第19話 甘くて秘密の時間
投稿の予約を失敗していました。本日は、20話までUPします
「美咲!」
振り向くと、美咲の友人らしき二人の女子が駆け寄ってきた。一人は明るい髪色で活発そうな雰囲気の桜井真琴。もう一人はおっとりした控えめな印象の中村菜月。二人とも親しげに美咲に手を振りながら、笑顔を向けている。
「美咲、こんなところで会うなんてびっくり!……あれ、その隣の人は?」
「あ、えっと……。」
美咲が一瞬言葉を詰まらせた。その間に僕は軽く会釈しながら、できるだけ自然に答える。
「初めまして、悠真です。」
名字を伏せて名前だけを名乗る。美咲と同じ学校のクラスメイトだと気づかれないように、内心ひやひやしていた。
「悠真君?美咲の……もしかして彼氏さん!?」
菜月が少し驚いた様子で尋ねる。その言葉に、美咲の顔が一気に赤く染まった。
「えっ、ち、違うよ!そういうのじゃなくて!」
「なになに?それじゃどういう関係なの?」
真琴がニヤニヤしながら詰め寄ると、美咲は慌てて首を振った。
「も、もう、真琴!やめてよ!」
「やめてって言われてもさ~、こんなイケメンと一緒にいるのに説明なしって、それは気になるでしょ?」
「だから、そんなんじゃないってば!」
「でもさ、さっきから手も繋いでるし……。」
菜月が控えめな声でぽつりと指摘すると、美咲の顔はさらに真っ赤になり、言葉を探し始めた。その時、僕は軽く手を上げて口元に人差し指を立て、軽く首を傾けながら少しだけ笑みを浮かべる。
「……秘密なんだ。」
「秘密って何それ~!?」
「美咲、こんなイケメンどこで見つけたの?」
美咲はさらに慌てた様子で、二人の腕を軽く叩きながら抗議する。
「違うから!ほんとに!悠真君も変なこと言わないで!」
「いやいや、変なことじゃなくて、少しだけ遊んでみただけだよ。」
冗談を軽く返しながら、美咲の困った顔を見ていると、胸の奥に少し暖かいものが広がった。
二人の友人が去った後、美咲が小さな声で呟いた。
「……悠真君、ずっと手を繋いでたね。」
「当たり前だろ。手を離したら、俺が美咲を拒絶したみたいになるし、繋いでた方が安心するだろ?」
「……うん、ありがとう。」
彼女の顔がほんのり赤いままなのが可愛くて、僕は口角を上げた。
夕焼けに染まる街を歩きながら、美咲がちらりと僕を見上げる。
「……ねえ、まだ帰りたくないな。」
その言葉に少し驚きながらも、僕はすぐに答えた。
「じゃあさ、一緒に夕飯でも食べる?」
「えっ?」
「お腹減ってるだろ?ちょうどこの先にファミレスがあるし。」
「……うん!」
ファミレスの店内は心地よいざわめきに包まれていた。美咲がメニューを真剣に眺める横顔を見ていると、どこか穏やかな気持ちになる。
「悠真君はいつもファミレスとか来るの?」
「たまにかな。一人で来ることがほとんどだけど、こうして誰かと来るのは久しぶりだよ。」
「そっか……私は、真琴や菜月と来ることが多かったかな。でも、今日は特別かも。」
照れ隠しのように視線をメニューに落としながら話す美咲。その言葉に、僕は自然と微笑みが浮かんだ。
夕飯を終え、駅へ向かう途中、美咲がふと立ち止まった。
「今日は本当にありがとう。すっごく楽しかった!」
「俺も楽しかったよ。こんなに笑ったデートは久しぶりかも。」
美咲は嬉しそうに微笑みながら、少しだけ間を置いて言葉を続けた。
「また一緒に出かけようね。」
「もちろん。次も楽しみにしてるよ。」
彼女と別れた後、手に残る温もりを感じながら、今日の出来事を思い出していた。その記憶の中で、美咲の笑顔が何よりも輝いて見えた。
今回もお読みいただきありがとうございます!✨
突然、美咲の友達に見つかっても堂々と手を離さない悠真……これぞ真のイケメンですよね!こんな頼れる男子が世の中にいっぱいいたらいいのに~、と心の底から思います(笑)。美咲が羨ましい!