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頭があなたに仕えたい!  作者: 優菜
Ⅰ,出会い編
3/46

慣れた代役会談



「……。」


……やばい。

俺は今、人生最大の危機に瀕していた。



……これ何語??

いやいや、だってさ思わないじゃん?話しているのは、確かに日本語なのに、書いて文字にしたら、突然、見たこともない記号が並んでるんだよ?なんか、甲骨文字みたいな……。


そして、もっと分からないのが、所々、外国語が混ざっていること。英語ではなく、多分、ドイツとかイタリアあたりの言語だけど。文字はアルファベットなので、読めないことは無い。


「ルーチェ王国……、アルコイーリス……、ヴェルメリオ……、なんだこれ。」


よく分からない外国語が、他に8個ほど並んでいた。ルーチェ王国は、百歩譲って国名だとわかる。それ以外の、読める部分が全くわからない。そして、その説明が書いてあるのであろう部分は、知識的に読めない。

そしてその前に、わかっていたけども、予想はしていたけれども、


ここが地球ではないということがわかった。


「まぁ、普通に考えて俺の時代にあんなガチャガチャいうの着てても邪魔だよな。」


地球じゃない場所にいるの、俺?まじか。

なんて、自分の現状に打ちひしがれてる場合じゃない。


「とりあえず読める本、探さなきゃな……。




ん、……これ、」


俺が手に取ったのは、1冊の古い本。表紙はホコリか汚れかで何も見えなかった。


「あ、これなら読める。」


中にあったのは、外国語が羅列する文書。英語だけでなく、様々な言語が混ざっていたが、とりあえず読める。


「『はるか昔、この地を創造するべく、二人の者あり。

この地をルーチェと名付け、発展させるよう命ず。

その際、二人の者から贈り物があり。その贈り物とは、』……ここだけ、日本語。



……魔法??」


生の声がないのはきつい。でも、あの文書が本物なら、この世界には魔法があるということ。


「俺がいる国が、多分アルコイーリス……。あのケツアゴのおっさんは……ヴェルメリオ。……“虹”“赤”、か。」


ちなみに、ここの国がわかったのはアシェリーの日記らしきものから。ヴェルメリオはユリイエという男が言っていた。他は全く読めないけど、地域名の固有名詞は英語で書かれていた。


「ルーチェは“光”。こんなに外国語並べなくても……。」


知りたいことがたくさんあったけど、とりあえずこの場所の名前と、魔法が存在する特殊な世界だということはわかった。



……ちょっと待てよ。この本、アシェリーって子は読めたのか?日記からすれば、ここの公用語は多分この謎の記号たちだ。


「……地球で日本人が外国語習うのと同じ感じか??」



……コンコン。

「姫、時間でございます。」

「あ、はい。」


やばっ。あんまり情報、集まってない……。そういえば、何についての会談なんだろうか、今更すぎるけど。

ぐるぐると心配しながら、再びエスコートで連れて行ってもらう。……俺には、場所わかんないし。



「姫。」

「えっ?」


向かっている途中、ユリイエという男が、話しかけてきた。


「同盟のお話、お受けするのですか?」

「同盟……。」


なるほど、今回の会談は同盟の話。そして、この男の顔からするにあまり良い同盟ではないらしい。


「あなたはどう思いますか?」

「……、私は姫が決めたことであれば、どちらでも構いません。」

「遠慮せずに、正直に言って下さい。」

「……。」


あれ、アシェリーの喋り方と違った??ちょっと心配になったけど、そうでは無かったらしく、


「今回、提示されている『世界協調同盟』は、名ばかりの同盟です。既に加盟済みのアスールやグリューンの支配下ある非魔法国の扱いは最悪。加盟すれば、平和に暮らしているアルコイーリス領に住まう民が苦しむのは、明らかかと……。

ルーチェ王国一の規模を誇るアルコイーリスを取り込み、その同盟を強固にすると同時に、邪魔であろう我々を手中に収めておきたいのだと…。」

「……。」


この男、出来るな。すごい優秀だ。


「姫っ、ご無礼をお許しください。」

「無礼だなんてとんでもない。どうもありがとう。」


しっかりと目を合わせて伝える。おかげで色んなことがわかった。そして、この会談においてこの世界の情勢は特に関係ない。

武力で押し込むか、本当の協調を目指すか。向こうには後者の考えはないらしく、アシェリーは後者派であるのだろう。だから、何度もわざわざ乗り込んでくるわけだ。


「参りましょう。」

「はい。」


良かった。……俺と同じ考え方で。






「お待たせいたしました。」


軽くお辞儀をして座る。

ケツアゴさんの周りには、がっちり武装した方々が固まっていた。……いやいや、協調する気あるならそれ相応の態度というものがあるだろ。

ちなみに、こちらはユリイエのみ。


「病弱な次期陛下のお身体に障るといけないので、さっさと進めましょう。」

「……はぁ。」

「まず、我ら『世界協調同盟』の目的は、非魔法国の統治ですな。魔法を使える我々に楯突く者達を弾圧できると同時に、非魔法国の生み出す利潤を魔法国が運営すれば、ルーチェ王国の統治も容易になることでしょう。

そしてその際に、ルーチェ王国一の戦力を誇るアルコイーリスの力をお借りしたいわけです。アルコイーリスの名を持つ軍が動くだけでも、その力は計り知れない。我ら同盟に入っていただければ、その威力は倍増いたすでしょう。」


……全く、こちらの意見を聞く気はあるのだろうか。間髪いれずに、ずっと喋るな。これでは会談というより、決定事項の説明だ。

横にいるユリイエが、苦い顔をしているのがわかった。なるほど、こうなることが分かっていたから会談したくなかったわけだ。

確かに病弱なアシェリーなら、このまま同盟が勝手に組まれるかもしれない、……が、あいにく俺はアシェリーじゃない。



「ちょっとお待ちください。」

「……はっ?」


まさか、遮ってくるとは思っていなかったらしく、面食らったようにこちらを見ていた。


「その『世界協調同盟』が非魔法国を統治する理由は理解いたしました。ですが、魔法国が統治した後、それらの国はどのような利益があるのでしょうか。

それから、その方法が武力行使のようですが、その損害などはこちらが負担するのでしょうか?」


ケツアゴさんだけでなく、ユリイエも驚いていた。こんなふうに言ったりする子では無いのだろう。


「ふっ……、あっはっはっはっ!!いやぁ、面白い冗談をいう方だ。」

「冗談?一体、どのへんが冗談なのでしょうか。」

「非魔法国の情勢を考えていたら、いつまでたってもルーチェ王国の発展はない、それくらいはご存知でしょう?」

「非魔法国も、ルーチェ王国なのでは?」

「……。」


部屋が静まる。多分、こんなふうに言われたことがないのだろう。見たところ、戦力も申し分ないようだし、どんな所も大体言うことを聞いてくれていたようだ。

そして、戦力では劣るかもしれないが、押せばなんとかなると思われていた、アシェリーの国。


こんなトップはよく見る。自分の意見が通ると思って疑わないやつ。自分たちの発展のためなら、犠牲など痒くもないという顔をするやつ。

そして、そういうやつほど、



「そのような綺麗事ばかり並べて、何が出来る!!散々、会談を先延ばしにした挙句、いちゃもんばかりか!!今や、非魔法国も力をつけてきている!そこまで言うのなら、何か提案してみたらどうなんだ!!」



……論破されると、本性が出やすい。



「ボレミア殿、いくらあなたでも姫へ失礼がすぎるのではありませんか?」


……こっちも怒ってらっしゃる。あんまり、長引かせれないかな。


「アルコイーリス領の民は、たとえ力をつけたとしても、アルコイーリスに楯突くものなどいません。非魔法国にではなく、そこを治める領主に問題があるのでは?」

「っ!」

「そちらの情勢を知らない以上、あまり踏み入ったことは申し上げることは出来ません。ですが、こちらの決定だけは、お伝えしておきます。


アルコイーリスは、『世界協調同盟』に入ることはありません。これは決定です。」




アシェリー姫。俺は間違ったことしたかな。もし違ったら、ごめん。


「ユリイエ、これで宜しいですか?」

「えっ??……あ、はい、わかりました。」


でも、多分、君が信頼しているのであろうユリイエさんの表情が少し柔らかくなったし、何も言わないから合ってるんだと思う。


「ぐ……っ。」

「剣を抜くなんて物騒なことはやめてくださいね。」

「っ、」

「それから今後、会談をしたいのであれば、武装した者たちは、連れてこないことをお勧めします。


失礼いたします。」


何か言われそうだったから、言われる前に出口に向かって歩く。ユリイエが扉を開けて、そのまま出た。




最初、間違われた時はなんて迷惑な話だ、と思ったけど。

あなたみたいな方に間違われたなら、いいや。



「ユリイエ。」

「はい?」

「大丈夫……でしたかね?」

「あなたの決定が全てですよ?」

「あなた自身は?」

「……素晴らしかったです。」


こんなに信頼して、あなたの言動に喜んでくれる臣下がいるあなたなら。

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