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第24話 勉強中の修羅場??

 図書室の静寂を破る小さな音――ドアが開く音が、やけに大きく聞こえた。美咲と僕が反射的にそちらを振り向くと、そこには麻衣が立っていた。


「あれ?橘先輩?図書室で何してるんですか?」


 麻衣の明るい声が美咲に向けられる。その瞬間、僕は咄嗟にノートに視線を落とし、存在感を消すようにシャーペンを動かし始めた。


(頼む……気づかないでくれ!)


 美咲はほんの一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに微笑みを浮かべて答える。


「藤崎さん。中間テストが近いから、ここで少し勉強してたの。」


「ええっ、橘先輩でも勉強するんですね!なんだか新鮮です!」


 麻衣がそのまま美咲の隣に座ると、さらに明るい声で話し始めた。


「私、先週借りてた本を返しに来ただけなんですけど、まさか橘先輩がいるなんてびっくりしました!」


 僕はひたすらノートに集中しているふりを続けたが、麻衣が近づいてくる気配に、内心の緊張が高まる。


「で、橘先輩。何を勉強してるんですか?数学?それとも英語?」


「えっと……いろいろ。テスト範囲が広いから大変で。」


「ですよね~。私も全然ダメで……そういえば、悠真先輩に勉強教えてもらう約束してるんです!」


 麻衣が嬉しそうに話す言葉に、美咲の手元のペンが一瞬止まる。その動きを横目で捉えた僕は、さらに視線をノートに固定した。


「へぇ……。悠真君って、教えるの上手なんだ?」


 美咲が少しだけ笑顔を浮かべながら答える。その声に棘は感じられなかったが、どこか微妙な感情が混ざっているようだった。


「はい!悠真先輩、わかりやすく教えてくれるんですよ~。すっごく助かってます!」


「そう……良かったね。」


 美咲が微笑みながらそう答えたが、ペンを握る手にわずかに力が入るのが見えた。


「じゃあ、私も今度勉強会に混ぜてもらおうかな?」


 美咲の提案に、麻衣が目を見開いた後、にこっと笑う。


「いいですね!橘先輩がいたら、もっと楽しくなりそうです!」


 その言葉に、美咲の笑顔が少し硬くなる。しかし、麻衣はそれに気づく様子もなく立ち上がり、本を返却カウンターへ運んでいった。


「じゃあ、橘先輩、頑張ってくださいね!私も中間テスト、悠真先輩と一緒に勉強して頑張ります!」


 麻衣が図書室を出ていくと、残された静寂の中で、美咲がペンを置き、じっと僕を見つめた。


「ねえ、悠真君。」


「な、なに?」


 美咲の声は静かだったが、どこか感情を抑え込んだような響きがあった。


「藤崎さんって、バイトの後輩なんだよね。」


「うん、まあ、そうだけど……。」


「なんだか、すごく仲良さそうだったね。」


 美咲がふっと視線を外す。その横顔にはわずかな不安が漂っている。


「いや、麻衣はただの後輩だよ。勉強教えてるだけで、特別なことはないよ。」


「でも、私よりも悠真君と一緒にいる時間、多いんじゃない?」


 彼女が静かにそう言うと、その瞳には嫉妬と不安が入り混じっているのが分かった。


「美咲。」


 僕はゆっくりと彼女の名前を呼び、正直な気持ちを伝えることにした。


「俺が一緒にいたいって思うのは、美咲だからだよ。麻衣はただの後輩で、それ以上でもそれ以下でもない。」


 美咲が一瞬驚いたように僕を見て、それから顔を赤らめて俯いた。


「……ズルいよ、そういうの。」


 小さな声で呟く彼女の頬は夕陽に照らされ、さらに赤く染まって見えた。その様子があまりに可愛くて、僕はつい笑みを浮かべてしまう。


「じゃあ、勉強再開しようか。図書室で話してると、先生に怒られちゃうからさ。」


「……そうだね。」


 美咲が小さく頷きながらノートに向き直る。その横顔を見ながら、僕はそっとシャーペンを握り直し、再び勉強に集中するふりをした。


(やっぱり、美咲の嫉妬ってちょっと可愛いよな……。)


 そんな考えが頭をよぎったのは、美咲に気づかれていないと信じたかっただけだ。

今回もお読みいただきありがとうございます!✨

今回は美咲と麻衣、二人の女性キャラクターによるちょっとした火花が散るシーンを描いてみましたが、いかがでしたでしょうか?女性同士の微妙な感情のぶつかり合いを表現するのって、本当に難しいですね……!それでも、キャラクターたちの魅力や物語の面白さが伝わっていれば幸いです。感想やアドバイスなど、ぜひコメントで教えてください!これからも楽しんでいただける展開をお届けしますので、応援よろしくお願いします!

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