第26話 勉強会、カフェへ集合
放課後、家で一息ついていると、スマホが振動した。画面には麻衣の名前が表示されている。通話ボタンを押すと、明るい彼女の声が飛び込んできた。
「先輩、こんばんは!あの、この間お話しした勉強会の件なんですけど……。」
麻衣の声はいつも以上に弾んでいる。その調子に自然と笑みがこぼれる。
「おう、どうする?実は美咲からも話を聞いてて、3人でやることになりそうだけど。」
「はい!先日学校の図書室で偶然橘先輩と会って、そんな話になったんです!」
「そっか。じゃあ明後日どうだ?バイトもお互い入ってないし、バイト先のカフェでやるのは?」
「えっ、いいですね!カフェならリラックスできそうです!ありがとうございます、先輩!」
「明日マスターに話しておくから、時間はどうする?」
「5時頃でどうでしょう?」
「OK。それで行こう。美咲にも俺から伝えておくよ。」
「お願いします!先輩のイケメン指導、楽しみにしてますね♪」
麻衣の声はどこか茶化すような響きが混じる。苦笑しながら「了解」と答え、通話を切った。続けて、美咲にメッセージを送る。
▼メッセージ画面
悠真:明後日、麻衣も一緒に勉強会することになった。
悠真:バイト先のカフェでやる予定だけど、5時で大丈夫?
美咲:分かった!委員会があるから少し遅れるかもだけど、必ず行くね。
悠真:OK。じゃあ、駅で待ってるよ。(OKスタンプ)
美咲:楽しみにしてる♪(にっこりスタンプ)
当日、待ち合わせ場所で制服姿の美咲と合流すると、彼女は小さく手を振って笑顔を向けてきた。
「ごめん、委員会が長引いちゃって。待った?」
「いや、大丈夫だよ。」
美咲の微笑みが、どこか特別なものに感じられる。軽く言葉を交わしながらカフェへ向かうと、既に麻衣がカジュアルな私服で席についていた。
「悠真先輩、橘先輩、遅いですよ~!」
麻衣は明るい声で軽い不満を漏らす。その表情はいつものように明るく、既にやる気がみなぎっている。
「ごめんね、藤崎さん。委員会があって。」
美咲が申し訳なさそうに微笑むと、麻衣は即座ににっこりと返す。
「全然大丈夫です!私が早く着きすぎただけなので!」
奥の席に移動し、勉強会が始まった。麻衣の苦手な数学を中心に進める。
「ここは公式をこう使うと簡単に計算できるよ。」
俺が解説をすると、麻衣が嬉しそうに頷く。
「なるほど!先輩の説明、わかりやすいです!」
麻衣が目を輝かせているのを横目に、美咲がノートを開きながら口を挟む。
「それなら、もう一問解いてみる?」
美咲が問題を差し出す。麻衣は少し戸惑いながらもペンを握り、解き始めたが途中で止まった。
「ここまでは分かったんですけど……その先が。」
「どれどれ?ここはこうやって考えると……。」
俺がノートにペンを走らせながら説明を続けると、美咲が静かに視線を送ってきた。その眼差しが、どこか鋭くて、無意識に動きが止まる。
「美咲?」
「ううん、何でもない。ただ、悠真君ってやっぱり教え方が上手だなって思ったの。」
美咲の言葉は柔らかいけれど、その瞳の奥には微妙な感情が混ざっている気がした。
麻衣が問題を解き終え、カバンから参考書を取り出しながらふと思いついたように言った。
「そういえば、橘先輩って勉強もできて綺麗で、みんなの憧れですよね!」
突然の発言に、美咲が小さく肩を揺らした。そして、少し微笑みながら答える。
「そうかもね。でも、私は藤崎さんみたいに明るくて気さくな子が羨ましいな。」
「えっ、私ですか?そんな、私なんて全然ですよ!」
麻衣は照れ隠しのように手を振るが、その声はどこか誇らしげだ。美咲の視線は微妙に揺らぎつつも、余裕を保っている。
勉強会が終わり、麻衣がカフェを出た後、美咲がテーブルに手を置いて一息ついた。
「藤崎さん、すごく明るくていい子だね。」
「そうだな。あいつ、みんなに好かれるタイプだから。」
俺が答えると、美咲は少しだけ視線を下げ、ぽつりと呟いた。
「でも……私には負けたくないな。」
その言葉は小さく、それでいて芯のあるものだった。俺は驚きつつも、彼女の意志の強さを感じた。
「負けるわけないだろ。美咲には美咲の良さがある。」
俺がそう言うと、美咲は照れたように頬を赤らめ、視線を逸らした。
「もう、悠真君って時々ずるいよね。」
美咲のその表情を見ながら、次の勉強会が少し楽しみになる自分がいた。
美咲、麻衣、そして悠真のほのぼの(?)な勉強会、いかがでしたでしょうか?三人の個性がぶつかり合いつつも、なんだかんだで和やかな雰囲気が漂うこの展開、ちょっぴりクスッと笑えるシーンもあったかと思います!
感想や評価をいただけると、これからの三人の関係をさらに深く描いていく励みになります!ぜひお待ちしています!




