・9・三人目、男性
次の小部屋の前で、女性がヒュンヒュンとテールを唸らせていた。
「あー久しぶり!しばらく動かさないと勘が鈍っちゃうのよねー!」
嬉々としたその表情に、あの人、笑顔で人とか殺してそうだ、と慄く。
うねるテールの先は薄く鋭くなっており、ヒュンと一度鳴る度にガラスに切れ目が入っていく。
やがてパリンとガラスが円形に抜け落ち、床で砕けた。
「はい、行くわよー」
と、女性は円をくぐり抜ける。
ミーとキムも小部屋に入ると、そこには男性が拘束されていた。
が、女性があっという間に枷を切り、なんと目隠しと腰の布を切り裂いていた。
突然の事に男性はたたらを踏んだが体勢を整え、そっと耳栓をとる。
頭を左右に振って、腰をさすり、ふっとミーたちに視線を向けた。
身長はキムより高く、直毛の金髪で、耳下程の長さ。
たれ目で表情がデフォルトで情けなく見える。
その目は、褐色の六角形が、白く発光していた。
ショボショボと瞬きした男性は、
「あー……えっと、きみ達はぼくを助けてくれたのかな?」
と不安げに尋ねた。
「そうよー。さあこの私に感謝しなさい!」
むんと胸を張って女性が言う。
あ、この人女王様だ、とミーは戦慄した。
キムは興味ないのか、眠そうに目をこすっている。
男性は女性を困惑したように見つめ、
「ど、どうも」
と頭を下げた。
「アンタ、さっさとそれ抜きなさいよ」
テールを床に打ちつけ、女性が言う。
「それ?それって何ですか?」
「それよそれ!腕とかお腹とかについてんでしょ!?次行きたいからさっさと取りなさい!」
「は、はい!」
バシバシとうねるテールに怯えたように、男性がそろそろと体についた管を抜き始めた。
ミーには、女性のテールが鞭にしか見えなかった。
あの人、絶対に怒らせないようにしよう、とミーは心に決めた。