俺の話
新章~ロゼオ救出編~!!
この話は、全然絡んでいませんが……。
ちなみにロゼオは、ルーチェ王国にある十大国の一つ、回復の領です。→第5話【この世界】より
「本っ当に、どこも悪くないんだな!?!?」
「だから、さっきから大丈夫だって言ってるだろ。」
全員に飛びかかられたあの後、何とかそこから脱出してその場を収めた。が、俺の側近であるこの男だけは、どうしても説明不足に納得出来ないらしい。
「あんな説明じゃ、納得出来ねぇよ!何が『ちょっと眠くなったから、寝ただけ』だ!俺が仕える頭はそんな腑抜けじゃねぇぞ!」
「……なんか、ありがとう。」
怒られてるんだか、褒められてるんだかよく分からん。
「大体!!他の奴らも、あの説明でどうして納得するんだ!?」
「そりゃあ、俺が言ってるからだろ。
お前ぐらいだよ、俺の言ったことに対して文句言ってくるやつなんて。」
―――まぁ、もう一人増えた気もするけど。
「はぁ?納得いかねぇことに対して、文句言って何が悪い?」
「怒んないで、木葉さん。」
「怒ってねぇから、さっさと説明しろ。」
きっちり説明するまで、折れないらしい……。
さっきから、俺に突っかかってくるこの男、黒縁メガネに黒髪、ちょっと茶色い瞳。こいつは木葉。俺、黒沼宇宙の側近の一人。
頭もいいし、ケンカも強い。そして、隠し事が嫌い。特に、身近なやつとかになれば尚更。それは、頭でも関係ないらしい。
そんな性格だからか、俺は木葉に隠し事をしたことは無い。……とことん問い詰められて、俺が折れるからだ。
「俺が信用ならねぇのか。」
「違うから。お前のことは信頼してる。」
信頼してるけど、わからない。
多分、目が覚めたら魔法の国にいて、その国の姫に仕えることになりました、なんて言っても、木葉は信じてくれるだろう。
だけど、場所も時系列も違う世界に干渉させてもいいのか、分からなかった。これに関する危険は、木葉の力だけでなんとかなるものじゃない。
「めんどくせぇ事考えてんなら、やめろ。」
「!」
「何言われても信じる。知ったことによって危険になる、なんてことなら、今更だろ。」
「……、まぁ、そうだな。」
あら、どっちが頭かわかんねぇや。
こんな感じで言いくるめられて、俺は木葉にすべて話した。本当に隠すことなく。
「証明はこのペンダントだな。俺の記憶に、この紋章はこの世界のものじゃない。」
「……。」
「はい、終わり。」
「なるほどな。」
「どう思った?」
「どうもこうも、頭が言うんだからそうなんだろ。」
「……さすがだな、お前。」
普通なら多少は疑うとか、俺が頭おかしくなったと思うとかするだろう。
「そのアルコイーリス?ってとこに呼ばれっと、寝るってことか。」
「多分な。」
「予兆とかあんのか知らねぇけど、場所とかタイミングとか気をつけろよ。」
「お願いしとく。」
なんせ何も聞けずに戻ってきたからな……。
「……そういや、今回はどうやって見つけたんだ?」
世間一般的に可愛い部類に入る、俺の女装。そんな女が、例えば路地裏とかで寝ていたら、それはもう襲ってくださいと言ってるようなものだ。
「はぁ?女装のお前を一人にするわけねぇだろ。」
「え、何?かっこいいんだけど。」
「俺じゃねぇけどな。」
そう、木葉が言うと天井画の一角が突然開いた。
「見つけたのは僕だよ、頭。」
「やっと出てきたか、遊馬。」
そこから出てきたのは小柄な男。明るい茶色の髪に、日本人かどうか疑われる黄色い瞳。木葉と同じ、俺のもう一人の側近の遊馬。
「いつから気づいてたの?」
「最初からいただろ。俺が人に埋まってる間に隠れたんだろ。」
「……そこまで分かってるってことは、今の話、聞いてもよかったってことだよね?」
「お前は信じねぇの?」
「まさか。頭の言うことは、僕の全てだから。」
遊馬も木葉と同じだ。こいつらが、俺が最も信頼する二人。
「じゃあ、遊馬。俺が寝た時は回収よろしく。」
「えー。手間のかからないところで寝てよ。」
「努力はする。」
「そーいや、この前の会談は上手くいったのか?」
「頭が女装して、上手くいかなかったことなんてないだろ。」
「さすが。優秀な部下を持つと楽だわ。」
「……そりゃ、どーも。」
会談が上手くいってるのが、この二人が働きかけてくれているからだということを俺は知っている。俺の女装の手練なんて、良くて半分くらいだ。
「いついなくなんのか分かんねぇし、今回は早めに行っとくか。」
「そうだな。明日にでも行けるようにしておく。」
「久しぶりだなー!」
どこに行くのか。それは、月に一度は必ず行くことにしている場所。発展しているこの国の中心で、犠牲になっている弱者が集まるところ。
―――木葉と遊馬が育った場所
「お兄様……っ!!」
「そんな格好で走るな、葵。」
二人の話はまた今度。
突然開いた部屋の襖。次は俺の家族の話。