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気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!  作者: 味噌村 幸太郎
第十一章 腐女子の乱

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BLの申し子


 北神 ほのかのせいでカフェ・バローチェは客が全員出ていってしまった。

 先ほどの優しい女性店員も顔が真っ青。


 なんというテロリスト。


「ところで、北神」

「ん? なあに?」

「お前さ、なんでいつもJKの制服みたいな格好ばっかしてんだ?」

 そう。こいつは私服がOKな一ツ橋高校でも制服みたいな姿で登校する。

 プライベートでも着ているとか、JKリフレのバイトでもしているんだろうか?


「ああ、これね。よく言われるんだ」

 そう言って苦笑いする。

「よく言われる……ということは、普段からその格好なのか?」

「うん、この服は前の高校の制服」

「なるほどな……しかし、なぜ辞めたのに未だに着ているんだ?」

「だって面倒くさいじゃん。毎日、服を考えるのってさ」

 笑顔で答える北神。

 それって女として、どうかと思うな。


「新宮くんだっていつも似たような格好じゃん」

 俺を指差して笑う。

 確かに俺は年がら年中、『タケノブルー』とジーパンだな。

「まあそうだが……俺はちゃんと数種類、持っている。だが、北神は全く同じ制服じゃないか」

 洗濯できないじゃん。


「え? 同じじゃないよ?」

 キョトンとした顔で俺を見つめる。

「どういうことだ?」

「この制服はあと5着持っているから毎日洗濯しているよ?」

「はぁ?」

 こいつバカだろう。

 同じ服を365日着るなんて、『いっちょやってみっか!』というセリフが似合う国民的戦士だけだ。


「前の高校辞める時に、ついでだからストック買っておいたの」

「へ、へぇ……」

 バカじゃん。



「ところで、新宮くん!」

 急に身を乗り出す北神。

 白いブラウスから乳袋がブルンと揺れた。

 そうか、こいつもデカパイだったな。

 キモいから近寄るな。


「ん? なんだ?」

「あのさ、ラブコメにはやっぱり取材が必須なんでしょ?」

 生き生きとした顔だ。

 こいつがこんな表情の時はろくなことがない。


「まあ俺だけかもしらんがな。実際に体験した方が書きやすいってことは事実だ」

「じゃあさ、必要だよね!」

 鼻息が荒い。

 なにを興奮してんだ、この腐り豚。


「なにが?」

 俺は冷たい声で、なおかつ汚物を見るような目で聞いてやった。

「BLと百合!」

「……」

 俺、もう帰っていいかな?


「なぜそうなる?」

「だってさ、ラブコメでしょ? BLと百合は必須だよ! あとエロゲ! おかずになるような小説を書くんでしょ!?」

「はぁ……」

「来月、“博多ドーム”でコミケやるんだよ!」

 もうこの時点でこいつの答えはわかっている。


「だからさ……コミケ取材しようよ!」

「それってラブコメ要素に必要か?」

「普通じゃん」

 おめーの中だけで普通レベルなんだよ、クソが!


「じゃあ一緒にいこうね♪」

「あ、いや……俺は」

「約束ね」

 そう言って小指を差し出す北神。

 笑顔が怖い。

 この感覚、BLか!?

 ニュータイプとは恐ろしいものよ……。


「いいだろう。しばらく行ってないしな」

 一応、小指で握手を交わす。

「ええ!? 毎回いかないの?」

 そんな当然のように言わないでくれる?


「母さんに連れていかれたぐらいだ。自分ではあまり好んで行きはしないな」

「異常だよ、新宮くんの年ならコミケでエロ同人買いまくるでしょうに!」

 あの……異常なのは君だからね?

 公共の場でさっきから18禁用語をベラベラと話してからさ。


「人それぞれだろ? 俺は映画が好きだから……別に2次元とか抵抗はないけど、好んで見るタイプじゃないんだよ」

「ええ……ないわ~」

 こいつ超ウゼェって顔で、睨まれる。

 俺ってそんなに悪いこと言ったの?


「よし、決めた!」

 胸の前で手をパシンと叩く。

「え?」

「新宮くんはこの北神 ほのかがめっちゃくちゃに腐らしてあげる!」

「……」

 なにこれ? 逃げられないの?

 俺の選択権、どこ。


「いや、いいです……」

「ダメだよ、新宮くん! 人の好意を無にしたら!」

 それって悪意じゃないですか?

「だから、俺は…」

「皆まで言わないで! 新宮くんはBL界の救世主にして、サラブレッドなのよ! 言わば、BL界のために生まれてきたと言っても過言ではないわ!」

 なに言ってんだ、このバカ。

「だからこそ、新宮くんには腐ってほしい!」

 拳を作り、苦い顔をする。


「ラブコメなんでしょ!? じゃあコミケは絶対に必須イベントよ!」

「は、はぁ……」

 なんだか新種の詐欺にあっているようだ。

「決戦は5月のゴールデンウイークよ!」

「へぇ」

 俺はもう呆れかえっていた。

「軍資金を用意しておいてね♪」

「なんで俺が買うこと前提で話しているんだよ?」

「だって買うでしょ? BL」

 当たり前のように言うなよ、敷居が高すぎる。


「あのな、俺は男だぞ? アウェイだろ? その界隈」

「いいえ! そんなことはないわ! そういう風潮こそナンセンスよ!」

「風潮?」

「ええ、そうよ! それって男女差別じゃない?」

「いや、そもそもBLって女性向けだろが」

 というか、読みたくない。


「それが間違っているのよ!」

 テーブルをドンッ! と叩く北神。

 こいつ、こんな熱いキャラだったか?

「つまり?」

「じゃあ女の子がエロ本やエロゲを買ったらダメなの?」

「悪くはないさ……しかし、ネットとかで買っちまえばいいじゃないか? 作者の脳内を覗き見るような行為だ。しかも同人会ならば、趣味のうちだろう。作者やサークルが可哀そうだろ」

 知らんけど。


「そんなもん、ぶっ壊してまうのよ! 私の夢は国境なき同人活動よ」

 永遠に鎖国してしまえ。

「まあ夢を持つことは悪くないさ」

 儚くも気持ちの悪い夢だが。


「そう、可愛ければなんでもいい! 愛さえあれば、どんな壁だって乗り越えられるはずよ!」

 良い言葉なんだけど、動悸がねぇ……。

「わからんでもないが……」

 わかりたくもない。


「さあ、一狩り行こうぜ! DO・助兵衛先生!」

「その名前で呼ぶのやめてくれ……」

 こいつと話していると自分のHPがどんどん削られるのがよくわかる。


「じゃあこれからはなんて呼べばいい?」

「新宮でも琢人でもいいよ……」

 もうどうでもよくなっていた。


「なら琢人くんね♪ 一緒に同人取材しましょ!」

「まあやってみるか……」

 なんだろうな、長時間に渡って軟禁されていたせいか、NOという返答ができなかった。

 言わば、正常な判断ができない状態だったのだ。


「じゃあ来月ね♪ L●NE交換しよ」

「あ、それだけは無理」

 キッパリと断っておいた。

 だってアンナに怒られること必須……というか刺されるかもしれない。


「ええ…なんで?」

「秘密事項だ。作者としてな。メルアドや電話番号ならばよし」

「じゃあ、それでいいよ……」

 なんだか不服そうだな。


 俺と北神は連絡先を交換して、喫茶店を出た。


「そう言えば、新宮くんって家はどこ?」

「俺か? 真島だよ」

「真島かぁ。私、行ったことないんだよねぇ」

 と言いつつ、空を見て何かを考えている。


「あのさ、真島って有名なところがあるよね?」

 嫌な予感。

「前の高校でさ。変態友達が教えてくれたんだ。真島にはすごいBLショップがあるって。店主はガチホモで、その子供もホモガキ。それから店のトイレではハッテン場にもなっているらしいね♪」

 ああ、やっぱりこの展開か。

「それ、俺ん家」

「……」

 黙り込む北神。

 

 さすがの変態バカでも俺の家の噂を聞けば、ドン引きだよな。


「……ごい」

 ボソッと呟く。

「え?」

「すごすぎる! 新宮くんの家庭! やっぱり、新宮くんはBL界の救世主よ!」

 あの、ちょっといいですか?

 俺は誰を助ける役なの?


「今度、遊びに行っていい!?」

 目が血走っているよ、サイコパスじゃん。

「まあ客として来るなら……」

「約束よ!」


 はぁ……俺の家はどんどん荒んでいくな。

 そろそろ一人暮らしでも考えるか。

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― 新着の感想 ―
[一言] わあ凄い!次々とフラグが立っていくね (^ω^) 恋愛フラグ……ではなく死亡フラグが
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