第41話 デート(美咲編)後半
振り返ると、真琴と菜月がこちらに向かって全速力で走ってきた。夕暮れの中、二人の声が遠くから響いている。
「美咲ー!待ってよ!」
美咲が驚いた表情を浮かべるが、すぐに柔らかな笑顔に戻る。
「菜月、真琴。どうしたの?こんなところで偶然だね。」
「偶然っていうかさ……やっぱりデートじゃん!」
真琴が息を切らしながら、ニヤニヤした表情で指をさす。
「ち、違うよ!今日はたまたま一緒に映画を見ただけで……。」
美咲は慌てて否定するが、その顔はみるみる赤くなっている。俺は内心ため息をついた。
(これ、絶対に誤解されるやつだよな……。)
「いやいや、その反応、怪しすぎるって!」
菜月が微笑みながら口を開く。
「しかも、こんなにおしゃれしてる美咲って久しぶりに見たかも。」
「そうだよね〜。美咲が男の人と二人で出かけてるなんて、初めてじゃない?」
真琴がじっと美咲を見つめると、美咲はさらに顔を赤くして、小さく肩をすくめた。
「で、そこの人。」
唐突に真琴が俺に話を振る。
「えっ、俺?」
「美咲のこと、どう思ってるんですか?」
その質問に、心臓が一瞬止まりそうになる。真琴の直球すぎる問いかけに、俺はただ呆然とするしかなかった。
「いや、それは……。」
突然の問いに戸惑う俺を見て、美咲が慌てて間に入る。
「ちょっと、やめてよ!」
「別にいいじゃん。私たちも気になるし、美咲のこと心配してるだけ。」
菜月が真琴に同意する。
「ちょっと待って……悠真君?声もそうだし、この目……やっぱりあんた白君だよね!」
「えっ!?」
思わず声が裏返る。菜月も驚いたように真琴を見つめる。
「本当だ……髪型とメガネ無しで変わりすぎて気づかなかったけど、近くで見ると白君そのもの!」
「いや、その……。」
俺が弁明しようとするが、真琴が勝ち誇った表情でさらに詰め寄る。
「なんでそんな二重生活みたいなことしてるの?もしかして美咲のためとか?」
「違う!違うから!」
俺が必死に否定すると、美咲が間に入る。
「二人とも、やめて。悠真君には理由があるの。それに、私が知ってる悠真君は……どちらも悠真君だよ。」
「でも、悠真君って、普段はなんか目立たないしさ……。」
「そうそう!それなのに、なんでこんなにイケメンなの?っていうか、そのギャップ、ズルくない?」
二人の目が一気に俺に向けられる。真琴がじりじりと距離を詰めてくると、俺は思わず後ずさった。
「えっと、それは……髪をセットしたり、メガネを外したりしただけで……。」
「たったそれだけ!?じゃあ、学校の地味設定は何なのよ!」
「いや、地味設定って……!」
菜月が、真琴の肩を叩きながら笑い出す。
「でも確かに、白君が悠真君だなんて、誰も気づかないよね。ねえ、美咲?」
視線を向けられた美咲は、少し照れくさそうに頷いた。
「まあ……そうかも。でも、それにはちゃんと理由があるんだよ。」
そのフォローに、俺は心の中でほっとした。
(美咲、ありがとう……!)
「理由って何?」
菜月が首を傾げながら、さらに突っ込んでくる。
「えっと、それは……。」
「もしかして、クラスの女子全員を惑わせないために隠してたとか?」
「そんな理由あるわけないでしょ!」
俺が必死に否定する中、真琴が腕を組んでジロリと睨む。
「まあいいけど。でも、こんなイケメンだったら、美咲がドキドキしても仕方ないよね。」
「ちょっと、真琴!」
美咲が顔を真っ赤にしながら反論する。その様子を見て、菜月がくすくす笑いながら口を開いた。
「でもさ、悠真君、本当に美咲のことどう思ってるの?」
「それは……。」
またしても核心を突く質問に、俺は少し言葉を詰まらせる。菜月と真琴の真剣な視線がプレッシャーをかけてくる中、美咲が少し前に出てきた。
「二人とも、もういいでしょ。悠真君にはちゃんと理由があるの。それに……私が信じてるんだから。」
その一言で、二人は驚いたように美咲を見つめた。
「美咲がそこまで言うなら、仕方ないけど……。」
「でも、美咲を泣かせたりしたら、絶対許さないからね。」
「わかった。俺も、美咲を大切に思ってるから。」
その言葉に、真琴と菜月は一瞬黙り込む。そして、菜月がぽつりと呟いた。
「……でも、やっぱりイケメンすぎて戸惑うよね。」
「ほんとそれ!普段の白君との差が激しすぎる!」
真琴が笑いながら同意すると、美咲が小さくため息をついた。
「もう、二人とも……。」
彼女のその言葉には、どこか優しさが滲んでいて、俺は胸の奥が少し温かくなるのを感じた。
(美咲、本当にありがとう。)
その後、真琴と菜月は「絶対ハーレムデートするからね!」と宣言しながら去っていった。美咲と二人きりになり、俺たちは駅の方へ向かって歩き始める。
「二人とも、やっぱり騒がしいね。」
「でも、美咲のことを本当に大事に思ってるのが伝わってきたよ。」
「そうかな……。」
「うん、間違いない。だから、俺ももっと美咲のことをちゃんと考えなきゃなって思った。」
その言葉に、美咲が小さく微笑み、そっと呟いた。
「ありがとう。」
その声が、今日一日の締めくくりとして、俺の胸にじんわりと響いた。
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願いが叶う“ドリームノート”を拾った僕、急接近する美少女との予想外な日々も同時に連載中ですので、そちらもよろしくお願いいたします。温かい感想もお待ちしています




