・81・後悔……?
「……ほんとは、行かせたくない」
ゆっくりと、キムは話し出した。
「……ミーは、全然分かってない」
グサリと刺さる言葉に、黙って頷く。
「……でも…」
どこか躊躇うようにそこで一度口を閉じ、キムはミーに手を伸ばした。
そっと両頬を包み、身をかがめてミーの顔を覗き込む。
不機嫌に歪んでいた表情が緩み、薄く弧を描く唇。
しかし、翳りを帯びた瞳が、キムの感情を表している。
それはミーが初めてみる表情だった。
ミーは内心驚きながらも、言葉の続きを待つ。
「……でも、ミーを不安にさせたのは…オレだから」
一段と低くなったトーンに、ミーはキムの表情の正体に思い当たる。
これはーー後悔、だろうか。
思わず、服のすそを握っていた手を離し、頬に添えられたキムの手に触れる。
するとそれが微かに震えている事に気づいて、ミーは泣きそうになった。
あぁ、また私のせいで、と。
キムはいつだってミーのためを思っている。
それゆえに、ミーに何かあれば、なによりも自分の事を責めるのだ。
知らず顔を歪めたミーを見つめながら、キムは続ける。
「……オレの、ワガママのせいだから」
……だから、連れていくよ、と額と額をくっつけ、キムは誓うように囁いた。
ミーは胸をいっぱいにする何かに、口を開く事ができない。
「……ちゃんと、守るから。……ちゃんと、話すから。……不安になんか、させないから……ね?」
終わりににっこりと笑みを深めて、おどけるように首を傾げたキム。
ミーは泣き笑いのような顔でただ、うん、と返事をした。
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大学付近のその公園は、町が管理するちょっとしたものだ。
一面砂で、定番のブランコと滑り台、シーソーなどの遊具があり、残りのスペースは広場になっている。
周囲はカエデの木で囲まれていて、今はすでに葉はなく、枯れ木のよう。
その木々の下に、ポツンポツンとベンチが配置してある。
管理がしっかりされているのか、夜10時になろうというこの時間帯でも、公園内全域をしっかり見渡せる程度に外灯が照らしていた。
陽がある内は子供たちや主婦で賑わうだろうそこに、人気はない。
唯一いた彼女は、近づいていくミーにも気づかず、無心にブランコをこいでいた。




