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俺の長い昼休み。その1

トウカの口撃を何とかかわし、授業に入った。


授業に入った途端にとてつもない程の眠気に襲われた。


―頑張れ、俺!




俺の横に誰かがいる。

顔はボヤけてはっきり見えないけど、女性のようだった。


どこか楽しげに話しかけてきている様子だが…声までは分からない。


なんだろう、とても懐かしい感じがする。


場面が切り替わり、昔映画で見た宇宙船のような…そんな感じの大きな乗り物のコントロールセンターの中にいる。


眼下には、軍服のようなものを着た沢山の人が、 忙しそうにうごめいている様子が伺える。


前方の巨大なモニターには、暗黒の中に無数にそしてランダムに光りの点達が映し出されていた。



―宇宙…



すると突然体が揺れる…


揺れると言うか揺らされている!?


遠くの方で誰かの声が聞こえる…ような…


「…きろ」


―な、なんだ!?


「起きなさいよ!」


ピシっと眉間に軽い痛みが走った。



俺は、ガバっと頭を上げて辺りを見回した。


呆れた顔をしたトウカが目の前にいた。


「なに豪快に爆睡かましてくれちゃってるのよ。あんたの寝息とイビキを誤魔化すの大変だったんだから。」


―夢か…


―どうやら寝てしまっていたようだ。


―授業は見事に終了してる模様だった。


「ねえ、ちょっと聞いてるの!?」


「ああ、悪い。どうやらご苦労かけちゃったみたいだな。ありがとう。」


俺は、ヨダレが垂れてないか右手で確かめながら言った。



それを聞いてトウカはニヤリと笑って、


「これで一つ貸しだからね。」



俺はまた意識が遠くなりそうだった。


席を立ちトイレに向かっていった。

トイレまでの道中、俺はさっき見ていた夢について考えていた。


―それにしても、突拍子もない夢だったが、妙に懐かしいと言うか…


―宇宙…そうそれだ!何故あのモニターを見てそう思ったのか?


―夢にしては、今でもやけに鮮明に覚えている。


そんな中、昨晩のボタンの言葉が浮かんできた。


『フユは、デジャヴっていうか…いや違うな、心の中にもう一人の自分がいて何か言葉ではなく…そう、意識のようなものが流れてくるような、映像とか情景とか…そんな経験とかない?』



―あれがそうなのか??



トイレで用を済ませた俺は、まっすぐ教室へと戻った。

そして珍しくトウカに自分から話しかけた。


「トウカ、借りついでにもう一つお願いがあるんだけど…」


「…え?なになに!?」


一瞬面食らったようであったが、何か期待しているような、そんな感じであった。


「いや、今日ちょっと体調悪いから保健室とかで休んでくるよ。先生が来たらそう伝えておいてくれるかい?」


―そう、考えをまとめる為と少し休みたいので授業をサボろうと決心したのだよ。


「えー。ちょっと大丈夫なの??わかった。先生には私から伝えておくから…ゆっくりしてきて。」



送って行くと言うのを何とか丁重にお断りをして、教室を出ようとした。


「これは貸しにしないから安心して。」


本当に心配そうに言っているので、ちょっと良心の呵責を感じた。


―部活の件でいろいろしつこかったので、俺の方が一方的に苦手意識もってたけど…


―案外いい奴なのかもしれんな。


―次からは、もうちょっと真面目に接してやろう。



他の知り合いに合って、詮索されるのもアレなんで、非常階段から下の階に降りることにした。


保健室を華麗にスルーした俺は、武道棟の方に歩を進めていた。



その様子を教室の窓から眺めている人影があったが、俺が気付くわけもない。



武道棟を抜けていく際に、ポケットの中身を確認した。


「よし、部室の鍵はちゃんとあるな。」



本来、部室の鍵は複製禁止なのだが、毎日職員室まで鍵を取りに行き来するのが面倒なので、大概の部活では合鍵を作ってそれぞれ所持してるのであった。


まあ、学校側も気付いていないわけでもないのだが、些細な事と黙認していたのである。




部室に入った俺は、とりあえずカーテンを引き部屋を暗くした。


そして、部屋の隅っこに置かれていた段ボールから、大きな布きれのようなものを取り出し、床の空いているスペースに広げた。


どうやらカーテンの予備のようだ。


もう一つのカーテンは、畳んだまま枕代わりにして、ゴロンと床に寝転がった。



―さっきみたいな夢は、もしかしたらこれからも見るかもしれんな。


―そうなった時にボタンに話してみよう。



「それにしても昨日からいろいろあったな。」


そう呟きながら目を閉じた。






―コマチ姉さん…


―そうだった…今日も寝れないかもしれんのだった…





―まあ、今は何も…考え…ずに…寝よ…う





部室は、とても暖かく心地よすぎるくらいで、あっという間に別の次元に誘われていくのであった。

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