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俺の同伴通学。

未だ気持ちよさそうに夢間を彷徨うボタンを起こさぬように、俺は静かにベッドから降りた。


頭はスッキリと妙にハイな気分である。

対照的に体はけだるく重く、しかしながらふわふわと彷徨う感覚であった。


「顔洗ってこよう…」


2階にあるシャワールームの手前に脱衣所兼洗面所がある。

そこに行きつく手前には、コマチの部屋があるのだが、覗いてみたらもぬけの殻であった。


どうやら定刻に起きていつも通り、朝の用意をしているのだろう。


―コマチ姉さんは、どんなに遅くに酔っぱらって帰ってきても朝には普通に何事もなかったように振る舞えるんだよな…


―鋼鉄の肝臓恐るべし。



洗面所の鏡に映る俺の顔はひどいものであった。

頬はこけ、目の下にはクマがうっすらと…

背後には、白い女性の影が…


「って!?ぎゃーーーああああ!!」


「うきゃーーーーああああ!!」


俺が髪の毛を逆立て叫ぶと、背後の影も叫んだ。



いつの間にか起きてきたボタンが、洗面所の順番待ちをしていたようだ。


「急にビックリするじゃないの!!」


涙目で床にへたり込んでボタンが訴えるように言った。



とりあえず、俺たちは制服に着替えて階段を降りリビングへ向かった。


「おはよ。姉さん、昨日も上機嫌だったね。」


俺はダルイ体にムチ打って、精一杯の笑顔で言った。


「フユくん、おは…よ??」


俺に続いて入ってきたボタンの姿を見て、コマチは固まっていた。


「コマチ姉、おはようございまーす。」


そんなコマチにお構いなしに、愛想よくボタンは挨拶した。

そして、コマチの腕をとりにこやかに、


「お手伝いしまーす。」


と、コマチをキッチンに引っ張って行った。

コマチは、俺とボタンを交互に見ながら、口をパクパクさせながら声にならない声を出していた。



談笑しながら俺たちは食卓を囲んでいた。


「なーんだ。昨日の事、私全然覚えてなかったよー。」


がはは、と笑いながらコマチは頭を搔いていた。


「学校帰りにそんな事があったのね。フユくんはたまにしょうも無いことするからねー。で、ついでに学校の課題をしていたのね。」


「そうなんですよー。おかげで課題もかなり進みました。」


ボタンが、舌をちょろっと出しながら言ったのを俺は見逃さない。


「それでですねー。昨日はフユと一緒に寝たんですよー。誰かと寝るの久しぶりだったからぐっすり安心して寝れましたー。」



ブーっと、コーヒー吐き出してしまった。


怖い顔してコマチ姉がこっち見てる…

これは今日も寝れないかもしんない…


その様子をボタンはきょとんとした表情で見ていた。


―もしかして、ボタンってちょっとズレてる??


―俺を兄妹か何かと勘違いしてるのか??


―彼女の田舎では、至って普通の出来事なのだろうか??



食器の後片付けも終わり、一足先にコマチが玄関に向かった。


「ボタンちゃん、たいしてお構いも出来ずごめんね。また私がシラフの時に遊びに来てね。」


にっこりと優しく微笑み言った。


「…フユくん、今晩は家族会議だからね。」


悪魔の形相でボソリと俺の耳元でささやいた。


―ですよねー。



「いってらっしゃーい。」


にこやかなボタンに涙目の俺、共に手を振りコマチを見送った。




いつもと違う二人での登校に、多少の違和感を感じながらも何故か波長の合うボタンとの会話が、妙に冴えてハイな俺の頭も手伝ってかこの上なく弾んでいた。


「やっぱり、今日の宇宙防衛軍の活動は昨日の件についてだな。」


「そうね、みんなで寄れば何か発展があるかもね。」



俺は、昨日から「宇宙」という言葉がやけに引っかかっていた。

今までは右から左へと抜けていくような言葉だが、改めて考えてみるとあまり知らない単語であった。


―ハクは、どういう意図であの名称を付けたのだろう?


―宇宙については、アユハルに訊くとして…



いつもの角を曲がり校門へと続く坂道へと差し掛かった。



「あれぇ!なんかめずらしい風景だねぇ~。」


ふわふわもふもふの髪の毛を揺らしながら、タケゾウが近づいてきた。


―選りにも選って一番面倒そうな奴に遭遇してしまった。


「ボタン、おはよっす。」


「タケ、おはよー。」


ボタンは、いつもと変わらない様子で挨拶を返した。


「タケゾウ、違うんだ…その、実は、あのー」



「ふぅーん…」


タケゾウは、顎に手を当て、俺とボタンを交互に見つめながら何やら考えてる様子だ…


ポンと俺の方に手を置き、


「分かってるよ。何も言うな。」


更に俺の耳元で、


「お前とタマキの組み合わせなら勘繰っちゃうかもだが、ボタンとなら問題ない。」


などと意味深なことを言って、走りだした。


「ごめぇん、今日、日直だから先に行くねぇ~。」


振り向きざまに手を振り行ってしまった。



―何が分かったの!?


―ボタンとなら問題ないって…ドユコト!?



そうこうしているうちに、学校に到着したようだ。


ボタンと別れて、自分の教室に向かった。



教室に入り、自分の席に向かって歩いていると…


嫌でも目に入ってくるものがある…



トウカがこちらに気付き、待ってましたとの表情で待ち構えていた。





…もう、ホント…勘弁してください。

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