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第32話 お昼を一緒に食べようよ その1

 休み時間の教室でぼんやりしていると、スマホが軽く振動した。画面を確認すると、美咲からのメッセージが届いていた。


▼メッセージ

美咲:今日、一緒にお昼ごはん食べたい(お願いスタンプ)

悠真:おお、珍しいじゃん。僕でいいの?(疑問顔スタンプ)

美咲:珍しくないし!悠真君がいいの!(怒りスタンプ)

悠真:はいはい、わかったよ(笑)で、どこで食べる?

美咲:教室が楽なんだけど、2人っきりで食べられそうな場所がないかも。

悠真:えっ、あるよ。超いい場所。

美咲:本当に?どこ?

悠真:こないだ美咲が告白された屋上へ出る階段の所。

悠真:めっちゃ俺のお気に入りなんだ(ドヤ顔スタンプ)

美咲:それって……ボッチ飯の聖地じゃない?

悠真:ちょっと言い方(笑)でもまあ、否定はしない。

美咲:悠真君……悲しくならないの?

悠真:いやいや、そこの良さを知らない人の方が悲しいと思うけど?

美咲:なんか言い返せない……(困り顔スタンプ)

悠真:ほらね。じゃあ今日はその「聖地」にご案内します。

美咲:わかった(笑)じゃあ、私はお弁当持ってくね!

悠真:了解!昼休み、俺が先に行って場所をキープしとくから。

美咲:まさかの席取り(笑)

悠真:譲れないからね(ドヤ顔スタンプ)

美咲:じゃあ期待してるね!(笑)


 昼休み、美咲と教室を出て例の場所へ向かう。屋上へ続く階段は滅多に人が来ない秘密のスポットだ。薄い窓から差し込む陽光が、階段のコンクリートに柔らかな影を作り、まるでこの場所が二人だけの空間であることを示しているようだった。


「ここ、本当に静かなんだね。悠真君のお気に入りっていうのもわかる気がする。」


 階段に腰を下ろしながら、美咲が辺りを見回して微笑む。その笑顔が光の中で一層輝いて見え、胸がふっと暖かくなるのを感じた。


「だろ?たまに一人でここでお昼食べてたけど、今日は一緒だから特別だな。」


 照れ隠しに軽口を叩くと、美咲はふっと笑いながらカバンからお弁当を取り出した。


「じゃあ、いただきますしよっか。」


「おう、いただきます。」


 階段は思った以上に狭い。二人で並んで座ると、肩が少し触れるくらいの距離感になる。その近さに少し緊張しながらも、弁当に箸を伸ばす。


「悠真君、お弁当、自分で作ってるの?」


「ああ、両親が海外へ出張して不在だからね。まあ、簡単なものしか作れないけどな。」


「そうなんだ……。でも、ちゃんと自分でやってるの、偉いね。」


「いや、そんな大したことないよ。美咲の方がすごいだろ。勉強も委員会も全部両立してさ。」


「そんなことないよ。私も時々バタバタしちゃって、いっぱいいっぱいだし。」


 美咲が照れくさそうに笑う。その仕草が妙に可愛らしく、つい視線をそちらに向けてしまう。


「でも、一緒に食べるのっていいね。普段、真琴と菜月と一緒だから、新鮮かも。」


「僕は一人でここにいると落ち着くけど、たまに寂しくなることもあるし。」


「そっか……。じゃあ、これからも一緒にお昼食べようよ。せっかく隣の席になったんだし、もっといろいろ話したいし。」


 美咲の言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。その笑顔は、自分の世界を少しずつ変えていく光のようだった。


「うん、そうだな。これからもよろしく、美咲。」

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