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モブ令嬢の結婚話

作者: カカラ

趣味を詰め込みました

楽しんでもらえたら幸いです

おまけは結婚相手の小話です


 私ことエイミー・ヴェールは、気づいていた。ここは乙女ゲームの世界、に似た世界だと。


 そして貴族として生まれたが、その他大勢の存在であるということも。


 顔はぱっとしないし、クリーム色の癖毛も海松色の瞳も特に珍しくない。


 そしてこの世界では、()()()()()()()()()()()()()()の者は、案外たくさんいたようだった。


 近世のヨーロッパ(18世紀)みたいな雰囲気ではあったが、21世紀にもあるものがそこかしこにあるからだ。例えばでいうとスマホっぽい魔法の板(携帯できる連絡機)とか。


 それに私の場合、前世は薄ぼんやりと断片的にしか覚えていない。だからなのか、精神年齢が少し高い程度の恩恵しかなかった。


 両親は物心つく前に他界し、世話になっている伯父家族には疎まれ気味だったから、丁度よかったかもしれない。


 で、ゲームに似た世界であると気付いたのは二つの要因があった。


 一つ目は、ある日買い出しに出ていた街中でのこと。


 裏路地で人相の悪い大人達が何か集まっているところを見かけた。


 好奇心で、気配を消して近づいて見ると、大人達は子供を二人囲んでいるようだった。金髪の美少年と桃髪の美少女だ。


 金髪美少年は明らかにお忍びのお坊ちゃんだった。拐って金をせしめようとしていたのだろう。それを桃髪美少女が庇っていた。


 いやこれ二人とも拐われて売り捌かれるやつじゃんと思って、衛兵を連絡機で呼んだ。


 その時はまだ、なんか既視感あるなーくらいにしか思っていなかったのだけど。


 二つ目が、王子の婚約者を探すパーティに呼ばれた時のことだ。


 王子の顔を見て、あの時のお忍び金髪坊っちゃんだ、と気づいた。


 そして、公爵令嬢である赤髪の吊り目美少女が、


「こ、これはどういうことですのーッ!!」


なんて叫んでぶっ倒れた。


 それで気づいたのだ。この間のはヒロインと王子が出会う場面だったんだと。


 そして赤髪吊り目美少女は、いわゆる悪役令嬢になる子であると。そして恐らく、ちょうど今前世の記憶を思い出したんだろう。


 ストーリーはありがちのやつなので省略。簡単に言えば特殊能力を持った少女の学園恋愛モノ。ハーレムあり、バトルもあり。


 あまり驚くことはなかったのは、買い物で買おうとしたものを思い出したのと感覚が似ていたからだろう。


 丁度同じ時期に学園に入学するっぽいからヒロインの攻略の手伝いとか悪役令嬢の処刑回避を手伝おうかと一瞬考えたが無理だった。


 元々内容をよく覚えていないこともあってフラグ管理とか絶対無理。


 単なる傍観者として学園生活を送ろうと決めた。それによく考えたら大した知識も持ってなかった。


 ただゲームと違い、学園で出会った悪役令嬢は処刑を回避しようと奮闘する少女で、ヒロインは野心に満ちた少女だった。


 それで、やっぱりゲームとは違うんだな(ここは現実なんだな)と改めて感じた。


 世界を巻き込む大騒動があったが、どうにか無事学園を卒業した私は今日、ごく一般的な政略結婚をする。


 旦那様になるジェローム・フェール様はなんというか、モブ貴族の代表みたいな人だった。


 少しクセのついた灰色の髪(この世界ではそう珍しくない色)をマッシュルームカット(貴族の三人に一人くらいはこの髪型)にしている。


 ただ、前髪が重たく長いから目元はあまり見えない。


 ダサいとか言わないで欲しい。似合ってるのだもの。それに前髪の隙間から時折チラリと見える紅茶色の瞳とか綺麗だし。


 彼とは幼い頃から婚約していた。ちなみに出会ったのは、赤髪吊り目美少女がぶっ倒れたパーティだった。


 親交もそれなりにあった。デートも数え切れないほどした。


 手を繋いだ時も抱きしめられた時も、特に嫌悪感はなかったので普通に夫婦生活をやっていける、はず。


 自分が生きていくためにも彼とは永遠に仲良くしていきたい。伯父に出戻りは許されていないため、後は修道院に行くしかないから。


 白いドレスを(まと)った私は、教会にある婚姻を結ぶ祭壇へ向かう。私が歩き出した靴音が聞こえたのか、背を向けていた彼が振り返った。


「来たね、エイミー」


 そこには式典用の白い軍服を纏った、キラキラのイケメンがいた。


「……(だれー?!)」


 モブであるのが勿体無いくらいいけめんだ!?


 いや、婚約者様であることはわかっているのだよ。髪も瞳も同じ色だし。


 ただ前髪あげただけですよね整髪剤で全体的に後ろに流しただけですよね? なんでイケメン化してるの??


 着ている服のせいだろうか。というか何故軍人が特別な時に着る礼服を身につけているの? しかも袖章の幅が広いよ?


 表情が変わらないことに定評があった私だったが、表情が変わらないようにするのってこんなに難しかっただろうか。


「おいで」


「は、はい……」


 彼が甘い声で私を呼ぶ。イケメン顔も優しげに緩ませてはなんとも色っぽい表情だ。まるで私のこと好きみたいじゃん?


 あれ、もしかしてこの人、私のこと好きっぽい?


 彼とは週一ペースの手紙とか雑誌に載ってる定番デートとかしかしたことなかったから、よくある政略結婚だと思ったのだけど??


 頭の中は疑問符でいっぱいだ。


「緊張してる?」


「それは、その……」


 緊張っていうより混乱してますよ!


「その、お召し物は」


 誤魔化すように聞くと。


「ああこれ? そりゃあ特別な日なのだから着るのが当然でしょ」


 なるほど。


「つまりはジェローム様は軍人さんということなのですね?」


 聞いてないし知らなかったんですけど!! びっくり過ぎて判り切っていることしか言えなかった。


「まあね。本当はナイショにしなきゃなんだけど」


と言葉を切ると周囲を軽く見渡す。私たちの背後には空席の椅子ばかりが並んでいる。


「この会場にいるのは君と僕だけだから」


 祭司様もいらっしゃいますけど。


「祭司ともあろう人が個人情報を漏らすような人間なわけないじゃないか」


 ね、と祭司様に目を向ける。笑顔の祭司様は澄ました様子で、


「勿論でございます」


と穏やかに頷いた。


「御二方が揃いましたので式を始めてよろしいでしょうか」


という祭司様の言葉に彼がちらりとこちらを見たので頷く。というか頷くしかない。


「それじゃ、お願いするよ」


とジェローム様が声をかけ、とうとう結婚式が始まった。祭司様は祈りの言葉を唱える。


「天に御座す神々よ。

 万物の創造主よ。

 今日結婚の誓いをかわす二人に、満ちあふれる祝福を授けてください。

 二人が愛し合い、健全な家庭を作りますように。

 慶弔事においても、信頼と感謝を忘れないように。

 互いに支えられて仕事に励めるように。

 困難にあっては慰めを見いだすことができますように。

 結婚がもたらす恵みにより成長し、実り豊かな生活を送ることができますように。

 それでは、誓いの言葉を」


 その言葉に彼が口を開く。


「私ジェローム・フェールは、貴方エイミー・ヴェールを妻とし、

 共に歩み、他の者に依らず、愛し慈しみ、

 死が二人を分かつとも貴方を想い、

 貴方のみに添うことを、

 神聖なる契約のもとに誓います」


 言い終えると私の方を向いて(ひざまず)き、右手を差し出した。


「エイミーは誓ってくれますか?」


 ああ、イケメンの上目遣いの破壊力よ!


「はい」


 やばい、眩しすぎる。目が潰れる。見ていられないのでさりげなく目を伏せて逸らしつつ、差し出された手に自分の左手を乗せた。


「私エイミー・ヴェールは、貴方ジェローム・フェールを夫とし、

 共に歩み、他の者に依らず、愛し慈しみ、

 死が二人を分かつとも、

 貴方を想い貴方のみに添うことを、

 神聖なる契約のもとに、誓います」


 その言葉を聞き届けると、彼は(ひざまず)いたまま私の左手の手袋を外した。


 リハーサルではそんなことしなかったのに、と困惑していると、祭司様が何かを差し出した。


 それは小さな可愛らしいクッションで、大きさが少し違う金属の輪が二つ乗せてあった。指輪だ。


 祭司様から小さい方の指輪を受け取った彼は、やけに丁寧な仕草で私の薬指にそれを嵌めた。


「どうして、」


 この世界では結婚式に指輪を交換する習慣なんてないのに。


「小さい時言っていたでしょ。結婚式をするなら指輪だって」


と彼は悪戯っぽく笑った。そんな昔のことを覚えてくれていたなんて。


 そして彼は、私の左の薬指——そうつまり指輪を嵌めてもらったところ——に口付けた。


 ぴしりと固まってしまう。遅れて、顔とか耳とかがかぁっと熱くなった。っていうかあっつい今日こんなに暑かったかしら?


 私を見上げる彼はしてやったり、みたいな顔をしていた。


 なんっでそんなキザったらしいことできるの? あなたモブでしょ!?


「君も俺に指輪をつけてくれる?」


「っ、もちろん」


 彼の左手を取り、手袋を外した。そして祭司様から指輪を受け取り、彼の薬指に嵌めた。


 緊張してちょっともたついてしまったけれど勘弁してほしい。そして、彼を真似て同じように彼の薬指にキスをしてやった。


 どうだ、と彼を見ると、満面の笑みを浮かべているが、特に恥ずかしがってはいないようだった。恥ずかしがってないの? なんで!?


 私が余計恥ずかしくなっただけじゃん!!


「それでは新郎様、証明書に署名をお願いします」


 より恥ずかしくなった私をよそに、立ち上がった彼がまず署名する。


 そっと盗み見た、すらすらと流れるように署名する彼の字は形が整いつつもキレのある鋭い字だった。婚約期間に何度も見た手紙の署名と同じ字だ(当たり前だけど)。


「続いて新婦様、どうぞ」


 彼から渡されたペンを手に取る。それは神聖な契約用の特別なもので、教会しか所持していない。


 筆記具としてはずっしりと重い。この契約(婚姻)の重さを体現しているように感じ、羞恥心は吹っ飛んでしまった。


 緊張しながらも署名し終わると、お互い向き合う。


「愛の証明をお願いします」


 祭司様のその声と共に、彼が私の顔にかかるベールを上げる。首元と耳を飾る、彼の瞳に似た赤茶色の宝石を認めて嬉しそうに目を細めた。


「ああ、やっぱり似合ってるよ、可愛いひと」


 囁かれた言葉に羞恥心が戻ってきて、顔が熱くなってきた。


「そう、ですか。ありがとうございます」


 事務的な返答しかできない自分をちょっと殴りたい。


 彼は笑うと、頬に手を添えた。私は顔を少しだけ上に傾け、目を閉じる。


 唇が重なる。と同時に、頭上から祝福の光が降った、気がした。


「我らの神は汝ら夫婦を祝福してくださいました」


 静かに祭司様は告げる。


「それでは、私の挨拶をもって閉式いたします。本日は、おめでとうございます」


 祭司様は深々と頭を下げると、祈りの印を組んだ。


「神が慈しみ深く守り、助けてくださるように」


 帰りの馬車にて。


「私の親族がいないのは解るのですが、貴方の方は如何なさったのですか?」


 疑問に思ったことをぶつけた。私の方は結婚式に来ないことは事前に言われていたし、彼らは今頃厄介払いできてさぞ清々していると思う。


 反対に彼の方はごく普通の家族だったように思ったのだけど。


「ん? ああ。あの人たちは今、牢の中にいるよ」


「へ?」


「彼らは邪神復活という罪を犯してしまったからね」


「じゃしんふっかつ?」


「一族郎党処刑ってことになったんだ。俺が無事なのは、確実に関与していなかったと証明されていることと、先日の戦での功績とか、その他色々のお陰かな」


「へー?」


「分かってないね? まあそういうとこも可愛いけど」


「先日の戦と言いますと」


「第四次邪神大戦のことだよ」


 ですよね。


 この世界には、神様がいる。目視はできないけれど、先ほどのように祝福を授けられた際に光が降る、もその一例。


 この世界の人々が善性を持って生きることを手助けしてくださる、らしい。


 だから、邪神も存在している。神様と反対に、悪を手助けする。


 しかも厄介なことに悪意は伝染し、今まで善性で生きていた人を悪意で染めて信者に変えてしまう。


 その邪神の信者、魔人たち(悪意に深く染まり人の心を忘れ人の形も失ってしまった人をそう呼ぶ)が一年ほど前に戦を仕掛けた。それが、"第四次邪神大戦"。


 世界中が戦場になった。どこにも安全地帯はないんじゃないかってほど大規模な戦争だった。しかも過去に三回もあったんだから、五回目もあるかもしれないのが怖い。


 事前予想では、世界の三割の人が死ぬと言われていた。実際は(戦争としては)短期間で終わったので、一割ほどで済んだ。


 因みに乙女ゲーム的展開だと、ヒロインがなんか聖なる乙女パワーだとかでどうにかしてくれたのだろう。


 だけど現実は、ヒロインは逆ハーレムを目指して見事に失敗して、早々に退場したのだった。お馬鹿さんめ。


 公爵令嬢は、多分平民になったんだと思う。卒業パーティで社交界を追放されてからの足取りなんて知らないし。


「持っていたものは姓以外は何もかも取られたけど、新たに爵位を貰ったんだ」


 私は回復士として後ろの方だけど参加していた。そういえば彼も行くって言っていたけれど、あれは軍人として出征するからだったのか。


 しかも活躍したって、めっちゃ最前線にいたってことじゃん。そうならそうと教えてくれたっていいじゃない。


 そう思って彼をじっと見る。彼は照れたように目を伏せた。


「だってそしたら君に心配かけるし」


「当たり前でしょう」


 大事な人が死ぬかもしれないもの。


「あ、帰ったら伝えようとは思っていたんだよ。だけど変な渾名つけられちゃって。そのことも伝えるのかと思ったら恥ずかしかったから、言えなかったんだよ」


 渾名……? それってもしかして、


「……"戦場の怪物"」


「っ、なぜそれを」


 あまり感情を出さない彼が大きく動揺した。はーん、この人だったのか……。


「そのような方がいらっしゃると聞き及んでいたのです」


 十分噂になってたよ。一騎当千を地で行くヤバい奴がいるって。


「そっかー」


 彼は両手で顔を隠して天を仰ぐ。物凄く恥ずかしがっている。耳まで赤いからよくわかる。かわいいー。


「いいではないですか、二つ名をいただけるなんて。かっこいいですよ」


「やだよ。子供の頃の恥ずかしい色々を思い出しちゃう」


 恥ずかしいことあったかな? それに他に聞いた渾名"死神"や"血塗れ"と比べたら十分にマシだと思います。


「というか嫌じゃない? 夫になる人が怪物って呼ばれてるなんて」


「と言われましても、既に結婚しましたから」


 ついさっきだけどね。


「それに貴方が()()()優しい良い人であることはわかっています」


「……良い人っていうのは褒め言葉じゃないよ」


 対象外ってことじゃないか、と小さく呟く声が聞こえた。


「そんな事はありません」


 ちょっとむっとして言い返す。


「知ってるのですよ。貴方が私のために色々苦労してくれたこと」


 そして他の人にはその親切をあまり施さないことも。最初は婚約者だからか、とか他の人にもしてるんじゃないか、って疑ってた。


 けれど、やっぱり彼もモブだったからというのもあるのか、彼は他人に優しくする機会は微塵も無かった。


 というか頼ってきた人は(ことごと)く他の人に仲介してた。まあ人としてはどうかと思うけど、それが彼の線引きなんだろう。


「それに、私は誰とでもはキスも結婚もしませんよ」


「ほんと?」


 彼は伺うように小さく首を傾げる。小さい頃からの癖だ。

されるたびに思うが、やっぱり子犬みたいで可愛い。今じゃ大きさは大型犬だけど。


「ほんとです。私がジェリーに嘘ついたことありますか?」


と愛称で呼ぶと、


「んー、そっかぁ」


と嬉しそうに笑った。




 おまけ 戦場での話


 魔王軍討伐を指揮する旅団長兼先遣隊長ジェローム・フェールは苛立ちを隠さずに言った。


「協定で決められた休戦の間くらい、婚約者に会いに行っても良いじゃないか。彼女も同じ場所にいるんだよ?それにやるべき仕事は全部済ませたろ」


 副団長且つ参謀であるルーク・プロンは、その発言に顔を顰めた。


「知ったことかよ。お前は今、王国に忠誠を誓うただの軍人なんだ」


 それに、と続ける。


「旅団長だけど、先遣隊長として()()()()()()()()でお前は無罪でお咎め無し。


 その上に階級の降格もしないし、爵位は取られたけど褒賞で戻ってくるんだろ? 有り難く思えよ。不満なら馬鹿やらかした親戚共に言え。


 というかお前をここから出す訳にはいかないんだよ"戦場の怪物"。お前が居なくなったら防衛線が崩れる」


「現場に出てないけど」


「いるだけで敵の抑止力になるんだよ。核ミサイルみたいにさ」


「カクミサイルってなんですかね」


「"千里眼"ってたまによくわからん単語を言うよな」


 部下二人がコソコソと無駄口を叩く。


「居るフリでもいいじゃないか」


 ジェロームの発言にルークは眉間を押さえる。


「突然上級魔獣や魔人が本当に現れたらどうするんだよ」


「俺より強い人もいるじゃん」


 苛立たしげに目を細める姿にルークは溜息を吐く。


「後ろの方にな。上流階級の坊っちゃん共だろ。どうしても休みたいならさ、派遣してくださいって自分で上に掛け合ってくれよ。お前の得意分野じゃん」


「そんな分野どこにも開拓してないんだけど」


 ジェロームは顔を歪めたまま言った。


「馬鹿共のせいでエイミーとはここ二年満足に会えて無いんだよ!」


「だから馬鹿共がいなくなってよかったじゃないか。っていうか俺だってこんなとこ居たくねぇよ!」


 ルークは机を叩き立ち上がる。


「先遣隊みんな厨二病みたいな渾名つけられてさぁ!」


「チュウニビョウ……? 新たな病でしょうか」


「好き好んで戦場にいるのは"血塗れ"の野郎くらいだよなー」


 部下二人の無駄口は聞こえていないらしい。


「俺、帰ったら結婚するんだよ? 式の内容を確認するためにも会うくらい良いだろ」


「お、おまッ! フラグみたいな事言うな馬鹿!」


「フラグってなんですか」


「浮かれてる人のことじゃね?」



「ほんとに出たねぇ、魔人」


 目前の魔人の死骸を、ジェロームは念のために聖銀の槍で突く。聖銀は魔人を唯一傷つけることができる金属だ。


「千里眼様様ですねー」


 死神と呼ばれている部下は、他の死骸を聖銀の石突で同様に突きながら感嘆している。


「ジェローム、お前……なんていうか、うん」


 二人の後をついて魔人の顔を確認していたルークは、引き気味にジェロームを見た。


「なんだよ言いたいことがあるなら言えよ、プロン中佐」


(かしこ)まって名前呼ぶなよ吐くだろ。これ、勇者殿たちの手柄横取りしちったかもよ」


「は? 魔人は魔人だろ。邪神じゃない」


「まぁそうなんだけどー。……これで平和になるならいいか」


 ジェローム達が倒した魔人が邪神の側近クラスだったことは、転生者且つ重度のゲーマーであった"千里眼"ことルーク・プロンしか知らないことであった。

あだ名ダサいのはすまぬ

そんな厨二心持ってないんだ

ここまで読んでくださりありがとうございました


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6/8 誤字報告確認→修正済

4^2さんレビューありがとうございます

6/11誤字報告確認→修正済

たくさんのブックマークやいいねありがとうございます

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