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第25話 奇跡の席替え

 4月も終わりに近づいた頃、教室には新しい空気が流れ始めていた。ゴールデンウィーク前の特別感が漂い、クラスメイトたちはどこか浮足立った様子だ。


「先生!そろそろ席替えとか、どうですか?」


 教室の中心にいた美咲が、明るい声で提案する。その瞬間、ざわついていたクラスが一気に盛り上がった。


「おお、いいじゃん!」


「美咲ナイス!」


「俺、次こそ窓際がいいな!」


 男子たちの歓声や、女子たちの期待の視線が教室を包む。席替えは学生にとって一大イベントだ。誰と隣になるのか、どの席に座るのか――期待と不安が交錯する中、担任の先生が苦笑いを浮かべながら頷いた。


「そうだな……じゃあ明日、くじ引きで席替えをしよう。全員、新しい席を楽しみにしておけよ!」


 先生の言葉に、クラスは歓声で沸いた。その中心で、美咲が振り返り、にっこりと微笑む。


「明日が楽しみだね。」


 その笑顔に、男子たちは一瞬で心を奪われ、女子たちも「さすが美咲」と感心したように囁き合っていた。


 翌日、待ちに待った席替えの日がやってきた。教室の前には、先生が用意したくじ箱が置かれ、次々とくじを引いていくクラスメイトたち。


「やった!窓際だ!」


「うわ、また前列かよ……。」


 歓声や悲鳴が飛び交う中、僕も手に汗を握りながらくじを引いた。そして、くじに書かれた番号を見た瞬間、心臓が大きく跳ねた。


「窓際、一番後ろ……!」


 その席は、教室の中で一番人気の場所だ。窓からの景色が見えるし、先生の視線も届きにくい。そして何より――。


「私の席は……窓際の隣?」


 美咲がくじを見て、小さく呟く。その目が僕の番号に気づき、ふわっと輝いた。


「よろしくね、白石君。」


「よ、よろしく……。橘さん。」


 僕は心の中でガッツポーズを決めながら、何とか平静を装った。しかし、内心は歓喜の嵐だった。


(神様、本当にありがとう……!)


 席替え後の授業が始まると、美咲がノートに何かを書き、そっと僕の方に差し出してきた。


「隣の席になれて嬉しいな♪」


 その可愛らしいメッセージに、僕は思わず顔が熱くなる。慌てて自分のノートに書き込んで返事をした。


「僕も。まさか隣になるなんて。すごい運命だね。」


 美咲は返事を見ると、ふふっと笑った。その笑顔があまりにも眩しくて、これまで灰色だった学校生活が一気に鮮やかに色づくような気がした。


 昼休みになると、クラスメイトたちが席替えについて話し始めた。


「白石、窓際の後ろとか運良すぎだろ!」


「しかも隣が橘さんって……お前羨ましすぎ!」


「そ、そんなのたまたまだよ。くじ引きだから……。」


 否定してみるものの、内心ではにやけそうになるのを必死に抑えた。


 一方、美咲は女子グループに囲まれて話題の中心になっていた。


「美咲、白石君と隣とかどうなの?」


「なんか、あんまりクラスで話してるイメージないけど、平気?」


「うん、意外と話しやすいし……なんだか落ち着く感じだよ。」


 美咲がさらりと答えると、女子たちは感心したように頷いている。その返答を耳にしながら、僕の胸の中がじんわりと温かくなる。


 放課後、美咲と一緒に教室を出ることになった。隣の席になったばかりということもあって少し緊張していたが、美咲がふと立ち止まった。


「ねえ、悠真君。」


「な、なに?」


 振り返ると、美咲がこちらをじっと見つめ、ほんのり頬を染めながら微笑んだ。


「隣の席になれて、本当に嬉しいよ。これって運命だよね。これからもよろしくね。」


 その言葉に胸が熱くなる。これまでの灰色だった学校生活が、美咲という光で輝き始めている気がした。


「うん、よろしく。」


 僕は小さく頷きながら、美咲の隣を歩き出した。彼女の存在が、不思議と未来を楽しみにさせてくれるようだった。

今回もお読みいただきありがとうございます!✨

みなさん、席替えの思い出ってありますか?ドキドキしながらくじを引いたり、張り出された座席表を確認したり……。そして、もしイケメンや美少女が隣になったら、それだけでその日がちょっと特別に感じたりしましたよね!恋に発展しなくても、なんだか嬉しくなったあの感覚、懐かしいなぁって思いながら今回のお話を書きました。

ぜひみなさんの席替えの思い出も聞いてみたいです!コメントや感想、お待ちしていますね!✨

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