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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
76/114

・76・少しずつ

キムが手早く作ったのは、オムライスだった。


フワフワの卵にケチャップライスはほど良い酸味があって、普通においしい。


クオリティの高さに、キムの女子力を感じてミーはひっそりと落ち込んだ。


食べながら、ミーは途中で眠ってしまった事、キムがベッドに寝かせ、一度自分の家に帰った事、二人とも夕食がまだだったため、食材をついでに持ってきた事、そしてキムが帰ってきた時ちょうどミーが目覚めた事を聞いた。


あまり時間は経っておらず、11時半頃くらいだ。


泣き疲れて眠るなんて子供みたい、とミーは恥ずかしくなる。


しかも夕食まで作ってもらってしまった。


ここ数日そっけない態度をとった上、怒って泣いたミーにここまでしてくれるキムはやっぱり優しい、と改めて感じる。


食事が終わって程なくして、キムは帰っていった。


明日も迎えに来る、としっかり念を押して。


ミーも素直に笑って頷いた。


苛立ちも怒りも情けなさも、納得するのは少しずつでいい。


今日はもう遅いし、キムにも仕事があるし、と考えて見送った。











「……ねぇねぇ、ミーちゃん」


そう声をかけられたのは、昼食が終わって午後の講義まで少し、という頃合いだった。


今日も今日とて鮮やかな緑の瞳が、高い位置から上目遣いにミーを窺う。


フワフワのアッシュブラウンの髪に猫のように大きな目。


紺色のカットソーに黒いデニム、よく使い回しているのか紺色のバッグを肩にかけた、女子生徒。


久しく近づいてこなかったリリだ。


キョロキョロと周りを気にするようにしながら、控えめにミーを呼び止めてきた。


ミーは驚きに瞬きしながらも、どうしたの?と足を止める。


「ちょっと話したいことがあるんだけど……」


声を潜めるリリに、内緒話なのかとミーはそばに近寄る。


リリは手を忙しなく組み替えながら、


「あのね、あんまり人がいるとこじゃできない話だから……場所移動しない?」


へにゃりと眉を下げる。


なんだろう、と思いながらも特に考えずミーは了承して、人のいない場所、と校内の端っこに向かった。


そこは校舎と大学を囲む塀の狭い隙間で、道でもなし、用もない人は通らない、人気のない場所だ。


キムと合わせてから挨拶しかされてなかったのに、わざわざ私に話したいことってなんだろう、と内心首を傾げつつ、ミーはリリに向き合った。

誤字:茶髪→アッシュブラウンの髪に修正。

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