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これが俺の学校。

校門を過ぎると、右手に校舎、左手にグラウンドが広がり、グラウンドの向こう側には箱庭のような下界の街並みが広がっている。


校舎中央に玄関があり、その中は広くて4階まで吹き抜けになった天井の高いエントランスとなっていて下駄箱が立ち並んでいた。天窓より光が差し込み、非常に明るくて開放感あふれる造りとなっている。


その奥には、広い間口の階段となっていて途中の踊り場で左右に分かれて共に2階に向かう造りとなっていた。登った先は廊下になっていて、1メートル位の高さの手すりに更にそこから天井まで伸びる鉄の柵が格子状に伸び、その隙間から先ほどのエントランスが見下ろせる。4階まで同様の造りとなっている。



1学年5クラスある我が校では、2階が3年生、3階が2年生、4階が1年生となっており。まるで歳追うごとに体力的に労わってもらっているような配置になっている。



我がクラスは、3年A組。玄関方向から向かって2階の左端の教室になる。


各階の両端には、非常階段が設けられていて、特に扉に施錠もなされていないために誰でも出入りが自由な感じとなっている。



ハクのクラスはD組なので、階段挟んで反対方向に教室がある。


そこでハクと別れて教室に向かった。



教室での俺の席は、窓際の一番後ろである。なんか出来過ぎのようなシチュエーションではあるが、この際は良しとしておいてもらおう。



俺の一つ前の席には、肩甲骨辺りまで伸びた細く柔らかそうな淡い栗色のストレートヘアの持ち主の優等生でありテニス部の主将も務めるアカシ トウカが鎮座する。

明石 島香と書くらしい。


身長は女子にしてはやや高めで、バランスのとれたスタイルの持ち主である。何故か授業中であろうと休み時間であろうとやたらと俺に絡んでくるめんどくさい奴である。


…だが断じて嫌ではない。


なんでも、俺をテニス部に入れたいらしい。

1年、2年と同じクラスで、何故かいずれも俺の席の1つ前…偶然にしては出来過ぎの設定ではあるが事実である。

俺は汗を流してまでスポーツというものをしたいと全く思わない人種のようで、トウカの執拗な誘いを2年以上にわたって拒み続けてきたツワモノでもある。


まあ、確かに身体能力は普通よりは多少いいとは思うのだが…



「フユくんてさ、短距離走と長距離走とどっちが得意?」


ほ~ら、早速おいでなすった。


「えー、得意か得意じゃないか~じゃなくて、好きか嫌いかで言ったら短距離の方が好きかな~」


―疲れる時間が短いからね。


「この前の身体測定での100メートル走、結構いいとこいったんじゃない?」


トウカはグイグイ来る。


「どうだっけかな~てか、そんなにいつも俺のこと見てるの?俺の事なんやかんやで好きなんじゃないの~?付き合っちゃう?」


精一杯悪い顔を作って話題を逸らす作戦に出た。


「…いいよ、あの部活辞めて他の部活に入ってくれさえすれば…ね?」


一瞬影が見えたような…


これ以上はやめておこう、実は苦手なタイプなのかもしれない。



「あそこの連中、俺好きなんだよね。もう3年だし、このまま最後までやめる気はないよ。」


「ざんね~ん!」


おどけた感じで返してきた彼女に先ほどの刹那の陰りは微塵も感じられなかった。



―予想外の言葉に躊躇しただけだろうな。





そんなこんなで放課後まで睡魔に屈せずに乗り切った俺は、心の中で小さなガッツポーズをしながらカバンの中に教科書などをしまいながら部室へ向かうのであった。



まだまだ日は高く午前と比べて暑さが増した教室にそよ風がリズムよく入ってきて、この世もまだまだ捨てたもんじゃないって気にさせてくれる。




さてと、部活部活~。


そそくさと教室を後にしたのであった。


―そういや、誰も俺を「フユキ」って呼ばないのな。まあ、「フユ」の方が言いやすいしね。




その後ろ姿を表情無くチラッと見やるトウカは、小さなため息をついてグラウンド脇にあるテニス部の部室へと足を向けた。






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