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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

価値ありしモノ

作者: 蒼騎士

未知の島を冒険するっていいですよね!




ズキンッ!


頭に鋭い痛みが走った。


「……いてぇ。?なんだ⁇」


頭を押さえて立ち上がる。

……、立ち上がる?いや、そもそもなんで俺は倒れんだ?

頭痛の治らない頭を押さえながら、周りを見渡す。



「は?」




そこには、人を圧倒する大自然があった。







「ここは、どこだ?!なんで俺がこんなところに!」


高々と聳える木々。そびえると言う単語自体木になんか使うものではないと思うが、それでもそう表現するほかない。

その奥に見える日本では見ることもできないような山脈。世界自然遺産の中にはこんなのもあるんだろうか?


燦々と照りつける太陽が、より神秘を作り出していた。



だが、こんなところ映像でも写真でも見たことない。

当たり前のことだが日本ではないはずだ。


脳が、理解を拒否している。


「訳がわからねぇ……。さっきまで、授業、中だったのに」


その景色を漠然と眺めることしか、俺はできなかった。



「ッ?!人の声!?」


ただ呆然としていた俺のもとに、遠くから微かに人の声が聞こえる。

だが、こんな自然の中に本当に人はいるのだろうか?そもそもが聞き間違いかも知れない。



「…………でも、。」


視界には人など矮小な存在過ぎないと突きつけるかのように存在する木々。

今は昼だからまだ1人でも大丈夫。だが、こんな場所で1人、夜に大丈夫である自信なんてない。

それならば。


「聞き間違いかも知れない。でも、ここで留まるよりかは」


俺は、そのまま木々の奥へ、森の奥へ踏み込んだ。


俺は後ろを振り返らなかった。

だから気づかない。俺の後ろには青々とした海が広がり、美しい青の空が……、ある境界を境に弧を描くように黒天の空と鬩ぎ合っていた事に。

そして、轟く轟音も荒れる波音も、一切耳に届かないと言う事に。


まるで隔離されている、ここが箱庭とでも言いたいかのような、その様相。


俺は導かれるよう、奥へ進んだ。






===============





自分の身長ほどもある草を掻き分けながら進むと、やはり人の声が聞こえる。

足を取られながらも進むと、前方に広場らしきものが視界の端に映った。


「くそ、進み辛いな。足元が悪るい。なんだって俺はこんな事になってんだ?あそこらへんに人がいると思うんだが。」


額に落ちる汗を拭う。

太陽の光は強く、だが湿度は低くカラッとしている。南国のような天気だ。


…………、なんでこんなに地面がぬかるんでるんだろうな!

さっきから足を一歩踏み出すたびに足が取られるんだが。


悪戦苦闘しながら足を出していた。



「はぁ、はぁ、はぁ〜。疲れた。」


無心でいたおかげがそこまで時間がたった気はしない。

だが、もう足がパンパンだ。歩いていただけなのに息も上がってる。

まぁ、その甲斐があってか広場のような空間に出ることが出来た。


俺はその場にへたり込んで後ろの木にもたれかかる。



「ハハ、人がいる。なんていうか、それだけでなんか安心するな。」


一息つくと何故か笑いが出てきた。


目の前の広場には、十数人の人がすでにいる。

ひっそりと座ってるからかまだ誰にも気づかれていない。息を整えながら周りの人を観察した。



スーツ姿の疲れた顔のおじさんや、やたらガタイのいい強面のおっさんに、日がなパチスロをやっていそうなおじさん、静かに腕を組んで周りを見ている仕事できそうなおじさん。


おじさんばっかだな!おい!!


よく見るとちゃんと女性もいるな。

恰幅のいいおばちゃんと、定食屋にいる気の強そうなおばちゃんと、給食作ってくれる優しそうなおばちゃんと……。


なんでいうか平均年齢高けぇな。

他にいる人もゴルフしてそうなじっちゃんに、アスリートのようなおばちゃんや、社会の教師みたいなおじさん、気の弱さそうなぽっちゃりおじさんだし、やっぱりおじさんおばさんばっかだな。


全部で11人、俺含めて12か。

それにしても俺は場違いなんじゃなかろうか?


そう考えながら、息も整ったと立ち上がる。その時、ガサガサッという音とがなった。


ビクッ!として身を硬らせる。


広場を囲うようにある森の数ヶ所の草陰から若い男女が一斉に出てきた。



えーと、2.4.6.…7人か。



自分と同じような年代の人が広場に出ていく。若いやつらは後から来る理由でもあるんだろうか?


彼らが広場にそのまま駆けて行くのについていくように、自分も広場の中心へと出る。


こう見ると、知り合いでもないし共通点も全く思い至らない。



「なぁ、お前はここがどこか知ってるのか?」


「はぁ?知るかよ!こっちが聞きてぇくらいだ!テメェ誰だ?」


自分の右側から出てきたチャラそうな男にとりあえず話でも聞こうと思ったがなんでこんな喧嘩腰なんだろうか?


おじさんたちはみんな黙ってる。

その代わりと言ってはなんだが、若い連中はみんな思い思いに話していた。


「おい!話しかけてきて無視かよ!クソが!」


「……⁈ あぁ、悪りぃ聞いてなかったわ。んでなんだっけ?」


「頭沸いてんのかテメェ?ったく。」


隣の男はなんかずっとぶつくさ文句言ってる。

耳元でギャンギャン吠えられると頭が痛くなる。あぁ、治ってきたと思っていた頭痛が振り返してきた。


「うるさい!こっちはお前のせいで頭痛が振り返してきてんだよ、……、…ッ!」




その時、



「ガァッ!!!」




頭に鋭い痛みが走った。


意識が黒く染まる……。









===============





「ハァハァ……、なん……だ?クソ意識が朦朧としてる。俺はいま、どうなって。」


頭の中にモヤがかかっているような気がする。

浅い息を無理やり止めて、深く息を吸う。それだけでだいぶ頭がハッキリしてきた。

頭痛はもうすでにない。

あんなに衝撃が凄かったのにな……。



ん?俺はなんでこんな事になって……、そうだ!うるせいアホに絡まれて!、それで、……そこからどうなった?


意識が定まろうとしては、霧散する。



その時


『待て!やめろ!!やめてくれ!!』


「ウガァアアアアア」


遠くで悲鳴が。

ナニカの雄叫びが。

……声が、響いた。



「なんだ!?」


ガバッと顔を上げる。今までは倒れて横になっていたことが今わかった。



「ッ!!!」



な、何なんだ!?あれは!!!






「怪物だ」








でかい。



白い。



…………、こわい。




こんな化け物見た事なんでない。

なんで形容すればいいか分からない。








丸くて、



でも刺々しい羽毛が飛び出してる



細いのに、



見るだけで逃げ出したくなるほどの



圧迫感がある足



グリグリとした



トラックのタイヤほどもある真っ黒な目



そして、3階建ての一軒家よりも大きい、



にも関わらず



僅か三頭身程というアンバランスな体躯の



奇形の鳥が



そこにいた。















「おいおいなんなんだよこれは。


…………あ。


逃げなきゃ、


ここから!逃げなきゃ!!」





急いで立ち上がる。

体がもつれて倒れてもなんとか広間まで逃げないと!


いつのまにか森の中にいた俺は、先にあるはずの広間へ駆け出そうとする。


でも力が入らない。


立つ、事もままならない!

何度も顔から地面に落ちる!



なんとか、なんとか立ち上がる。


急げ!走れ!



足を前に出し、

すぐ足が絡まって受け身も取れないで転ぶ。



「ダメだ、ダメだダメだ。こんなところにいたらダメだ。早く、早く逃げないと!」



ひどい勢いで倒れ、体から血が出てる。

ことになんか、気づかなかった。


痛みなんてない。


体が、細胞が、逃げろと叫ぶ。



「っひ!!、そんな」



何度も転び、なんとか広間へ這い出た。




『うわぁあああ〜〜!!!やめ、やめてくれ!!』

『嫌だ嫌だ!違う違う違う違う違う」

『もう一回!頼むもう一か、あぐぁあああ!!!』




何体も



ソレハイタ。





===============






ダメだ、ここはもっとダメだ。




逃げな



「グホァァァア!!」



後ろから想像だにしない衝撃が襲った。

肺から強制的に息を出させられる。、


地面をバウンドする。




「痛い、いたい、、、やばい死ぬ。逃げなきゃ、逃げなきゃ。」



背骨が折れそうだ。


痛いという信号を無視して、あらぬ方向に曲がってる腕で地面を押し、体を持ち上げる。


もう痛いのか痛くないのかも分からない。



フラつきながらたとうとした時、ストンと力が抜けた。


地面に落ちた。


座っている?いや、腰を抜かしただけだ。



「ぁ、ぁあ、そんな、なんで、なんで!」



いつのまにか周りの声は聞こえ無くなっていた。



目の前には、もう生きてるやつなんていない。

化け物が輪になって俺を見下ろしていた。



「ハハ、ハハハハ、終わった、もうダメだ」



「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」



「へっ、な、なんて?」 



無機質な黒い、暗いひとみが俺を見つめている。

なんて言ったか分からない。

どろどろ、と脳を侵すかの様に声が出て浸透する。


ダメだ、音を音と認識できない。


ああ、震える、体が震えてる。




「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」



「ッヒ……わ、分からない、何、何言ってるんだ!」


「「「「「「「「「「 それが、答えか?」」」」」」」」」」


「ち、違う!違うぅうう!!!」


何か言え、何か言え!

言わないと、死ぬ。


何か言え!




あれ?

でも、何を言えばいいんだ? 

何が価値があるものなんだ??


人は誰もいない、間違えたら死ぬ。

何も言わなくても死ぬ。


言う、死ぬ、黙る、死ぬ、…言う、……死ぬ、………黙る、…………死ぬ。

言う!

死ぬ!!

黙る!!!

死ぬ!!!!


死にたくない!!



「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」



「ッ?!! そ、それは、人によって違う!俺にとっては、たった1人の家族!妹だ!!」













「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」



「へ?」



「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」


「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」


「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」


「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」



「だから、妹だ、いもうとが大事だ!!」



「「「「「「「「「「 さぁ、価値あるものはなんだ?」」」」」」」」」」




目の前の奴の口の中には、暗い穴から一生懸命手を伸ばしてる人がいた。


沢山いた。



ああ、俺今からあそこ行くんだ。



















もう痛くも怖くない

ただ、ここは、真っ暗だ。
















。。。。。。。。。。











《キーンコーンカーンコーン》



「おい、起きろ! 起きろって!もう授業終わったぞぉ〜」


 「どうしたぁ?飯いかねぇの?」


  「遅ぇぞ!早く起こして、飯行くぞ」


「はっ?俺に言うなよ、こいつが起きねぇんだって」


  「おい起きろ!早く起きないとお前の妹に告白するぞぉー」


 「あははは!! ばぁか!殺されるぞお前」


「おい、腹減ってんだ早く起きろって」


『………………。』


「なんて?寝ぼけてんのか?」


 「おーい、今なら寝言聞けるぞー」


  「マジか!ほらほらなんて!」


「お前らうるせぇよ、おい、行くぞ」


『………………。』 


「ん?なんて?」









『価値のあるものはなんだ?』




これ、友達がまた夢を書き起こしただけなんですよね。

通話中にそいつが寝てしまって、繋いだまま本読んでたら電話口から急に、『価値ある物はなんだ?」って言われて、ついに気が触れたのかと思いました。


めっちゃビビりました。

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