第35話 グループ結成
「白石君、ありがとう!さっき本当に助かったよ。」
美咲が笑顔で言うと、俺は軽く手を振った。
「いや、大したことないよ。困っているのが見えたから、つい。」
「え、何何?美咲、白石君に何かしてもらったの?」
不意に真琴が口を挟む。その好奇心旺盛な目に、美咲が一瞬動揺するのが見えた。
「あ、いや、その……授業中にちょっと答えを教えてもらっただけだよ。」
「へえ~、そういうことね!ていうか、美咲と白石君って仲良かったっけ?」
「えっ!?そ、そういうわけじゃないよ!たまたま席が近いだけで……。」
「へえ~、たまたまねぇ。」
真琴がニヤニヤしながら、美咲の顔をじっと覗き込む。菜月も興味津々といった様子で会話に加わる。
「でも、美咲が『ありがとう』なんて言うの珍しいね。ねえねえ、どういう関係なの?」
「えっ、大切な人かな!」
美咲の意外な言葉に、真琴と菜月が目を大きく見開き顔を見合わせた。
「やば〜、どうした?どうした?ニュースじゃん!!」
「ウッソで〜す!!」
「「はぁ〜〜っ!!」」
「やり返しただけで〜す!」
美咲の冗談に場が和やかになり、真琴と菜月はクスクス笑いながらも、どこか釈然としない表情を浮かべている。
「でもさ、本当のところはどうなの?白石君、どう思う?」
突然の質問に俺は思わず目を丸くした。
「え、えっと……橘さんは、クラスの中でも特に頑張り屋だなって思ってて……だから、ちょっとでも助けになればって。」
「ふーん。なるほどね。」
真琴が満足げに頷くと、菜月が意地悪そうに笑いながら口を挟んだ。
「それって、やっぱり特別ってこと?」
「ち、違いますよ!本当にそういうんじゃなくて……。」
俺が慌てて否定すると、真琴と菜月はまた楽しそうに笑い出した。
(なんだこれ……完全に弄ばれてる気がする。)
「まあまあ、冗談は置いといてさ。白石君って数学得意なんだね?」
真琴が話題を変えたことで、俺は少しホッとした。
「わりと得意だったりするかな。」
「マジで?それなら今度放課後教えてくれない?私、ほんと数学苦手でさ~。美咲も菜月も一緒にやろうよ!」
「そうそう、真琴って計算ミスばっかりするから、白石君に特訓してもらえばいいかもね。」
「ちょっと菜月、それ言わなくていいでしょ!」
真琴がふくれっ面をする姿に、美咲と菜月がクスクス笑う。
(恐るべし陽キャの距離感の詰め方……いや、僕には無理だけど。)
「え、えっと……僕でよければ、いつでもいいけど。」
「じゃあ決まり!一応連絡先教えてもらっていい?」
真琴がすぐさまスマホを取り出す。その無邪気な行動に美咲が小さく笑い、菜月は苦笑していた。
「ちょっと真琴、それは急すぎない?」
「えっ?白君、迷惑?」
(ちょ、ちょっと待て……白君!?)
「い、いや、迷惑ってわけじゃないけど……。」
「ほらね!じゃあ決まり~!」
真琴が笑顔で勝ち誇るように言うと、菜月が小声で笑いながら口を開いた。
「でも確かに、呼び方が急に『白君』になるのはどうなの?」
「えー、呼びやすいし、いいじゃん。白君って愛嬌あるし、ね、美咲?」
「うん……まあ、可愛い響きだよね。」
「えっ、橘さんまで!?いや、やめてください、本当に!」
「ほらほら、みんなで『白君』で統一しよう!」
「「「OK!」」」
(何なんだこのノリ……でも、美咲まで賛成するなら、僕が否定する理由なんてない気もするけど。)
放課後、帰り際に美咲がそっと近づいてきた。
「ありがとう、悠真君。楽しくなってきたね。これなら教室でもお話しできそう。」
そう言いながら、美咲が柔らかく微笑む。その笑顔を見て、俺の胸が少しだけ温かくなる。
「いやいや、大したことじゃないよ。それに、僕も楽しかったし。」
美咲の笑顔が、一日の疲れを全て吹き飛ばしてくれるようだった。
「これからもよろしくね、白君♪」
「……だから、その呼び方やめてってば!」
彼女が笑いながら手を振る姿を見送りながら、俺はグループチャットの通知音に気づいた。
▼グループチャット
真琴:みんなよろしく~!これで次のテスト、楽勝っしょ!
菜月:白君、頼りにしてるね~♪
美咲:白石君、よろしく!あと数学教えてね!(笑顔スタンプ)
白石:(ちょっと待ってのスタンプ)
真琴:じゃあテストでいい点取れたら、白君がご飯奢りで!
白石:(無理のスタンプ)
菜月:それか、ハーレムデート!(笑)
白石:ちょ、なんでそうなる!?
真琴:いいじゃん!美咲、どう思う?
美咲:……(怒ったスタンプ)
白石:(やっぱ無理のスタンプ)
こうして僕、美咲、真琴、菜月のグループが本格的に動き出した……果たして大丈夫なんだろうか。
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