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篠木の伝承 三年の旅  作者: ながとみコケオ
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予定変更の悪だくみ

「まだ、戻っていなかったな」

 小屋を目指しながら、連がぼそりと呟いた。

「戻ってないけど、どうかしたのか?」

 不思議そうに育也が聞き返すと、連は振り返って不適な笑みを見せた。

「予定変更だ。どうせ待つなら、小屋の前で待ってやろう」

 連の口調が、回りくどいことはしたくないと言っているように聞こえる。

「待つの良いけど、見張りくらいはいるんじゃねえの?」

 自分達の根城だ。一人か二人くらいは、見張りを置いていると考えるべきだろう。

「そんなもの、眠らせておけば良い」

 育也の言葉に、連は不敵な笑みを崩さぬまま、簡単に答えている。

「婆、自分でやれよ。俺も弥素次もやらねえからな」

 二人の後ろで聞きながら、弥素次は苦笑いを浮かべてしまった。どうも連が相手だと、いつの間にか緊迫感が薄れている。連は自分の能力に自信を持っている為か、緊迫するということを知らないらしい。

「分かっている」

 木々を抜け、大して警戒もせずに小屋へ近寄って行く。近くなるにつれて、入口に見張りが二人、立っているのが見えた。連は背負っていた白護を外すと、構えもせずに歩いて向かって行く。

 連の様子を見つつ、苦笑いを浮かべたまま、弥素次はそっと育也を見た。武器すら持たずに連の横を歩いている様子は、遊び気分で出かけているように見えた。二人の後ろで、どうしたものかと思いつつも、腰に差した刀を鞘ごと抜く。後ろから奇襲をかけられた時に、一番先に弥素次が動かなくてはならなくなるからだ。

 見張りからも弥素次達が見えたのか、緊迫した面持ちで睨みながら身構えた。連は、気にすることなく向かって行く。

「止まれ! 止まらないと殺すぞ!」

 見張りが出した大声も、連には全く効果が無いと分かっている為、弥素次が苦笑いを浮かべたまま心の中で思わず済みませんと呟いてしまった。

「こいつら、この前の連中だ!」

 もう一人がすぐに気付いて言うと、見張りの雰囲気が、一気に警戒に変わっていく。

「済まんが、ここでお前達の頭の帰りを待たせてもらう」

 連の表情が、一変する。引き摺り込まれそうな雰囲気を漂わせ、低めの声が、一瞬で戦意を喪失させるように紡がれた。見張りの一人が怯んだのか後退り、もう一人は連の雰囲気に呑み込まれまいと懸命な表情で睨んでいる。

 連が、ふいに笑みを溢したと同時に、睨んでいた見張りに向けて投げた白護の先端が、狙いを定めたように頭に命中し、倒れ込む。後退りしていた見張りが、脅えた表情を見せると慌てて逃げ出した。

 悠々と歩いて倒れた見張りの許へ行く連を見ながら、弥素次は軽く溜息を吐く。白護は刀の筈だが、いつから槍になったのかと思う。連と同じく見張りの傍へ行った育也は、槍代わりになった白護のことなどお構いなしに外套の中から取り出した縄で、見張りの両腕を後ろにして縛っている。この二人の武器に対する常識は何処に行ったのだろうと、聞こえないように呟いて弥素次は傍へ歩み寄った。

 見張りを縛り終えた育也が、小屋の扉を開けて他の盗賊がいないか確認すると、扉を閉めた。

「二人だけだな」

 育也の言葉に弥素次は頷いて見せて、空を見上げた。まだ、日が高い。盗賊達が戻るのは、もう少し時間がかかりそうだ。

「さて、ただ待つのも退屈になる。どうせ待つなら連中を驚かしてやろうと思うんだが」

 白護を手にして連は、満面の笑みを見せた。楽しそうに笑みを見せられても、同意できないのだが。

「何をなさるおつもりです?」

 待つ間は、確かに退屈だ。だからといって、何を仕掛けるつもりなのか。

「耳を貸せ」

 満面の笑みに意地悪げな笑みを足して、連は手早く説明を始めた。

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