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六角瞳  作者: 有寄之蟻
真相編
99/114

・99・事情聴取

タイミング良く、そこに注文していたスイーツが届く。


ウォーの頼んだコーヒーも一緒に来て、彼はさっそく一口飲んだ。


ミーの前におかれたのは、オシャレな小さいガラスの器に入った艶やな濃茶色。


添えられたデザートスプーンで一口食べれば、確かに鼻と口に深い甘みが広がった。


舌触りも滑らかで、ほど良い重さだ。


思わず顔が綻んだミーを覗き込んで、


「……おいしい?」


尋ねたキムに、こっくりと大きく頷く。


「……そう」


目を細めて、キムはミーの頭を二度撫でた。


んんっ、と咳払いの音に、ミーははっとして顔を前に向ける。


口元に手を当てたウォーが、複雑そうな表情をしていた。


一瞬、ウォーの存在を忘れていた事にミーは恥ずかしくなったが、そそくさとスプーンを置いて、姿勢を伸ばす。


「あー、いえ、食べながらでも構いませんが……。えー、では、本題に入らせて頂きます」


テーブルに組んだ両手を置いて、ウォーは話を始めた。


それは、昨夜の事件についてで、キムから一応あらましは聞いているが、ミーから見た事件の内容を確認するものだった。


まず、始めにミーが本当にヘキサアイズかどうかを確認する。


数秒、ミーが瞳を青く変化させると、ウォーは改めて納得したように頷いた。


そして、リリとの出会いからミーに確認を始めた。


「……つまり、それ以前までは、斜陽(しゃよう)リリとは全く面識はなかったんですね?」


はい、と答えつつ、そういえば名字も知らなかったな、と思う。


ミーが誘拐される前、ミーはリリの存在を知らなかった。


リリがミーに目をつけたのは、ミーがヘキサアイズに感染して、なぜか人間瞳状態の時に格別に美味な『人間』の香りを放つようになったからだ。


リリはどうやってミーに話しかけたか、どんな内容だったか、その後の行動は、などなどを確認される。


時折、キムにも話は向けられ、それに答えていった。


ほどなくして、話は事件の空白部分に差し掛かる。


ミーが気絶してからの出来事だ。


「ーーそして次に気がついたら、キムさんの家に()られたと」


はい、と肯定すると、ウォーはキムに視線を向ける。


キムはあの穏やかな笑みを浮かべ、少しずつケーキをたべながらも、始終ピリピリとした空気をまとっている。


しかし、ミーに触れる手は優しく、答える声も硬くはない。


それがひどく不安で、ミーはキムが気になって仕方なかった。


「キムさんは通報時に、藍塚さんがヘキサアイズに襲われた、襲った者は逃走した、と言いましたね」


「………………」


無言のまま、キムは続きを待つようにただウォーを見つめた。


「わたし達が現場に到着した時、確かに現場には二種類の血液があり、一方はかなりの出血をしたようでした。しかし、それは藍塚さんではなく、彼女を襲ったヘキサアイズ、つまり斜陽リリの方です」


そう、あの時ミーを攻撃しようとしたリリのテールと左足を、ミーは容赦なく切り落とした。


それゆえ、その場にはリリの血液が大量に溜まっていたはずだ。


「『人間』であるーーとその時わたしは信じていましたのでーー藍塚さんが、ヘキサアイズに出血させられる訳がありません。ですから、わたしは貴方が斜陽リリを撃退したのかと考えました。しかし、貴方はただ逃亡した、と仰った。……藍塚さんを傷つけた相手を、貴方が逃がすとは思えません」


とても真剣なウォーのその発言に、ミーは一人ひっそりとドキドキした。


キムがミーを守ってくれてるのは分かっているが、改めて他人に言われると、なんだかむずがゆい。


つい目が泳いで、横目にキムを窺えばーーーーなぜかキムは薄っすらと笑っていた。


いや、キムの笑顔は標準装備であるが……その笑みは、まるで刃物のよう。


機嫌の悪さを醸し出していた冷笑ではなく、不用意に触れた者を切り裂くような、どこか酷薄さを見せた微笑。


ミーの知らない、キムの姿があった。


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