・8・二人目、女性
女性はじっと二人を見つめた後、ふっと視線を外して自身に繋がる管を抜いていった。
そして三つ編みもほどくと、バサバサとかきあげ、ふぅーと息をつく。
「――で?」
低めな声で、ただ一文字、女性は問いかけた。
青年とミーがそろってキョトンとすると、
「アンタ達、誰?」
何当たり前の事言わせてんだよ?という雰囲気で女性が二人を見据える。
ミーは思わず名前を告げ、青年も、
「……キム、だけど…」
と言った。
ミーはそこでやっと青年の名前を知る。
「で?」
続きを催促されるが、二人はまたキョトンとしてしまう。
「…だから、アンタ達はアイツの仲間なの?違うの?」
苛立ったように爪を噛んだ女性に睨まれ、ミーはそっと視線をそらした。
女性の言葉の意味がさっぱり分からず、なんの事だろう、と考え込む。
「……違うよ。……オレと、ミーは…被験者……」
青年――キムの声に顔を上げると、女性は聞いているのかいないのか、腰に巻かれた物のベルトを外していた。
「ほんっとに忌々しいっ。ぞわぞわして気持ち悪いし、テールも出せやしないし!」
千切るように外したそれを投げ捨て、ふん!と腰に手を当てる。
すると、女性の背中からぐんと紺色のテールが伸び、ばしっと床を叩いた。
ミーがビクビクしながら女性を見つめていれば、また手を引かれる。
キムを見上げると、ミーを見てそっと微笑み、小部屋の出入り口へと向かおうとした。
「ちょっと、どこ行こうとしてんのよ」
ミーがびくっと振り返ると、女性があぁん?といった雰囲気で睨みつけている。
さっと顔を戻して目をつぶった。
「……他の、被験者…を、解放するん……だけど」
キムが言い、
「ふーん?あっそ。じゃ、行きましょ」
どうでもよさそうな女性の返事とともに、ミーの横を気配が通りすぎ、手が引かれる。
ぱっと目を開けると、小部屋を出た女性が歩いていき、キムが微笑でミーを待っている。
ミーはなんとなく頷いて、足を動かした。