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六角瞳  作者: 有寄之蟻
捕食編
75/114

・75・言葉足らず

疑問符を浮かべるミーの横で、キムがガサゴソとビニール袋からいろいろと取り出して、ローテーブルに並べていく。


それを見てみると、野菜と卵、小袋に入った米などだ。


何してるんだろう、と混乱したまま眺めていれば、振り向いたキムが、


「……ミー、お腹空いた?」


と尋ねてくる。


ぱちぱちと瞬きして、質問の答えを考える。


と、言葉になるより先にお腹が音を立てて返事をしたため、キムがクスリと笑った。


「……キッチン、借りるね」


一言言ってキムはローテーブルに並べた食材をミニキッチンの方へ運んでいった。


どうやら料理を始めるつもりらしい、と考えて、いやいやいや、違うでしょ、と誰ともなくツッコミを入れる。


な、なんで料理しようとしてるの!?と聞けば、顔だけ振り向いて、


「……だって、ミーお腹空いてるでしょ?」


当然のように答えるキム。


それに恥ずかしさから少し硬直したミーに気づかず、キムは顔を戻してしまう。


確かにミーはバイトから帰ってきて夕食も食べておらず、盛大に腹の虫が鳴く程お腹が空いている。


もしかすれば、泣いた事も影響しているかもしれない。


あれは以外と体力を消耗するからだ。


しかし、なぜミーは今まで眠っており、キムは食材を一体どこから持ってきて、なぜミーの家で料理を作ろうとしているのか。


不可解すぎて困惑する。


そしてミーが心底実感するのは、キムは圧倒的に言葉が足りない、という事だった。


あともうちょっとでいいから、状況説明がほしい。


きっと敏いキムの事だから、ミーが混乱している事は気がついているはずなのだ。


お願いだから、せめて自分が寝ていた理由だけでも、目覚めた時に言ってほしい、とミーは切実に思った。


思わず深いため息が出る。


泣いたせいか、心中にあったごちゃごちゃした感情がスッキリとしている…気がする。


キムは隠し事をしている。


ミーはそれをはっきりと確信している。


しかし、それに加えて言葉が足りない。


だからこそミーはもやもやとしてしまったのだろう。


ミーの中に、諦めのような悟りのような感情が浮かぶ。


キムが話さないのは、ミーが知る必要がないか、知らない方がいいから。


もし知っているべき事なら、ミーが疑問に思う前に、キムは聞かれずとも答えるのだ。


キムのする行動は、ミーのためになる。


それを信じているのだから、そのもやもやくらいは我慢するべきなのかもしれない。


そう無理矢理自分を納得させ……ようとして、失敗する。


すぐに納得はできそうにない。


一旦この問題は保留にして、もう一度ため息を吐き、ミーはベッドから抜け出した。

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