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第11話 揺れる思い

 再びショッピングセンターの中を歩き始めたが、美咲はどこか口数が少ない。

 先ほどまでの楽しそうな表情は影を潜め、時折視線を落としながら歩いている。


「美咲、何か気になることでもある?」


「……えっ?別にそんなことないよ。」


 彼女の声はいつも通りの落ち着いた調子だったが、その言葉には微かに戸惑いが混じっている。

 僕は少し立ち止まり、彼女の顔を覗き込んだ。


「本当に?さっきから少し元気がない気がするけど……何かあったなら、話してほしい。」


 そう問いかけると、美咲は一瞬だけ躊躇いを見せ、次いで小さな声で呟いた。


「……悠真君のバイト先とか、藤崎さんのこととか、ちょっと考えてたの。」


「どういう意味?」


 彼女の言葉の真意が掴めずに聞き返すと、美咲は顔を伏せたまま続けた。


「だって、さっきの後輩の子……すごく楽しそうに悠真君のこと話してたから。なんか、私よりずっと悠真君のこと知ってるのかなって思っちゃって……。」


 その言葉に、僕は少し驚きながらも優しい笑みを浮かべた。

 美咲がこんな風に素直な感情を口にするのは初めてかもしれない。


「美咲がそう思うなんて意外だな。けど、心配することはないよ。麻衣は確かに明るい子だけど、それ以上でも以下でもない。ただのバイト仲間だよ。」


 そう言いながら、彼女の目を見つめる。

 美咲は少し恥ずかしそうに視線を逸らしながらも、小さく頷いた。


「……うん、わかった。」


「それに、バイト姿なんて普段の俺とそんなに変わらないよ。むしろ、美咲の方が俺のこと、ちゃんと見てくれてるって思うよ。」


 その一言に、美咲の目がわずかに見開かれる。そして、彼女の頬がほんのり赤く染まった。


「そっか……ありがとう、悠真君。」


 しばらく歩き続けると、彼女がふいに立ち止まった。

 周囲の喧騒が一瞬だけ遠のいたように感じる。


「ねえ、悠真君。私……悠真君のバイト先、行ってもいいかな?」


 その質問に、僕は少し驚いた。彼女が自分からこんな提案をしてくるとは思っていなかったからだ。


「もちろんいいよ。むしろ、見てくれると嬉しいかも。でも……幻滅しないでよ?」


「しないよ。悠真君がどんな風に働いてるのか、ちゃんと見てみたいだけだから。」


 彼女が少し照れたように微笑む。その笑顔に胸が軽くなるのを感じた。


「じゃあ、明日の午後にでも来てみる?」


「うん、行く!」


 美咲の即答に、僕は思わず笑ってしまう。


「了解。明日はちょうどシフト入ってるから、楽しみにしてて。」


「ありがとう、楽しみにしてるね。」


 夕方、駅へ向かう帰り道。

 改札口の前で、美咲がふと立ち止まった。


「今日は本当にありがとう。また誘ってもいいかな?」


 彼女が少し恥ずかしそうに聞いてくる。その仕草があまりに可愛らしくて、僕は思わず笑った。


「美咲が誘ってくれるなら、俺も喜んで行くよ。でも、次は俺が誘うからね。」


 そう答えると、美咲は嬉しそうに笑い、軽く手を振りながら去っていった。


 彼女の姿が見えなくなるまで見送った後、僕も改札を通ろうと歩き出す。

 その時、ポケットの中のスマホが振動した。

 画面には、「藤崎麻衣」の名前が表示されている。


(なんだろう……?)


 不意に心の中で、小さな波紋が広がるのを感じた。

美咲ちゃん、少し嫉妬が顔に出ちゃったけど、バイトに来ていいよって言われて、ちょっと嬉しそう……? でも、誤解しないでください! チョロインなんかじゃありません!(ぷんぷん) 彼女なりに一生懸命なんです。


そんな美咲ちゃんの可愛らしさに共感したら、感想や評価で応援していただけると嬉しいです! 次回もぜひお楽しみに!

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