表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/28

陰謀の見え隠れ

 店の駐車場に車を停め、車の中で、二回目のフィンランディアを聴いていると、一台のタクシーが店の前に止まった。山本が到着した。小泉は惜しそうにエンジンを切り、店へ向かった。

「おお、早かったな」

 山本が言うと、小泉は笑った。

「面白そうな話題を掴んだんだろ。そりゃ飛んでくるさ」

「まだ、本当かどうか分からないぞ。まあ、中で話す」

 二人で中に入ると、山本が思い出したように話しかけてきた。

「そう言えば、福田は?」

「あぁ、連絡もらったのが別れた後だったから、わざわざ呼び戻すのは可哀想だったから今日はいない」

「なるほどな」

 山本は生ビールを注文し、小泉は烏龍茶を注文した。乾杯を終えると、小泉は早速話を切り出した。

「あれ、どう言うことだ?」

「まあまあ、慌てなさんな」

 山本は、ビールで喉を潤してから、先程より小さな声で語り出した。

「半年前に、多摩エリアの道路を増幅と新設する計画があっただろ」

「あぁ、中央道が混雑するからってやつか」

「そう、あれの建築資材の運送を担当している会社はどこか知っているか?」

「さぁ、考えたこともないけど、それが何か」

「その会社がウチだったんだ」

「え、嘘だろ」

 まさかの事実だった。

「本当だ。その証拠にウチの営業利益はどんどん増えている」

「でも、他の会社も担当してるだろ。いくらなんでもウチの会社だけで賄えるのか」

「ウチだけだ」

 小泉は、大きな衝撃を受けた。

「で、それが、横山とどんな関係があるんだ」

「大アリなんだ。当時のこの工事を推進していた政治家誰か知ってるか」

「さぁ、政治はよく分からん」

「一ノ瀬幸一だ」

「一ノ瀬幸一?どっかで聞いたことある名前だが、思い出せんな。有名人か?」

「有名すぎる。今の国土交通大臣、誰だと思う?」

「え、まさか」

「そのまさかだ」

 どこかで聞いたことがあると思っていた。それは、毎日耳にしていた総裁選挙の候補者だった。

「で、そいつがどうしたんだよ」

「聞いて驚くなよ。同じ学習院大学生で、一ノ瀬と横山は同級生だったんだ」

「ええー! 嘘だろ」

「ちょ、声がでかいし本当だ。俺も驚いたんだ」

 まさか、横山が国土交通大臣と繋がっていたなんて。いや、もしかしたら今も繋がっているはずだ。

「でも、実際に繋がってる証拠はないんだろ」

「証拠はない。けど、当時横山は営業部次長だ。繋がるとしたら、ここからだと思う」

「じゃあ営業部長も知ってるのか」

「恐らく。もしかしたら、役員の中にも知っている奴はいるかもしれない」

 役員の承認を得なければ、この話は進まなかったはずなからだ。

「それってやばくないか」

「めちゃくちゃやばい」

「どうする、ずみさん」

「放っておいたら、どうなる」

「あとあとバレるだろう。この会社の信頼は一気に崩壊するだろう」

「どうしたらいい」

「内部告発だ」

「内部告発って、役員は知ってるんだろ。揉み消されるぞ」

 小泉は、内部告発という単語を聞いて、いよいよ緊張感を感じてきた。

「全員知っているかどうかは分からない。あと、上層部に告発じゃなくて、マスコミにする方法もある。ただ、内部告発するには確固たる証拠がいる。今は焦らずに証拠を集める方がいいと思う」

「そうだな。やるか?」

「俺はやる。こんな会社に勤めてたのが馬鹿らしくなる」

 相変わらず真面目だ。しかし、小泉は山本を尊敬せざるを得ない。

「明日、福田にも言う」

「ああ、改めて三人で話し合おう」

 二人は、残りの料理を平らげ、飲み干した。二人で店を出て、小泉の車で山本を送り、その後帰宅した。

 新月に近く、一等星が遠くの空で瞬いていた。

 

 家に帰ると、和美が風呂から出るところだった。

「あ、おかえりさい。ご飯は食べたんでしょう?」

「ああ、食べてきた。はいこれ」

「なにこれ、お菓子?」

「上司にもらったんだ。奥さんの友達から貰ったらしい」

 小泉は、袋に入ったラング・ド・シャを和美に渡した。

「やったー! 紅茶でも飲む?」

「お、いいな」

 和美は、ワクワクしながら紅茶を淹れている。

 二人でテーブルに座ると、和美がニュースを観始めた。小泉は、気になって聞いてみた。

「一ノ瀬ってどう思う?」

「一ノ瀬? あー、国交大臣の?」

「そう」

「さぁー、顔はいいけど世襲だし嫌いだわ」

 ばっさり斬られて、小泉は笑った。

「そうか」

 和美がラング・ド・シャの袋を開けると、小泉は紅茶を飲みながら、内部告発についてスマートフォンで検索していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ