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頭があなたに仕えたい!  作者: 優菜
Ⅰ,出会い編
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銀の紋章。そして……



「……っ。。。」


……明かりが眩しい。はっきりしない意識を起こして、状況を理解しようとするけど……頭、痛い。



「……スー、……スー、」

「……ロレンツォ??」


右側から、小さく寝息が聞こえた。確かに、少しだけ右腕に重みを感じて見てみると、男でも見惚れる綺麗な金髪に、地球の女子であれば誰もが欲しがるような、そり上がって長いまつ毛。

ロレンツォが、ベッドに寄りかかって寝ていた。



「あー、確か決闘してて……」


そうだ。殺されるのはごめんだし、だからと言ってバカにされたままってのも腑に落ちなくて、驚かすつもりでやってたんだけど……、完全にロレンツォの力を測り間違えていたんだっけ。

本当は、魔法を切り捨てて、そのまま間合いを詰めて寸止めで終わりの予定だったのに、経験の条件反射を考慮に入れるの忘れてた。


「俺の部下なら、あれで終わるからな……。」


誰とやったって、あれ以上やったことは無い。……もちろん、魔法なんてないが。たまに歯向かってくるやつとか、訓練とかでは不意打ちで終われる。


「すげぇな、お前。」


想像以上にふわふわしていた、ロレンツォの髪を撫でた。



「凄いのは、あんた方だけどね。」

「レオナルドさん。」

「よっ、怪我の具合はどうよ。」

「だいぶ楽になりました。ありがとうございます。」


やって来たのは、ロレンツォの兄レオナルドだった。意識を失う前、すぐに駆けつけてくれたのを覚えてる。意外だった。絶対、弟の方に向かうと思ったのに。



「……悪かったな。」

「……はい??」


急に謝られた。ロレンツォのいる方に来て、ベッドのそばに屈んだ。


「口は悪いかもしんないが、平気で仲間を傷つけるようなやつじゃないんだ。ただ、本当に条件反射で、本当にたまたまそこにメイドがいたんだ。」

「えぇ、わかってますよ。」


深刻そうな顔で、何を当たり前のことを。


「彼が手加減してくれているのはすぐに気づきました。剣に関しては言い訳できても、魔法を切り捨てるなんて、相当力を抜いてもらわないとと出来ませんから。

ただ、かわすと思っていたんだと思います。スピードも遅かったですし。それを真正面から受けられ、切られたとなれば多少は動揺してくれると思いまして……。」



どちらかと言うと、謝らなければならないのは俺の方だ。偶然とはいえ、仲間を傷つけさせてしまったのだから。


「謝るのはこちらです。大切な弟さんを傷つけてしまい、すみませんでした。」

「……。」

「……??どうかしましたか。」


謝ったらすごい顔で見られた。えっ、謝罪だけじゃ甘い?


「いいのか?傷ついたのは……お前自身だろ。」

「あー、そのことならお気になさらず。自分の不注意ですし、怪我には慣れてます。……さすがに魔法は初めての体験でしたが。」

「……。」

「??」

「あんた、面白いな。」

「???」



いやいや、一体、今のどこからその流れになるのか。

ちょっと良くわかんないけど、ブラコン疑惑の兄に許されたのでよかったとしよう。




「ソラさん、具合はどうですか。」

「姫、ありがとうございます。お陰さまで良くなりました。」


アシェリーとユリイエもやってきて、全員集合した。


「ソラ。」

「……はい。」

「お前は俺たちとともに、姫を守る覚悟があるんだな。」

「……もちろんです。生半可な気持ちで、誓いなんてたてません。」


この世界で俺の力がどこまで及ぶかは分からない。

当たり前だけど魔法は使えないし、使えるようになるものなのかも分からない。

それでも守りたいと思ったのは事実だった。



「そいつなら大丈夫だろ。」

「ロレン!目が覚めたんですね。」

「迷惑かけてすいません、姫。」


アシェリーに謝罪した後、俺の視線に気づいて気まずくなったのか、顔をうずめて話し出した。


「剣の腕は問題ないし、自分の身を盾にして見知らぬ誰かを守るだけの行動もある。

魔法も……、俺のに耐えたのならば適正もあるだろうし。」

「へー、ロレンツォが誰かを褒めるなんて珍しいな。」

「そうだな。明日は雨だ。」

「っうるさい!バカ兄貴!ユリイエ!!」


ロレンツォも気づいたのか、かなり照れてた。……そんな珍しいのか。



「おめでとうございます、ソラさん。」

「ありがとうございます。」

「改めて自己紹介した方が良さそうですね。


俺はソラフィド・ユリイエ。よろしく頼む。」


……おぉ、ユリイエから殺気がなくなった。


「俺はもうしたよな?あ、さんとか付けなんなよ、気持ち悪いから。」

「俺はルアン・ロレンツォだ。よろしくソラ。」

「よろしくお願いします。黒沼宇宙です。」


殺気が無くなり、受け入れられたのだとわかった。


「ソラ。これを渡しておきますね。」

「??」


アシェリーによって俺の胸に付けられたのは、銀色のペンダント。どこかの紋章のようなものが入っていて、一筋の虹彩が中心の水晶にはしっていた。


「それは、アルコイーリス家に仕える、近臣のみに渡されるものです。ユリイエ、レオ、ロレン……、そして、ソラだけが持っています。」

「っありがとうございます。」



……こうして、俺はアルコイーリスに迎えられた。


迎えられたのだったが……、



「……!」

「なんだ!?」


急に光がさしたと思ったら、俺を囲んで激しい光を放った。


「時間……、ですね。」

「時間……。」

「ソラは元々こちらの方ではありません。とどめて置ける時間にも限界があるということです。」



話したいことも、話すべきこともたくさんある。

せっかく少しは仲良くなれた気がしたのに、勿体ない……。


「ソラ、夢ではありませんよ。」

「そうだぞ、忘れたら承知しないからな!!」

「いつでも戻って来い。」

「今度は、俺とも相手してくれよ。」

「……っ。」




そう、これは夢じゃない。

ここで起こったこと、出会った人。すべてが本物。


「姫が願えば、また来ます。」


何も焦ることはない。

絶対に再び会えると、確信があった。



光で視界が奪われる。

みんなが見守っていた。




「ソ……ラ……ッ」


最後に、アシェリーが手を伸ばしたように見えた。








「……。」


次に目を開けた時、そこは見慣れた風景。


「戻って……きた……??」


なんか呆気なく戻ってきたな……。一瞬、夢かと疑ったが、自分の胸元でなにかに触れた瞬間、あれが現実であったことを確信した。



「……俺、どんくらい寝てたんだ?」


昼なのか夜なのかもわからない。とりあえず布団から出て、外の状況を確認しようとした。



「おわっ、びっくりした……。」


外に繋がるふすまを開けるために手をかけようとした瞬間、開いた。



「……はっ?」

「誰に向かって、はっとか言ってんだ?」

「か、頭……??」

「それ以外、何に見えんだ木葉(このは)。というか、次期頭な。」


そう言うと、目の前の男は何も言わず走ってどっか行った。

そしてすぐに、絶対に1人ではないものすごい足音が近づいてきた。



「宇宙……?」

「おふくろ、ボケたの?」

「宇宙……、お前……。」


俺の母親と父親を筆頭に、知ってるやつがほぼ集結した。

そして……





「「「「「「「「宇宙ーーー!!!」」」」」」」」

「危ねぇぇっ!!!」


全員で飛びかかってきた。





ああ、うるさいのが懐かしい。

一体何人いるのかって?言ったろ、結構影響力のある組なんだよ。それなりにでかくもなる。

そして、ここには俺に向かってわがままを言う姫も、剣や殺気を向けたりするような奴もいない。





“黒沼組 次期頭”


それが、俺の本来の肩書きだから。

Ⅰ,出会い編は完結!

次回からは新編!!

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