残香
漏れ出づる香の薫
其は愛しき唇から吐き出されては
消える間際まで尚 褪せず
指先までも染める程に
此の身に絡んで抱き締める色
焦げ付いて残る跡は
灰の儚き脆さなど知らぬまま
消える間際まで尚 尾を引いて
隅々にまで散り咲いて
此の身を汚して飾り立てる華
隠された場所にも幾多の証
誓いの数だけ増えていく 声にならぬ声
腕の中は薄闇に変わり
夜の始まりを知らせながら
紫の狼煙は静かに燃え尽きる
浮かされては天に落ちる
流れ揺られて触れては重なり
壊れる事を恐れもせず
此の身を求める本能の夢
腕の中で微睡に酔い
朝の淋しさを予感しながら
紫の狼煙を待たずに口付ける