・83・緑の目にオレンジの尻尾
リリはミーに向き合うと、おもむろにカラコンを外した。
その下から現れたのは、日本人ならよくある褐色の瞳。
鮮やかな緑なら猫のように見えたリリも、褐色だとどこか落ち着いた印象を受けるな、とひそかに思う。
なんでカラコン外したんだろう、とミーは少し首を傾げた。
「……ミーちゃんさ、なんでアタシがこんな派手なカラコンつけてるんだろう、とか思わなかった?」
聞かれて、一瞬考えたミーは、いや?と首を横に振る。
おしゃれなのかなって思ってた、と返せば、リリはなるほど、と頷いた。
「実はね、おしゃれじゃなくて、ちゃんと理由があるんだ」
どんな理由?と促すと、
「アタシの目、よく見ててね」
と自分の目を指差した。
ミーが頷いて褐色の瞳を見つめると、それはゆらりと変形して、緑色に発光する六角形の虹彩に変わる。
キムので何度か見ていたが、やはり人間瞳から六角瞳へ変化する現象は、何度見ても綺麗で不思議だ、とミーはつい見惚れてしまった。
ミーちゃんミーちゃん!と呼ばれてはっと我に返る。
動きを止めたミーに、理解できてないと思ったのか、
「えっと、びっくりするのはしかたないと思うから、もう一回するね!」
と言い、一度人間瞳に戻してから、再度瞳を六角形に変形させる。
ミーは演技しなきゃ、と思い出して、え、え、何それ、と自分でも下手くそだなぁ、と思いつつ、驚いてみた。
するとリリはミーの反応に満足したのか、緑の目をニヤ〜と細め、
「アタシはヘキサっていって、目が緑色に光るから、緑のカラコンつけてるんだ!ヘキサは、六で、目が六角形になるから!」
多少足りない説明を、自慢気に発表したリリ。
ミーはどんな反応がいいか迷い、えー!そうなんだー!とやっぱり驚いてみた。
そうなの!と大きく首肯したリリは、
「そしてさらに…………これ!」
と、びょん!とオレンジのテールを二本同時に伸ばした。
ミーはひゃっ、と素でびっくりして、わずかに後ずさる。
リリは腕を組み、その下でテールを腕のように組ませて胸を張る。
「これはテールって言ってね、いろいろ便利なんだよ!もう二つの手みたいな?」
と言いつつ、一本を伸ばしてミーの片手を掴み、握手するように上下に振った。
その感触はなんともいえないもので、さらさらしてるような、人肌に温かく、柔らかいのに硬い、という不思議な硬度だった。