表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

5 「桃太郎」の世界②


私の言葉が、開戦の合図となった。


 鬼はみかを降ろし、どっしりとした構えで私めがけて突っ込んできた。


ぶるんぶるんと振るわれた金棒を避けつつ、間合いを狙って果敢に攻めていく。



パガッ、カァン、ブルンブルン…….


ーーなるほど。鬼の攻撃はけっこう単純だ。機動が遅い。

 

 頑張れ、私。勝算はある。


ーーヒュンッ


つうっ⁈」


 金棒が、私の太ももをかすめた。


もう少し避けるのが遅かったら……。


「ふん、貴様など、名ばかりの正義を振りかざしているだけだろうが。

俺は、やりたいようにやる。それこそが俺の正義だ」


 こいつの言葉に耳を貸せば、太刀筋が乱されてしまう。集中、しなければ。


 でも1つだけ、言ってやりたいことがある。


「私には、守りたいものがある。ーーその子を返してもらおうか。オラァァ‼︎」


 鬼気迫る。覚悟はとうに決めていた。


この刃で、みかを助けるんだ。


 鬼の首めがけて一直線。

切っ先が首をスッとかすめるが、斬れるすんでのところで峰打ちにしてやる。

 鬼は、ついに気絶した。



「これが! 私の! "正義"だ‼︎」


 つくづく思う。私はいい奴。


 

 そして、一目散にみかのもとへ駆け寄っていく。

「みか! みか‼︎ 大丈夫? ……返事を、してよっ」


 みかはうつろな目をしたままだ。

私は必死になって呼びかけるが、みかはそのまま、ガクッと倒れた。


「嘘⁈ ……みか‼︎」



「……ふっ、ふふっ。」とみかが愉快そうに笑う。



私は、信じられない、という顔をした。


「んふふ、悪いわね。ーーこういうのはさすがに、良くないか」


「みか! っ、無事で良かった、良かったあ」

 私はほっとしてまた涙を流し、みかにがばっと抱き着く。



「もうっ、分かったから! アツ苦しいから早く離れなさいよ‼︎ ……でもまあ、助けてくれて、アリガト」


 歯切れ悪くそういうみかに、私ははにかみながら、どういたしまして、と答えた。


「私は、何度も助けてもらったから、これでおあいこだね。ーーこの旅だって、私を助けるためにしてくれたんだよね?」


「うぅーん、70点ってとこね。

 私達はただ、けいに楽しんでもらいたかっただけよ」


 おどけた様子でみかが言い、私はそれにすかさずツッコミを入れる。なんだそりゃ。


「そしてあんた、やっぱり強かったわね。剣道は、まだ続けてるの?」


「ううん。受験もあるから去年辞めちゃったんだけど、高校に入学したら、またやってみようかな。私、強いし?」



 私が片手を大きく回したその時。

 放浪の旅に出かけていた桃太郎御一行が、やっと帰ってきた。


そして、鬼はどこに逃げたんだ、なんて言うから、私達はまたふたりして笑い合った。


そうだ、鬼への説教は間抜けなあの人達に任せてしまおう。それがいい。



「ねえ、けい

「なあに? みか」


「いつか私が酔った時のこと、覚えてる?」


ーーその話の、続き。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ