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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
90/114

・90・交じる

迫るオレンジの刃を視界に捉えながら、ミーは悲しいな、と思った。


リリに敵意を向けられた事も、そのリリに対して自分も敵意を向けなければいけない事に。


ミーの腕に刃が届く一瞬前、黒のテールが動いた。


と、オレンジのテールは先端含む半分ほどから左右に吹き飛び、切り口から紅い液体がどばり、とミーに降りかかる。


途端にむせかえる"いい匂い"に、ミーはうっとりと深呼吸した。


「……ぇ、…え?……きゃぁぁぁぁぁぁあああ!!!」


数秒、何が起きたのか理解できなかったのか首を傾げ、事態飲み込んだ瞬間、リリは引き裂かれたような悲鳴を上げた。


それにちょっと身を竦め、頬に飛んだ血をちろりと舐めてみる。


……あ、甘い。


なんと、おいしかった。


あぁ、なんだ、とミーは納得する。


リリがミーの血を甘いと言った意味が理解できた。


自分の血も、リリにとってはこんなふうに感じられたのだろう。


といっても、半狂乱なリリを見ても、食べたいなどとは思わないが。


いや、ヘキサは人間を食べるのだから、同じヘキサに食欲はわかないものだろう。


ただ、自分はヘキサの血液を甘いと感じるようだ、とミーは自身の新たな特異点を認識した。


それと、以前推測した通り、テールの中身はやはり血液だったようだ。


心中納得していると、切り飛ばされたテールを引っ込め、リリが左足を出してきた。


蹴られる前に、その足も容赦なく切り落とす。


「ぎゃあああぁぁあぁあぁぁあ!!!」


ぶしゃぁっと噴き出す温かい液体と共に、"いい匂い"は深くなる。


知らずにんまりとした笑顔になるミーは、バランスを崩して倒れそうになるリリに合わせて膝をついた。


ヘキサになっても、ミーの腕力は人間と変わらないため、細いリリの身体だろうと、人一人の体重は支えられない。


全身を血に濡らし、虫のようにもがくリリをミーは慈愛さえ含んだ眼差しで見つめていた。


普段のミーなら絶対にありえない自分の異常さも自覚せぬまま、ミーはこの事態をどう治めようか、などと考えていた。






――その瞬間、だった。


身を起こしたリリが、ミーの左腕に噛みついたのは。


治りかけていた傷口を抉るように、強く、深く。


あまりの痛みに手から力が抜け、叫んだミー。


その隙を逃さずリリは両手を振りきって、ミーから後ずさる。


リリが逃げてしまう、まずい、と思うが、しかし、ミーの身体はひどく重い。


噛まれた左腕がぐつぐつと熱くなり、その熱は全身に広がっていく。


前に似たような感覚を味わった事がある、と朦朧とする頭で考え。


視界が白く染まると共に、ミーは意識を失った。

誤字:無視のように→虫のように、に修正。

2016/4/7

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