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第20話 屋上の告白

 昼休みの学校はいつも騒がしい。教室で響く笑い声を背に、僕は屋上へ続く階段を上がった。

 ここは僕にとっての隠れ家だ。週に何度かこの場所で一人静かに昼食を取るのが日課になっている。風通しが良くて居心地がいい。それに、誰にも邪魔されない。


 今日もお気に入りの本を開き、持参したおにぎりを食べながらページをめくっていた。だけど、その平穏は突然の声で破られることになる。


「それで……こんなところまで呼び出して、用事って何?」


 聞き慣れた声に顔を上げると、美咲が立っていた。驚いて本を閉じ、そっと身を潜めるように下を覗くと、美咲の前には一人の男子が立っている。

 背が高く短髪で快活そうな雰囲気――バスケ部の部長、藤井だ。彼は周囲でも評判のエースで、確か校内で目立つ存在の一人だったはずだ。


「実はさ、5月に新人戦があるんだ。俺たちバスケ部にとって大事な試合でさ……橘さん、応援に来てほしいんだ。」


「応援?」


「でも、その前に……俺の彼女になってくれないか?」


 その言葉に、美咲が一瞬目を見開く。


「えっ……?」


 藤井は真剣な表情で続けた。


「ずっと君のことが気になってた。橘さんが応援に来てくれたら、きっと俺たちのチームももっと強くなれるし、俺自身もっと頑張れる気がするんだ。」


 その熱意のこもった言葉に、美咲は一瞬困惑の表情を浮かべたが、すぐに唇を結んで答えた。


「……ごめんなさい。」


「どうして?」


 藤井の声には動揺が混じっている。


「今、すごく好きな人がいるの。その人以外のことは考えられないから。」


 その答えに、藤井の表情が曇る。そして、諦めきれない様子で一歩踏み出した。


「でもさ、その好きな人って本当に俺よりいい男なのか?俺みたいなバスケ部のエースよりさ。」


 その言葉に、美咲の顔が困惑に染まる。さらに藤井は強引に彼女の腕を掴んだ。


「どんな奴か知らないけど、俺の方が絶対いいに決まってるだろ?」


「やめて!」


 美咲が抵抗する声が聞こえたその瞬間、僕は本を置いて階段を下り始めていた。胸の中には静かだけど確かな怒りが湧き上がる。


「やめろ。」


 冷静な声で言いながら、僕は藤井の腕を掴んだ。驚いたように振り返った彼と目が合う。


「お前……誰だよ。」


 藤井は僕を見下ろし、薄く笑った。


「なんだ、陰キャの分際で何言ってんだ?お前に関係ないだろ。」


「関係ないわけないだろ。彼女が嫌がってるのがわからないのか?」


「はあ?俺は彼女のために――」


「違うな。」僕は彼の言葉を遮った。


「彼女のためって言うなら、まず彼女の気持ちを尊重すべきだろう。それができないなら、ただの自己満足だ。」


 藤井は一瞬言葉を失い、やがて腕を離した。


「……チッ、面倒くせえ。」


 吐き捨てるように言いながら、藤井はその場を去っていった。


 静まり返った空気の中、美咲が小さく息をつく。


「ありがとう……悠真君。」


 その名前に、心臓が一瞬止まったような感覚に襲われる。


「えっと、それは……。」


 自分でも驚くほど声がかすれた。視線をどうすればいいのかわからない。


 美咲がじっと僕を見つめた後、静かに微笑む。


「そっか……やっぱり……ね。」


 その言葉に、僕は全てが露見したことを悟った。


(もう、隠しきれない……。)


 読んでくださりありがとうございます!2024年もあと少しで終わりですね。今年一年の締めくくりに、この物語を読んで少しでも笑顔やトキメキを感じていただけたら嬉しいです!もし楽しんでいただけたら、フォローや⭐︎の評価で応援をお願いします。来年もどうぞよろしくお願いいたします!素敵な年末をお過ごしください!

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