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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
81/114

・81・後悔……?

「……ほんとは、行かせたくない」


ゆっくりと、キムは話し出した。


「……ミーは、全然分かってない」


グサリと刺さる言葉に、黙って頷く。


「……でも…」


どこか躊躇うようにそこで一度口を閉じ、キムはミーに手を伸ばした。


そっと両頬を包み、身をかがめてミーの顔を覗き込む。


不機嫌に歪んでいた表情が緩み、薄く弧を描く唇。


しかし、翳りを帯びた瞳が、キムの感情を表している。


それはミーが初めてみる表情だった。


ミーは内心驚きながらも、言葉の続きを待つ。


「……でも、ミーを不安にさせたのは…オレだから」


一段と低くなったトーンに、ミーはキムの表情の正体に思い当たる。


これはーー後悔、だろうか。


思わず、服のすそを握っていた手を離し、頬に添えられたキムの手に触れる。


するとそれが微かに震えている事に気づいて、ミーは泣きそうになった。


あぁ、また私のせいで、と。


キムはいつだってミーのためを思っている。


それゆえに、ミーに何かあれば、なによりも自分の事を責めるのだ。


知らず顔を歪めたミーを見つめながら、キムは続ける。


「……オレの、ワガママのせいだから」


……だから、連れていくよ、と額と額をくっつけ、キムは誓うように囁いた。


ミーは胸をいっぱいにする何かに、口を開く事ができない。


「……ちゃんと、守るから。……ちゃんと、話すから。……不安になんか、させないから……ね?」


終わりににっこりと笑みを深めて、おどけるように首を傾げたキム。


ミーは泣き笑いのような顔でただ、うん、と返事をした。











大学付近のその公園は、町が管理するちょっとしたものだ。


一面砂で、定番のブランコと滑り台、シーソーなどの遊具があり、残りのスペースは広場になっている。


周囲はカエデの木で囲まれていて、今はすでに葉はなく、枯れ木のよう。


その木々の下に、ポツンポツンとベンチが配置してある。


管理がしっかりされているのか、夜10時になろうというこの時間帯でも、公園内全域をしっかり見渡せる程度に外灯が照らしていた。


陽がある内は子供たちや主婦で賑わうだろうそこに、人気はない。


唯一いた彼女は、近づいていくミーにも気づかず、無心にブランコをこいでいた。

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