表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/69

第16話 勉強会の提案

 バイトの閉店準備を終えた頃、麻衣が少し遠慮がちに声をかけてきた。


「先輩……少しお時間、いただけますか?」


 その言葉に僕は軽く頷き、麻衣と一緒に店を出た。近くの公園まで歩き、ベンチに座ると、麻衣は少し俯きながら口を開いた。


「実は……中間テストが近くて。勉強、全然進んでないんです。」


 麻衣の声には、自分に対する苛立ちや不安が滲んでいた。


「テストか。どの科目が苦手なんだ?」


「数学と物理です。なんというか、問題を見るだけで頭が真っ白になっちゃって……。」


 彼女が悔しそうに唇を噛む。その姿を見て、僕は軽く笑いながら言った。


「それなら教えてやるよ。数学と物理なら割と得意だし。」


「えっ、本当ですか?」


 麻衣が驚いたように顔を上げる。その瞳には期待の色が浮かんでいた。


「本当だよ。バイト終わりとかで良ければ、コーヒーでも飲みながら一緒にやろう。」


「ありがとうございます!先輩が教えてくれるなんて……心強いです!」


 麻衣が満面の笑みを浮かべる。その笑顔がどこか安心感を与えてくれた。


 夜風が頬を撫でる中、僕たちは駅へ向かって歩いていた。麻衣が隣で何か言いたそうに口を開きかけては閉じるのが、気にならないはずもない。


「何か言いたいことでもあるのか?」


 僕が尋ねると、彼女は一瞬だけ躊躇した後、小さな声で呟いた。


「……先輩、手を繋いでもいいですか?」


 その言葉に、思わず立ち止まった。麻衣の表情は真剣そのもので、冗談を言っているようには見えない。


「ん?別にいいけど……なんで急に?」


「最近、自分が一人ぼっちな気がして……でも、先輩といるとそんな気持ちが少し楽になるんです。」


 彼女の言葉は消え入りそうだったけれど、その中に隠れた本音が胸に響いた。


「そっか。じゃあ繋ごう。」


 僕は軽く手を差し出す。麻衣は少しだけためらった後、そっと手を握った。その手は冷たかったけれど、不思議と温かさも感じられた。


「ありがとう、先輩。」


 彼女が小さな声でそう言った時、僕は何も言わず歩き出した。麻衣の手のぬくもりが、心に静かにしみ込んでいく。


 家に帰り着くと、スマホが振動した。画面には「橘美咲」の名前が表示されている。


「美咲……?」


 急な着信に少しだけ驚きながら通話ボタンを押すと、彼女の声が耳に届いた。


「悠真君、今大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。どうした?」


「ちょっと話したいことがあって……時間あるかな?」


 美咲の声には、普段の明るさとは違う微かな緊張が感じられた。その響きに、僕は少しだけ胸がざわつくのを感じていた。

今回もお読みいただきありがとうございます!✨


勉強って本当に大切ですよね。何が大切かって?結果を出して初めて評価されるからだと思います。努力はもちろん大事。でも、結果が伴うことで、その努力が報われる瞬間が来るんですよね。


麻衣ちゃんも、その結果を出そうと一生懸命もがいています。そんな彼女の姿に共感したり、応援したくなったりしませんか?感想や評価で、ぜひ彼女へのエールを届けてくださいね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ