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気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!  作者: 味噌村 幸太郎
第四十一章 ヒロインは一人で良い

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読書は趣味じゃないらしいっすよ……


 翌日の朝。

 俺は博多駅へと向かった。

 指定された銅像の前で、ひとり彼女を待つ。


 考えたら、昔に待ち合わせしていた場所も、この黒田節の像だったな。

 ガキの頃だったけど。

 ひょっとして、無意識のうちに、あの頃の癖が抜けないのか?


 そんなことを考えていると、一人の小柄な少女が目の前に現れた。


 黒を基調としたシンプルなデザインのミニワンピース。

 胸元には白くて大きなリボン。

 細く長い2つの脚は、黒いタイツで覆われている。

 ローヒールのパンプスにも、白いリボンがついていた。

 

 ピンクやフリルを好むアンナとは、正反対のファッションだ。

 だが、似ているところと言えば、その顔だ。


 小さな顔に反して、大きな瞳が2つ。

 美しい金色の長い髪を肩まで下ろして、微笑む。

 双子ってぐらい、アンナとそっくりだ。

 違うところは、瞳の色が、ブルーサファイアってことぐらい。



「おはよう。タクト」

「……」


 その姿に、思わず見惚れてしまった。

 彼女の挨拶に答えることもできず……。


「タクト?」

 低身長だから、自然と上目遣いになる。

「あ、ああ……。すまん、マリア。おはよう」

 慌てる俺を見て、なんだか嬉しそうに笑うマリア。

「ふふ。どうしたのかしら? なんだか、10年前とは違うわね。あの横柄な態度の彼はどこに行ったのかしら」

「う、うるさい……」


 あの頃とは違う。

 どことなく、成長した大人としての女性に感じる。

 もうガキ扱いはできない。

 彼女の言う通り、友達の関係じゃないような気がした。


  ※


 はかた駅前通りを二人で歩く。

「ふぁあ……」

 小さな口に手を当てて、あくびを繰り返すマリア。

 碧の瞳に薄っすらと涙を浮かべて。


 それを隣りで見ていた俺が問いかける。


「どうした? 映画でも徹夜したのか?」

「いいえ……読んでいた小説が楽しくて、朝まで読んじゃったから」

 そう言いながらも、あくびをしている。

「は? 小説を徹夜した? 寝ろよ。今日はタケちゃんの映画を観る取材だろ」

 ちょっと、キレ気味になってしまった。

「怒らないでくれる? タクトなら知っているでしょ。私の活字好きが」

「え、わからん……」

 俺がそう答えると、彼女はガクッとうなだれてしまう。


「あのね……だからタクトを作家として、応援していたのでしょ?」

「はぁ……」

「なによ、その反応。タクトって仮にも作家なんでしょ? あなたも小説ぐらい読むでしょ?」

 俺はその問いに、キッパリと答える。

「読まないぞ」

 マリアはそれを聞いて、小さな口を大きく開いて、驚いていた。


「あなた……そんなんだから、作家として大成できないんじゃない?」

 冷たい視線を感じる。

「他の作者の小説なんて、読まないな。文字を読むのが面倒だからな……強いて言うならば、タケちゃんの作品ぐらいだ」

「はぁ……タクト。もうちょっと、色んな作者さんの作品を読んだ方が良いわよ」


 ダメね、この子みたいなお母さん的な目で、見られてしまった。


「そうか? 俺は映画で充分だ」


 深いため息をついたあと、マリアはこう持論を展開させる。


「あのね。文章力や描写とか。他の作者さんが描く文章を読めば、色々と学べるはずよ。私は読む事しかしないけど……毎日5冊ぐらいは読むわよ?」

 俺はそれを聞いて絶句する。

「ちょっと待て……5冊ってことは、一冊を10万字と仮定して、50万字も読んでいるのか!?」

 書き専からすると、驚愕の数字になる。

 だが、マリアは真顔でこう答えた。


「普通のことでしょ。読書なんて、人間の三大欲求の1つに近いものよ。よく履歴書とかに趣味として『読書です』とか答える文学少女もどきを見かけるけど……文字を読むって呼吸に近しいことだから、生きるために必要なことじゃない」

「……」


 ちょっと、作家業をやめてきて良いですか。

 もう、僕は映画監督を目指してきます……。

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