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第23話 放課後の図書室

 放課後の図書室は、窓から差し込む夕陽が机の上を淡く照らし、静寂が心地よい空間だった。普段は散らかった思考も、ここでは自然と整理されていくような気がする。


「今日は、この辺りを復習しようと思うんだ。」


「了解!えっと、ここからだね……あれ、シャーペンどこだっけ?」


 美咲がカバンの中をガサゴソ探し始める。少し焦ったような声と動きに、思わず口元が緩んだ。


「落ち着いて探せばすぐ見つかるよ。」


「もー、悠真君、笑わないで!焦ると見つからないんだから!」


 ぷくっと膨れた美咲の頬が、夕陽の光に映えて思わず微笑んでしまう。その仕草が愛おしくもあり、思わず心の中で感謝する。


(こうやって自然に一緒にいられる時間が、今は本当に貴重だ。)


 ようやくペンを見つけた美咲がノートを開き、再び勉強に向き合った。その時――


「えっ!」


 同じタイミングでノートに手を伸ばした僕たちの手が触れた。ほんの一瞬、でもそれだけで心臓が跳ね上がる。お互い慌てて手を引っ込めた。


「ご、ごめん!」


「わ、私こそ!」


 二人して同時に謝ったあと、短い沈黙が流れる。美咲の頬が夕陽でさらに赤く見えるのは、気のせいじゃない。


「こういうのって、ラブコメのテンプレだよな。」


「なっ、なんで悠真君がそんなこと言うの!?もうっ!」


 美咲が顔を赤くしながら、僕を軽く小突く。その仕草に、図書室の空気がほんのり甘く染まったような気がした。


 しかし、勉強に戻ろうとしても、どうにも集中できない。美咲が小声で提案する。


「ねえ、勉強中に話すのって、ちょっと目立つよね……。」


「まあ、図書室だしな。声を出すのは控えないと。」


「だったらさ、メールでやりとりしようよ!」


「メールで?」


「うん、筆談みたいな感じ!楽しいと思わない?」


 美咲が少し得意げな表情を浮かべる。それが妙に可愛くて、断る理由が思い浮かばない。


「……いいよ、やってみよう。」


「やった!これでバレないね!」


 美咲がスマホを取り出し、さっそく画面を操作し始めた。僕もスマホを手に取り、目の前にいる美咲にメッセージを送るという不思議な光景に、少し笑ってしまう。


▼スマホのやり取り

美咲:『教室で悠真君と自然に話す方法、何かいいアイデアないかな?』

悠真:『教室で自然に話すなら、隣の席がベストだよね。』

美咲:『それ以外は?』

悠真:『うーん、僕が堂々と話してたら「陰キャが調子に乗ってる」って攻撃されるからなぁ。何かきっかけがないと難しいかも。』

美咲:『それ、ほんと意味わかんない。悠真君、そんな風に思われるの悔しいな。』

悠真:『気にするなよ。僕は気にしてないから。』

美咲:『本当?じゃあ、私が席替えの提案して先生にお願いするね!』

悠真:『マジか(笑)』


 メール越しでも伝わる美咲の前向きな態度に、自然と笑みが浮かぶ。

(この距離感、悪くないかもな……。)


 二人でノートに向き合いながらも、スマホを交えた不思議な勉強会が続く。その間、美咲の目がたまにスマホ越しではなく、直接僕を見ていることに気づいた。


(美咲の視線……やっぱり特別だ。)


 勉強の内容なんて、もうどうでもいいと思えるくらい、彼女の存在が心の中に広がっていく。

今回も読んでいただきありがとうございます!✨

今回は初めてチャットのシーンを掲載してみましたが、皆さんいかがでしたでしょうか?キャラクター同士のやり取りが少しでも身近に感じられたら嬉しいです。感想やご意見がありましたら、ぜひコメントで教えてください!これからも物語に新しいエッセンスを加えていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!

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