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第36話 勉強ですが何か?

 「……はぁ、はぁ……これ以上は無理!もう限界だって!」


 息を荒らげながら崩れ落ちる真琴の姿に、一瞬場が静まり返る。思わずドキッとする空気に、隣で美咲が眉をひそめた。


「……ちょっと、大げさすぎない?真琴。」

「だって!こんなの頭に入るわけないもん!白君、これ鬼畜すぎるよ!」


 真琴がノートをバンっと閉じ、机に突っ伏した。横で肩を落とす菜月も続けてため息をつく。


「私も無理……白君の問題って、ほんと容赦ないんだよね。」


 二人の様子を見て、美咲が呆れた声を出す。


「ただの数学の練習問題じゃない。そんなに騒ぐほどじゃないよ。」

「美咲、あんたは分かるからそう言えるんだよ!白君、これ解ける人間って美咲以外にいるの?」


 真琴が叫ぶように言い、僕に鋭い視線を送る。


「いやいや、普通に学校の範囲内だよ?特別な問題なんて出してないから!」

「範囲内でこれ!?白君、ちょっとマジでドSなんじゃないの?」

「どこからその結論が出たの!?全然そんなことないから!」


 僕が必死に否定する中、菜月が小さく笑いながらつぶやいた。


「でも、白君が教えてくれるのって、なんだかんだでわかりやすいよね。」

「えっ?」


 思わず驚いて菜月を見ると、彼女は微笑みながらノートをめくった。


「ちゃんと説明してくれるし、話が面白いから飽きないっていうか。白君って意外と先生向いてるんじゃない?」


 その言葉に、俺は少しだけ照れくさくなった。


「いや、ただ教えてるだけだし……。」

「でも、私もそう思う!白君の教え方、なんか楽しい!」

 真琴もニヤニヤしながら同意してくる。すると、美咲が小さく笑いながら言った。

「確かに、白石君って教えるの上手だよね。私も一緒に勉強してて助かること多いし。」


 その言葉に、僕は一瞬言葉を失った。美咲がそんな風に思ってくれていたなんて――正直、嬉しい。


「……ありがとう。そう言ってもらえると、少しは頑張った甲斐があるよ。」


 僕が照れ隠しに軽く咳払いすると、真琴が手を叩いて提案してきた。


「じゃあさ!せっかくだから、勉強会の名前決めようよ!」

「名前?」

「うん、せっかくだし、グループ名みたいな感じでさ!ほら、なんか楽しくなるじゃん?」

「いや、普通に勉強するだけだから、そんなのいらないでしょ……。」


 僕が呆れて言うと、菜月が冗談っぽく提案する。


「じゃあ、『白君と愉快な仲間たち』とか?」

「いや、愉快な仲間って……。」

「いいじゃん、それ!白君が中心っぽいし!」


 真琴がすぐさま乗っかり、美咲が微笑みながらフォローする。


「じゃあ、勉強会限定ってことで、一時的にその名前にしておく?」

「いやいや、冗談だよな?本気じゃないよな!?」


 僕が必死に否定すると、三人とも笑い出す。その笑顔を見て、僕は苦笑いしながら次のプリントを配る。


「ほら、次の問題だ。名前なんてどうでもいいから、まずはこれ解こう。」

「え~、白君、これまた難しそう!」

「だから、白君は鬼なんだってば!」


 僕の抗議も空しく、また三人が笑い出す。この賑やかな勉強会が、なんだかんだで心地よく感じるのが不思議だった。

(……まあ、こんな勉強会も悪くないか。)

 次の問題に集中しようとする三人を横目で見ながら、僕は小さく息を吐いた。

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