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六角瞳  作者: 有寄之蟻
脱出編
9/114

・9・三人目、男性

次の小部屋の前で、女性がヒュンヒュンとテールを唸らせていた。


「あー久しぶり!しばらく動かさないと勘が鈍っちゃうのよねー!」


嬉々としたその表情に、あの人、笑顔で人とか殺してそうだ、と慄く。


うねるテールの先は薄く鋭くなっており、ヒュンと一度鳴る度にガラスに切れ目が入っていく。


やがてパリンとガラスが円形に抜け落ち、床で砕けた。


「はい、行くわよー」


と、女性は円をくぐり抜ける。


ミーとキムも小部屋に入ると、そこには男性が拘束されていた。


が、女性があっという間に枷を切り、なんと目隠しと腰の布を切り裂いていた。


突然の事に男性はたたらを踏んだが体勢を整え、そっと耳栓をとる。


頭を左右に振って、腰をさすり、ふっとミーたちに視線を向けた。


身長はキムより高く、直毛の金髪で、耳下程の長さ。


たれ目で表情がデフォルトで情けなく見える。


その目は、褐色の六角形が、白く発光していた。


ショボショボと瞬きした男性は、


「あー……えっと、きみ達はぼくを助けてくれたのかな?」


と不安げに尋ねた。


「そうよー。さあこの私に感謝しなさい!」


むんと胸を張って女性が言う。


あ、この人女王様だ、とミーは戦慄した。


キムは興味ないのか、眠そうに目をこすっている。


男性は女性を困惑したように見つめ、


「ど、どうも」


と頭を下げた。


「アンタ、さっさとそれ抜きなさいよ」


テールを床に打ちつけ、女性が言う。


「それ?それって何ですか?」


「それよそれ!腕とかお腹とかについてんでしょ!?次行きたいからさっさと取りなさい!」


「は、はい!」


バシバシとうねるテールに怯えたように、男性がそろそろと体についた管を抜き始めた。


ミーには、女性のテールが鞭にしか見えなかった。


あの人、絶対に怒らせないようにしよう、とミーは心に決めた。

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