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気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!  作者: 味噌村 幸太郎
第三十三章 こいつ、カワイイか!?(ブチギレ)

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280/490

不動のセンター


 自動ドアが開く。

 事務所の中はあまり広くないが、比較的きれいな場所だった。

 白い壁には一面、 ローカルアイドルグループ、もつ鍋水炊きガールズのポスターで埋め尽くされている。

 入口の目の前に、大きな白いテーブルがあり、そこで長浜と同じアイドルメンバーの二人が何やら作業をしている。

 自己主張が激しすぎる長浜とは違い、かなり大人しそうな女の子たちだ。

 俺に気がつくと、ぎこちなく会釈する。


 初見の子たちだったので、自己紹介を始めようと思ったが、長浜が勝手に喋り出す。

「みんな! こいつが前に話していた作家よ! そしてアタシのガチオタなの! 前に席内でソロライブやった時なんか、こいつ3万円も支払ってまでチェキを撮りたがったキモオタなのよ、笑っちゃうわよね!」

 あれはミハイルというか、ヴィクトリアの買い物をしたら、たまたまお前がいただけだろ!

 長浜の嘘を真に受ける女の子達。

「す、すごいです。さ、さすがセンターのあすかちゃん」

「作家さんを推しにさせるなんて、リーダーかっこいい」

 なんて控えめな少女達なんだ。

 どうせなら、この子たちを推してあげたい。

「フンッ! アタシみたいなトップアイドルにかかれば、こんなヤツ。一度のライブでイチコロよ!」

 黙って言わせておけば……だが堪えろ。

 全てはハイスペックパソコンのためだ。

 アンナぬるぬる動画計画を頓挫するわけにはいかない。

 既にBTOメーカーに見積もりまで出してしまった。

 SSD、大容量の5TBHDD、それにグラボまでつけておいたんだ。

 がんばれ、俺!


  ※


 とりあえず、長浜に言われて近くの応接室に通された。

 小さなテーブルを挟んで向かい合わせに座る。

 そもそも自伝小説の内容を聞かされていない。

 俺はどういう風に書けばいいか、彼女に尋ねる。


「長浜。自伝小説だっけか? 20万文字も使う大作だ。お前のどこから書けばいいんだ?」

「そうねぇ……ずばり出生から現在に至るまでよ!」

「赤ん坊の頃から書くのか?」

「ええ! ファンなら絶対に買うでしょ!」

 誰が読むんだ。そんな分厚い辞書……。



 それから俺は延々と、彼女の生い立ちを一方的に聞かされた。

 まあ取材も兼ねているから、一応ノートパソコンでテキストに記録しておく。

「アタシは福岡生まれの福岡育ち! そして芸能人になるようにして生まれたのよ! 赤ちゃんの頃からそれはもう可愛かったわ! 幼稚園の時なんて、知らないおじさんによくスカウトされそうになったものよ!」

 聞いていて、タイピングしていた指が止まる。

「知らないおじさん? どこで?」

「確かスーパーだったわね。アタシが可愛すぎたのか、鼻息を荒くしながら『キミ、いくつ? おじさんの家に来ない?』なんてスカウトしてきたのよ」

 それ、スカウトじゃなくて、ただの変質者だろ……。

「で、その後どうなったんだ?」

「なんでか知らないけど、近くにいたアタシのおばあちゃんが怒り出して、そのスカウトはダメになったわね。まあ、アタシほどの可愛さになれば、スカウトしたがる事務所はたくさんいるのよね……芸能人って辛いわ」

 無知って怖い。

 ていうか、お前のおばあちゃんに感謝しておけよ。

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