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頭があなたに仕えたい!  作者: 優菜
Ⅰ,出会い編
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幼き少女のために


「あまり騒ぐな。姫の身体に障る。」

「ユリイエ殿!!申し訳ございません!!」



……もっと偉そうな人、出てきてしまった。明らかに今までいたガチャガチャ音を鳴らす人たちとは違う。軍服?って言うのか、黒い服をきちっと着て、胸元にはヨーロッパの貴族みたいな白いネクタイ、茶色い髪に銀色の瞳。世でいうイケメンすぎる人がやって来た。



その、アシェリー?という人と、何故か俺を間違えている人たちから何とか逃げ出そうとしたのだが、なかなか出来ないでいた。理由は俺が今着ている服装にある。私服なら、ここから逃げることなど息をする程度で出来る。が、あいにくフリッフリのドレスなのだ。

俺の家は少し複雑で、俺は偉い人との会合が終わり、帰っている途中だったはずなのだ。偉い人との会合で女装?と思った方、どうか流して欲しい。俺の話を今している場合ではなさそうなので。


「姫、どうかお部屋にお戻りください。昼間とはいえ、お身体が冷えては……。」


そのアシェリーという子は、とても大切にされているようだ。傍から見たら襲っているようにも見えるはずなのに、全くその可能性を考えていない雰囲気だった。



ここまで時間があれば、俺の頭は十分冷静になっていた。

とにかく、ここはどこかよく分からないけど、俺はアシェリーという姫に間違われている。かと言って、俺は決してアシェリーではない。そして、この目の前のイケメン、ユリイエという男は、執事か何かで。この女の子はかなり、身体が弱い、と。


「姫?やはり、どこか体調が優れないのですか?」


やばっ、考えすぎた。黙りこくってしまった俺に近づいて来て、顔をのぞき込まれそうになる。……さすがに、まじまじと見られたらやばいよな??



「ほー、本日はずいぶん調子が良いようで。」

「っ、ボレミア殿。」


また新しい方……。少し顔を上げて見えた人は、……ケツアゴだ。ガタイがいいおっさん、って感じだな。


「今日は会談してもらえそうですね?」

「姫はまだ本調子ではない。それに、そちらの長であるレオン陛下がいらっしゃらないのであれば、会談は成立しません。」

「こちらは何度も足を運びましたよ。ですが、いつもそちらの病弱な次期陛下と過保護な世話係のせいで、出来た試しがない。長であるレオン陛下を何度もお連れするわけには行きません。そちらもそれくらいはご理解いただけるであろう?」

「っ……。」


ケツアゴ、ボレミアというおっさんの言い分は正しい。真偽は知らないが、何度も長が出向いているのに、それに応対しないのは確かに痺れをきらされても仕方ない。というより、やはり姫様は病弱なのか。



「ちっ、だから、女の長は嫌なのだ。何かと理由をつけて、逃げるしか芸がない。」





……はぁ??


「っボレミア殿。確かにこちらに非がある点もありますが、姫を侮辱するような言動は慎んでいただきたいっ。」

「そんなつもりは無いがね。そう思わせてしまったのであれば、申し訳ないね。」

「っ!!!」


ユリイエという男の腰に刺してある剣が抜かれそうになった。


「待って。」

「っ!!……姫??」

「会談、します。ただ、15分だけ時間をください。」

「アシェリー……っ」

「大丈夫です。心配しないで。」


目の前にいたから、抜くのを止めるのに苦労はしなかった。バレるのを恐れずに、ユリイエの目を見て微笑んだ。

この国に何があるのかも知らないし、どんな事情なのかも知らない。けど、


「……弱い人を侮辱するのだけは許さない。」



力を持つ者の犠牲を受けるのはいつも弱い者。努力をしていないのならわかる、が、女であるという理由だけで彼女を侮辱するのは許せなかった。


ユリイエという男が、会談を設定してくれたのか、ボレミアのおっさんは満足気に城に戻って行った。


「姫……」

「私の部屋に行きましょう。」

「へっ、あ、はい。」


何も知らない。この世界のことも、この少女が治めている国のことでさえも。

15分でどこまで出来るかはわからない。どこかでボロを出してしまうかもしれない。でも何故か、そんな気はしなかった。


「どうぞ。」

「ありがとう。15分たったら、呼んでもらえますか。」

「分かりました。どうか、無理なさらずに。」

「ええ、ありがとう。」


エスコートしてもらい、なんとかこの女の子の部屋にたどり着いた。……おぉ、ザ・可愛いって感じだ。



「っ……はぁ……ぁぁ……はぁ……っ。」

「……あなたがアシェリーですか。」


部屋の真ん中、とても大きなベッドで寝ていた女の子がいた。……てか、俺より明らかに小さいじゃん。少し女子っぽく見せるために屈んで歩くのが癖になってんのか。


「んっ……。」

「あっつ……。」


触れた額は熱く熱を帯びていた。冷たい俺の手が気持ちよかったのか、少し落ち着いた寝息になった。


「勝手にやること、許してください。こんなにも美しくて、可愛らしい方を侮辱するのは許せないんです。」


聞こえてないだろうが、伝えておく。いろんな意味で謝罪しなければならないからな、これからの俺の行動は。


「失礼しまーす。」


綺麗に並んだ大量の本の中から一冊、取り出して見る。ユリイエという男に頼んでもらった15分を無駄にはできない。少しでも情報を集める、何も知らないこの世界のことを。付け焼き刃かもしれないが、装備0よりはマシだろ。15分あれば、出来ることはたくさんある。




「昔から叩き込むのは得意なんでね。」

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