねる。


「うん、全然大丈夫。田中君がちょっと気になっただけみたいだから。」


「えっ?気になるってどういうこと?」


 菜月がいたずらっぽく目を輝かせる。


「いやいや、誤解だから!」


 田中が必死で否定する。


「じゃあ、放課後も一緒に勉強したいってことかな?」


 真琴が茶化すように続ける。


「そ、それは……別にいいけど、俺、数学苦手だからな……。」


 真琴と菜月が顔を見合わせて笑い、美咲は「もう、二人ともやめて」とやんわり注意する。


「白石君、放課後もよろしくね。」


 美咲が静かに微笑みながら言う。その柔らかい笑顔に、一瞬教室が静まり返った気がした。


(美咲、お前……その笑顔、破壊力強すぎだろ!)


 僕は心臓がバクバクするのをなんとか押さえ込みながら頷いた。


 放課後の勉強会。教室の一角に集まった僕たちは、相変わらずにぎやかだった。


「白君、これ全然わかんない!なんでこうなるの?」


 真琴が頭を抱える横で、菜月が小声で「またか……」と呟く。


「桜井さん、それ、この公式使えば一発で解けるよ。」僕がさらりと説明すると、真琴は驚いたように顔を上げる。


「えっ、白君、天才じゃん!」


「いや、普通に公式だから……。」


「白君、もしテストで満点取ったら何してくれる?」


「いや、なんでご褒美が必要なの!?しかも僕からだし……。」


「だって、白君が教えてくれたおかげだもん。」真琴が少し体を傾け、じっとこちらを見つめながら言う。


「じゃあさ、ご褒美に私が何かしてあげよっか?」


「え、何かって……。」


 真琴が色っぽい仕草で頬杖をつきながら、こちらを見上げる。横で菜月が「白君。わ・た・し・も!!」とすぐに乗っかる。


「ちょ、ちょっと待って!何それ!?僕、普通に勉強教えただけだからぁ〜!」


「あんなことや?こんなこと?して欲しい?」


「そ・れ・と・も〜。二人で同時にして欲しいのかな〜?」


 二人の提案に、美咲が「あのね、二人とも」と軽く咳払いをする。


「白君困ってるでしょ?それに、みんなで楽しく勉強するのが一番なんだから。」


 美咲の言葉に、真琴と菜月は「「はーい」」と渋々戻るが、どこかまだ企んでいるような笑みを浮かべていた。


(何なんだこの二人……でも、美咲のフォローがなかったら完全に振り回されてたな。)


「でも、次のテスト終わったら本当にどこか行きたいね。」


 菜月がパラパラと問題集をめくりながら言う。


「じゃあ、そのときは白君、何かおごってね!」


「いや、なんで僕のおごりなんだよ!」


 にぎやかなやり取りが続く中、僕たちの不思議なグループはどんどん絆を深めていくのを感じていた。


筆者の励みになりますので、よろしければブックマークや★の評価をお願いいたします。温かい応援、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ