表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!  作者: 味噌村 幸太郎
第二十章 夜の大運動会

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

148/490

第一種目


 一通りのブッ飛んだ説明を受けると、生徒会長の石頭君が俺に言う。

「さ、選手宣誓をしましょう。新宮くんは僕に合わせてくれればいいので」

「ああ、了解した」

 なんで俺たち、一ツ橋の奴らには事前情報がないんだ?

 三ツ橋の奴らだけ、把握してるのがムカつく。

 きっと、宗像先生のことだから、俺たちに伝えるのを忘れてんだろうな。



 石頭くんが一歩前に出る。マイクの前で手を掲げる。

 俺も慌てて、彼の隣りに立ち、同様の行動をとった。

「宣誓! 僕たち~」

 と彼が叫ぶ。

 あ、次は俺が言うのか。

「私たち~」

 ちょっと待て。このセリフは女の子の役だろ。

 俺のそんな疑問を無視して、石頭くんが続ける。

「生徒たちみんなは~ 日頃の練習の成果を~」

 あれ? また俺がつなげるの?

 どう言えばいいかな?


「仲間たちと協力し~」

 うむ、こんなもんだろ。定型文は。

 すると石頭くんが俺を見て、ニヤリと笑った。

 きっと「グッジョブ」と伝えたかったのだろう。


「裏切り、騙しあい、滅多糞にぶん殴り、蹴っ飛ばして……」

 おいおい、なにを言いだすんだよ。

「誠心誠意、殺し合いすることを誓いますっ!」

 石頭くんが壊れた。

 なに恐ろしいことを言ってんだよ……。


 言い終えると、ヒューッと冷たい横風が俺たちの前を通り過ぎる。

 砂が目に入った。

 殺伐とした空気の中、宗像先生は腕を組んで、上から俺をギロッと睨んだ。


「よくぞ言った! お前ら、最後の一人になるまで殺し合え!」

 教師のいう事じゃねー!


「では、これにて開会式を終了する」

 こんな世紀末な式典は初めてだよ。



  ※


 とりあえず、式を終えると、俺たち一ツ橋の生徒たち、それから全日制コースの三ツ橋の生徒たちは2つにグループ分けされた。

 一ツ橋が紅組、三ツ橋が白組。

 その証拠に俺たちは帽子を全部、赤色にそろえる。


 運動場に白いラインが楕円形に描かれる。

 光野先生がTバック姿で、引いてくれた。


 紅組が左側、白組は右側。

 双方、白線の外側で固まって座る。

 次の指示が出るまで、各々先ほどの話で盛り上がる。


「なあ、タクト。本当に人を殺さないとダメなの?」

 涙を浮かべて、俺に相談してくるミハイル。

「そんな訳ないだろう……間に受けるな、ミハイル。普通に勝て」

 悪ノリがすぎて、純朴なミーシャが困っているんだろうが。


「ねぇ、琢人くん。優勝したらなんでも願いが叶うんだよね!?」

 鼻息を荒くして、興奮するのは北神 ほのか。

 体操服が小さいようで、胸がパツパツだ。

 キモッ。

「あれは、宗像先生が俺たちを勝たせたいがために言ったウソだろ」

 誰が信じるか、生徒たちを賭け試合にするクソ教師のことを。

「わかんないじゃん! 私だったら、図書館にBL本を大量にぶち込みたいって願いにするわっ!」

 ナニ言ってんだ、コイツ。そんな生臭い書物は学校が許すわけないだろうに。


「あーしは彼氏が欲しいかな~」

 驚いた。『どビッチのここあ』らしからぬ、可愛らしい発言だ。

「なんだ? 花鶴はそんな願いでいいのか?」

 おめーさんは、いつでもパンツをモロ出しだから、きっとそういう悩みごとはないと思ってたよ。

 セ●レには苦労しないだろう。

「そりゃ、あーしだって彼氏欲しいっしょ。男らしい野郎がいいかな~」

「へ~」

 どうでもいいと、鼻をほじる。


 それを横で聞いていたミハイルが、急に立ち上がる。

「タクトは男らしくないよ。ものすごく汚くて女々しいヤツだからな! ここあは狙っちゃダメだゾ!」

「ブッ!」

 思わず、唾を吐きだす。

 近くにいた日田の兄弟に顔射してしまった。

「なに、マジになってんの? ミーシャってば」

 花鶴は腕を頭の後ろにやり、腰を伸ばす。

 丈があってない体操服がめくりあがり、ブラジャーが露わになる。

「ちゅーこく! タクトは変態だから願うなよ!」

 オレってアンナちゃんを含めて、ミハイルにそんな風に見られてたんだ。

 ちょっと軽くショックだわ。

「ハァ? 変なミーシャ。それに願いごとを決めるのはあーしっしょ♪」

 鼻歌交じりで去っていく。

 後ろ姿を見せると、俺はため息をつく。

 こいつもはみパンしてらぁ。ブルマは身体が大きい人には向いてないな。



 宗像先生の言った『願い事』でガヤガヤとにぎわう。

 そんなことをしていると、準備が整ったのようで、運動場に白いテントが設置されていた。

 テントの中には横長のテーブルにパイプイス。

 一列になって、宗像先生、光野先生が座っていた。


 スピーカーから酒やけしたガラガラ声が流れる。


「あー、では第一種目、『ファイナルデッド二人三脚』を行う!」

 なんだよそれ。ただの二人三脚だろ。


「すぐにペアを作るように! 尚、本種目は早いもの勝ちだ。4つのペアを走らせ、一番最初にゴールしたものが次の試合に進める。その他の奴らは脱落、つまり死亡だ」

 だから死なないだろうが。


「なるほど、二人で勝ち残ればいいわけか……」

 俺が情報を整理していると、ミハイルが俺の腕に抱き着く。

「タクト! オレとペアを組もうぜ☆」

「ああ……」

 組まないと殴られそうだもんね。



  ※


 俺はミハイルの細くて白い脚に、紐を通す。

「あひゃっ、くすぐったいよ☆」

 変な声を出すな。ドキッとするだろうが。

 彼の右足と俺の左足を密着させ、紐で固定する。


「勝つぞ、ミハイル」

「うん☆」


 俺たち以外にレースに出場したのは、一ツ橋から日田兄弟。

 それから三ツ橋の吹奏楽部の女子二人、あとは生徒会のおかっぱ女子組。


 光野先生がスタートラインに立つ。

 もちろん、パンツ一丁で。

 夕陽が落ち、辺りは暗くなりだす。


「よおい……」

 ピストルの音が運動場に鳴り響く。

「ドン!」


「いくぞ、ミハ……」

 言いかけた時は既に遅かった。

「うぉおお!」

 ミハイルは全速力で、走り抜ける。

 他の連中なんか、全然追いつけないほど。

 もちろん、この俺もだ。


 つまり、どういう状態かというと、馬にロープをかけて引きずり回されているようなものだ。

 ミハイルの速度についていけなかった俺は、地面に顔を叩きつけられる。

「いってぇ! ちょっ……グヘッ…待って!」

 だが、俺のそんな叫びもむなしく、彼の耳には届いてない。

「負けないゾぉ!」

 両腕をブンブン振り回して、走り抜ける。

 その度に、俺の頭が上空にバウンドしてはまた地面に直撃する。

 なんて馬力だ。

 

 もう処刑に近い。


 口の中が土でいっぱいになった頃、やっとのことで彼が足を止める。

 俺はよろよろと立ち上がった。

「ゴールしたのか?」

 土をペッペッと吐きだしながら、ミハイルに聞く。

「ううん! まだだよ! 変な箱が置いてある」

「箱?」

 目の前を見ると、机の上に青いプラスチックのケースが。

 箱の中は白い粉で埋もれていた。


「なんだこれ?」

「ああ、こりゃアレだな。アメ食いだ。この砂の中にアメが入っているから、手を使わずに口で探せ」

「わかった!」

 俺とミハイルは同時に顔を突っ込む。

 目をつぶると、唇の感触だけで固形物を探し出す。


 ミハイルの行動は確認できないが、きっと彼なら大丈夫だろう。


「ペロッ、チュッチュッ……んんっ…プハッ! ハァハァ…」

 なんだ? 隣りからめっちゃいやらしい音が聞こえてくる。

「んん……も~う、なにこれぇ。んん、チュッチュッ…」

 俺はアメ探しどころでは、なくなっていた。

 耳をすませば、聞こえてくる。このエロチックな咀嚼音。


「んちゅっ、ぱぁ……レロレロ、んっ、ちゅちゅ……」

 なんか音がどんどん俺の方へ近づいてくる。

 まさかな…嫌な予感が走る。

 俺だけでも先にアメをゲットして、顔を上げようと急ぐ。


 負けじと、その音も早くなる。

「レロレロ……」

 クッソ! 中々、見つからないな。

「んっ、ハァハァ……チュッチュッ」

 迫りくる可愛い声。

 ヤバい!


 カプッ!


 やっと見つけた。

 前歯でしっかり固定すると、勢いよく顔をあげる。

「プハッ!」

 どうにか、彼が近づく前にアメをゲットできたな。

 ん? なんかアメが重たく感じる。

 何かこう、横に引っ張られるような……。


 白い粉で視界が覆われていたので、よくわからなかったが、微かに「ハァハァ」と誰かの吐息を感じる。

 瞼をパチパチさせて、粉を落とす。

 すると徐々に、視界が回復してきた。


「タ、タクトぉ?」

「あ……」


 寸前だった。

 俺とミハイルは接吻する直前で、静止していた。

 そう、1つのアメを二人でかじっていた。


 気がついたミハイルは驚いて、歯の力を緩める。

 自然とアメは俺の口に入り込んだ。

 ビックリしていたのは、彼だけではない。


 俺は思わず、アメを飲み込んでしまった。


「食べ、ちゃったんだ……」

 彼は頬を赤くして、俺を見つめる。

 これは事故だ。

 だが、彼と唾液交換してしまったことも事実だ。


 

 その後、俺とミハイルはめちゃくちゃ突っ走って、首位を獲得できた。

 まるで全てを忘れたいがために……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ