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第14話 後輩からの相談

 バイトが終わり、店内の片付けも一段落した頃。麻衣が制服の上にカーディガンを羽織り、僕に声をかけてきた。


「先輩、少しだけお時間もらってもいいですか?」


「いいよ。電話で言っていた相談かな? どうした?」


「外で話したいことがあって……。」


 麻衣のいつもの明るい声に隠れた控えめなトーンが気になった。僕たちは店を出て、近くの公園へと向かった。夜風が少し冷たく、昼間の喧騒とは打って変わって静かな空間が広がっている。


 ベンチに腰を下ろした麻衣は、しばらく視線を地面に向けたままだった。


「で、相談って何だ?」


 静かにそう声をかけると、麻衣は小さく息を吐きながら口を開いた。


「実は……最近、友達とうまくいかなくて。」


 彼女の声はどこか不安げで、普段の元気さとは程遠いものだった。


「友達と?」


「はい。なんだか、距離が掴めないんです。特に最近、一緒にいるのが疲れるなって感じたり、逆に一人でいると寂しかったり……。」


 麻衣の言葉が途切れた。その横顔はどこか影を帯びていて、いつもの彼女らしくない。


「例えば、何かあったのか?」


 少し間を置いて尋ねると、麻衣は小さく頷いた。


「最近、友達と話している時に意見が合わなくて……それが些細なことだったんですけど、そこからなんだかぎこちなくなっちゃって。」


「些細なこと?」


「うん……私が好きな漫画の話をした時に、ちょっと馬鹿にされた感じがして。その場は笑ってごまかしたけど、なんとなく距離を置かれるようになった気がするんです。」


 麻衣の声には、自分でもどうしたらいいかわからない戸惑いが滲んでいた。


「それで、麻衣はどうしたいんだ?」


「どうしたいって……。」


 彼女は言葉を探すように間を置いた。そして、ぽつりと言葉を落とす。


「……もっと自分らしくいたいけど、どうしても周りに合わせちゃうんです。合わせないと嫌われる気がして……。」


 麻衣の声は弱々しくて、普段の彼女とはまるで別人のようだった。


「それって、麻衣らしくないよな。」


 僕は少し微笑みながら言った。彼女が目を丸くして僕を見つめる。


「周りに合わせようとする気持ちはわかる。でも、麻衣が無理して作った笑顔より、自然な笑顔の方が絶対にいいと思うよ。」


「……自然な笑顔?」


「そう。バイトで麻衣が笑ってる時、俺もマスターも他のスタッフも元気をもらってる。そんな麻衣だから、無理する必要なんてないと思う。」


 麻衣は目を伏せたまま、小さく頷いた。


「でも……それでまた嫌われたらどうしようって、怖くて……。」


 彼女の声がかすかに震える。その姿に、僕はそっと言葉を続けた。


「麻衣が自然な自分でいることを受け入れられない人って、本当に友達だと思うか?」


「えっ……?」


「友達って、お互いのいいところも悪いところも認め合うもんだろ?麻衣が無理して疲れちゃうんじゃ、本当に大切なものを見失っちゃうかもしれないぞ。」


 彼女はハッとしたように顔を上げ、僕の顔をじっと見つめた。


「……先輩って、ほんと変わってますね。」


「そうか?普通のことだと思うけどな。」


「普通じゃないですよ。こんな風に言ってくれる人、他にいませんもん。」


 麻衣がふっと笑顔を見せた。その笑顔はいつもの元気さとは違って、どこか安堵の色が混じっている。


「ありがとう、先輩。なんか……ちょっと楽になりました。」


「なら良かった。でも、困ったらまた話せよ。」


「はい!」


 麻衣は立ち上がり、軽く手を振った。その背中を見送りながら、僕は夜風の冷たさを少しだけ心地よく感じた。


(麻衣の笑顔は、きっと誰かを元気にする力がある。だからこそ、俺もその笑顔を守りたいと思った。)


 月明かりの下、静かな夜は僕たちの思いを優しく包み込んでいた。

今回もお読みいただきありがとうございます!✨


麻衣ちゃん、実は結構悩んでいるんです。高校生だけじゃなくて、私たちも人間関係で悩むことってありますよね。「自分らしく生きる」って簡単そうに見えて、実はすごく難しい。でも、ちょっとずつでも自分のペースで向き合えるといいなって思います。


そんな麻衣ちゃんの心の葛藤、どう感じたかぜひ教えてください!感想や評価で応援していただけると嬉しいです!✨

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